上 下
997 / 1,519

律儀者

しおりを挟む


 イゼッタとネーヴェを甘やかして時間を過ごし、女達が夕飯の支度に赴いた。俺に許された手伝いは配膳のみ。なので再び《白昼夢》で弥一ん家を覗く事にした。
出掛けてから結構時間が空いたので、奴は既に帰宅して、机にPC出してカタカタターンとやっている。傍らには紙箱入りのボールペン。コンビニで無く文具屋で買って来る辺り律儀者である。

カタカタと打ち込んだ文字列を、えらく細長いプリンターで出力してる。持ち運びには便利そうだが一枚ずつ紙送りせにゃならんからだいぶ時間が掛かりそうだな。当の弥一本人も頭を掻いてヤキモキしてる。ヤキモキし過ぎてボールペンの箱が落ちるのを《収納》すると、驚いたようで立ち上がり、キョロキョロしながら何事か叫んでるようだ。ア、エ、ウ。俺の名を呼んでるっぽいな。《白昼夢》を見てる状態では此方からコミュニケーションを取る事は出来無いようだ。仕舞ってある雑木紙にボールペンで文字を書こうとしたが無理みたい。一度スキルを解除して、紙に文字を書かねばならん。なので一旦スキルを解除し、新しいボールペンでお手紙書いた。

ジェルインク助かる!
少しにじむけどすげー書きやすい!
とにかくありがとう。

弥一んちを見るスキル、白昼夢ってんだけど、見るだけのスキルだからこっちからコミュニケーション取れないんだ。だから叫んでも何も聞こえないんだぜ。

こっちはそろそろ夕飯だから今プリントしてるだろう質問は明日にでも回収するよ。←収納ってスキルな。

夜はなるべく来ないから好きなだけ右手を動かすといいぞ。
では。ノシノシノシノシ

 依然ウロウロキョロキョロしてる弥一を余所に、机に雑木紙を乗せて直ぐに戻った。
箱入りなのでダースだと思ったら、一箱十本入りだった。一本千百十ヤンと少し、と考えると高いボールペンだな。とは言え彼奴の金で買ってるのだし、文句は言えんか。
翌日になり、食休みがてら覗きに行くと、机の上に紙束が乗せられていた。野郎どんだけ書いたんだ?回答するにもこちとら手書きぞ!?寝ている弥一の顔に濡れタオルでも乗せてやろうかと思ったが、紙束を回収して帰った。


 今日は商業ギルドに行くのでお供にシャリーを引き連れてバルタリンドに向かう。妻三人とメイドとテイカが赤ちゃん抱いて同行したが、多分ママ上殿の所から離れないのだろうな。ママ上殿とメッツ君にご挨拶して外に出た。
商業ギルドに着くと、直ぐに受付嬢が集まって個室へと案内される。色目使ってるのをシャリーの目力が抑え付け、お仕事モードに切り替えさせられてた。で、部屋に居るのは俺とシャリーに、商業ギルドからはプリニアと、今お茶を持って来た女職員の四人。女職員は出てっちゃったので三人だな。

「地主様とは話が固まりましたので書面での契約と金銭の支払いのみとなりました。今回は魔石での取引ですね」

シャリーと二人で契約書を読み込み、不備が無いのを確認すると、ボールペンでサインする。

「それは魔道具で?」

「文明の利器だよ。便利だが使い捨てだからガラスペンの方が良いよ」

「そう言う物ですか…」

商材にはならんと釘を刺し、魔石をゴロゴロ机の上に積み上げる。トカゲの魔石十一個。崩れそうなので床に置く。プリニアがその場で領収書を書いて渡し、土地の購入が完了した。

「この度はご利用ありがとうございました。またのご愛顧をお待ちしております」

「土地なんて早々買い増し出来無いけどな」

「素材や魔道具の持ち込みでも構いませんし、これからお屋敷を建てるのでしたら私共が手配致します」

「建屋作りに関しては大丈夫。家作りに強い知り合いが居るからね」

「それは、差し出口を…」

「若返り効果のある浴場を作るから、完成したら入りにおいでよ」

「!完成をお待ちしておりますっ!」

「女性専用ですけどね。旦那様、そろそろ…」

受付嬢が列を生して見送る中、商業ギルドを後にした。



しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

性的に襲われそうだったので、男であることを隠していたのに、女性の本能か男であることがバレたんですが。

狼狼3
ファンタジー
男女比1:1000という男が極端に少ない魔物や魔法のある異世界に、彼は転生してしまう。 街中を歩くのは女性、女性、女性、女性。街中を歩く男は滅多に居ない。森へ冒険に行こうとしても、襲われるのは魔物ではなく女性。女性は男が居ないか、いつも目を光らせている。 彼はそんな世界な為、男であることを隠して女として生きる。(フラグ)

転生した体のスペックがチート

モカ・ナト
ファンタジー
とある高校生が不注意でトラックに轢かれ死んでしまう。 目覚めたら自称神様がいてどうやら異世界に転生させてくれるらしい このサイトでは10話まで投稿しています。 続きは小説投稿サイト「小説家になろう」で連載していますので、是非見に来てください!

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します

潮ノ海月@書籍発売中
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる! トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。 領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。 アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。 だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう 完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。 果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!? これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

貞操逆転世界に無職20歳男で転生したので自由に生きます!

やまいし
ファンタジー
自分が書きたいことを詰めこみました。掲示板あり 目覚めると20歳無職だった主人公。 転生したのは男女の貞操観念が逆転&男女比が1:100の可笑しな世界だった。 ”好きなことをしよう”と思ったは良いものの無一文。 これではまともな生活ができない。 ――そうだ!えちえち自撮りでお金を稼ごう! こうして彼の転生生活が幕を開けた。

処理中です...