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兄の姿

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 今日のバルタリンドは雨だそうで、仕事が暇になったタマリーがカロを連れて、そして経由地繋がりでママ上殿とアルネスを引き連れて島にやって来た。勿論メッツ君にガンダー、シンクレイアも一緒だ。

「大所帯で済まないね」

「歓迎するよ。ガンダーも久しぶりだな」

「あ、あば」

赤ちゃん語は分からないが嫌では無さそうだ。多分。

「メッツ、今夜はみんなでお泊まりですよー」

「ママ…、パパのご飯どうすんのよ…」

「何時もの酒場で済ますそうよ。偶の気晴らしくらい、させてあげなきゃね」

「ママ上、ご飯作ろ!教えてなのっ!」

あらあらはいはいとカラクレナイに連れてかれるママ上殿に、それに付いて行く女達。飯の力は偉大である。
居間に残ったのはカロとタマリーにエージャ。そして義弟と息子と娘。赤ちゃん三人浮かせて抱き寄せ頬っぺにチュウ…。シンクレイアに殴られた。

「取り敢えず赤ちゃん部屋で遊んでもらおうか」

「そうだね。同年代が集まる事なんて滅多に無いからきっと喜んでるに違いないよ」

「二人は大人との交流はありそうだが、メッツ君はどうだ?」

「坊っちゃまはご近所の奥様達のおっぱいを貰っております。出る出ないに関わらず」

「はははっ、それは羨ましいな。今度遊びに行くよ」

「場所と日時を設定しておきます」

『ばか』

「旦那様、シンクが拗ねちゃいましたよ?」

「後で甘い物をあげようね」

「きゃっきゃっ」

これは喜んでる絶対。
皆を連れて赤ちゃん部屋に向かうと、今は兎ちゃん達のお散歩タイムのようで兎少なめ。人の子は全員揃ってた。

「ジョー二アス~、お兄ちゃん達連れて来たよ~」

でっかい赤ちゃんベッドの中にお兄ちゃん達を入れてやると、三人がハイハイしながら寄って行き、揃って頭突きした。遠近感どこ行った。耐えるメッツに、石頭なのか動じないガンダー。兄の姿を見て涙目で堪えるジョー二アスが健気である。回復掛けとこ。

「あぎゃぎゃ」「ぎぎぃ」「ふへ」

ゴロツキみたいな笑い方である。大人になる前に矯正せねば。

一方、勇者シンクレイアは兎ちゃん達に突進してモフってる。気持ちは分かる。

「シンクレイア、程々にな?」

「あーい」

「返事しましたね」「したな」「ですね」

「偶々だろ。パパの気持ちを察してくれたなら嬉しいがな」

赤ちゃん達を撫で回し、お世話の大人兎に子供を託して部屋を出た。

「風呂に行っても皆料理に夢中だろうし、城にでも行くか」

「城?」「カケル様は王様になったのですか?」

「ウラシュ島ですね」

カロは分かったようだ。どうやら以前ジョンに会った繋がりで、クリューエルシュタルトのギルドとは連絡を取り合ってるんだって。転移門を潜り、城へ入り、エントランスは女の園。皆、風呂と井戸端会議の参加者だ。この中で街の運営が半決まりしたりするので井戸端議会と言っても良いかも知れない。

「おや、今日はお連れさんが違うねぇ」

「お妾さんかい?」

「そうだよ。カロにタマリー、エージャだ。あまり来ないがよろしくしてやってくれ」

挨拶合戦、よろしく攻勢、根掘り葉掘り。女のコミュは何時もこんなモンだ。この姦しい中でよくミーネは聞いて居られるな。女の集まりの中心に居るミーネに目配せすると、目で挨拶してくれる。

「皆、先に行ってるぞ。場所は先輩達に聞いてくれ~」

一足お先に風呂へ行く。全裸にタオルをアイツに掛けて、浴室への階段を降りて行くと、聞き慣れぬ悲鳴に此方もびっくりする。
この間連れて来た女達だ。此処で狼狽えると負けなので、先輩主婦に挨拶しながら堂々と、浴室に降りて掛け湯した。

「か、カケル様。何で此処に…」

「元々俺の家だし、王配だからな」

「そう、ですか…。けど、そん「まあまあ良いから。あンた等はゆっくり浸かっといで」」

狼狽える女を先輩の一人が宥め、俺のタオルを捲って口を付けた。じゅぷじゅぷと音を立て、アイツに涎を塗り付ける姿に新参者は言葉を失っていた。




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