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愛娘の声

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 四十階がトカゲだと、その先はもう敵が居ないのではないかと思ったが、遂に目的の敵が出てくれた。ゴーレムだ。だがあまり大きくない。俺より小さくてずんぐりむっくりなのがワーッと走って来て《結界》にぶつかってる。魔石も小さいし、ドロップもBB弾程の鉄粒。だがこの調子でボス部屋がゴーレムなら期待大だ。俺にとっては此処からがスタートなのかも知れないな。
エリアのマッピングは三十九階で辞めた。普通の冒険者じゃ四十階を越えられないもの。
ミニゴーレムを倒しながら階段を降りると、ミニより大きいサイズが混じりだした。ドロップも銅弾だ。銅貨一枚作るのに十粒以上要りそうだけど、コツコツ集めてく。そして四十九階でミスリル粒が出た。いよいよだな。

 期待を胸に飛び込んだ五十階のボスは、金色のゴーレムであった。うん、RPGで見た事ある奴だ。形は歪だが、倒すときっとお金が大量に手に入るだろう。そんな金色が五匹。魔法陣からゆっくりと出て来ている。
リュネみたいに全身を《収納》は出来無いので、全身が出たのを見計らい、脚を狙って《収納》した。
歩けなくなり腕で此方に躙り寄る金色達だが、遅いので歩いても余裕で対処出来る。試しに一本《収納》していた脚を取り出すと、取り出した瞬間に煙になってしまった。クソが。
腕を、胴体を、そして頭を《収納》し、外に出すと煙に変わった。魔石とドロップは煙が変化してなる物のようだな。ドロップは、魔石にデザイン違いの金貨。箱からは予想通り金のナゲットが出てくれた。ミスリルも出てくれると良いがなぁ。

 五十一階からは金属粒がナゲットに変わり、殆どが銀と銅になる。敵の数もそれなりに多いのでボス部屋とマラソンすれば金銀銅は集まるな。

『どこ居るの?』

「は?」

声に出ちゃった。これは我が愛娘の声だな。

『パパはダンジョンでお仕事ですよ。お土産は魔石で良いかい?』

『私ドラゴンじゃないからもらっても困るわ。それよりママ達が心配してるわよ。さっきまでセカンドハウスのお風呂に入ってたんだけど、メイドの格好した人達がそんな事言ってたわ』

『小さい方?大きい方?』

『声の事よね?それなら大きい方よ』

『フラーラか。なら一度帰るかな。競合も無いし』

『そうそう、お土産はアクセサリーが良いわ。娘の親愛度が上がるわよ?』

『しゃぶらないと約束出来るならな』

『子供…だったわ。善処する』

ガンダーが魔石にしゃぶり付いてたから好きなのかと思ったが、違うみたいだな。

『ああ、そうそう。今時間は如何程くらいかな?』

『多分お昼前だけど?』

『助かるよ。ダンジョンだと時間の感覚が鈍るから。では夜には戻る』

『カホウは寝て待つわ』

家宝にしたいのか。ハードル上げやがる愛娘め。六十階の扉を開けて、素早く敵を煙にした。


 魔石とドロップを選別し、依頼の魔具を廃棄して、拾った魔具からお土産になりそうな物をピックアップする。魔剣魔装は装備者を選ぶので全部捨て、アクセサリーの中からお土産を選ぶ。ママ上殿に上げたような逸品は見付からなかったが、そこそこの物はキープ出来た。
島に着く頃には夕飯時を少し過ぎていたが、何とか食事にありつけた。

「カケル、女は?」

「匂いはしますね」

イゼッタとテイカが俺の両隣を占拠してべったりして来る。食べ難いのだが。

「ほれ。産まれて来るのが雌なら女だ」

ヤモリっぽいのの卵を取り出してやると、プニプニを持って眺めてる。

「カケルさぁん?私達以外と卵を?」

「ドロップしただけだよ」

「カケル、これ何の卵?」

「ヤモリっぽい…って言って分かるかなぁ。暗い所に居て壁に張り付くトカゲみたいなのなんだけど。後、毒吐く」

「アービンソンカベハシリかな?」

  「毒を吐くならエッテンドクトカゲだよ」
「そんな物、毒吐きトカゲで良いでは無いか」

フラノノが同定を試みるのをリームが一蹴し、殻を破って飲み込んだ。
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