910 / 1,519
観光地価格
しおりを挟むリームが飛んでった後、少しだけバジャイとイチャイチャしてから移動を始めた。ノーズコーンの中で干し肉を齧りながら飛んで行くと、一枚食べ切らぬ内にダンジョン都市に到着してしまう。まだ薄ら明るい程度だがギルドはやってるだろうし説明聞いとくか。
「ギルド証の事務処理と、ダンジョンについて説明してくれ」
「はい。ではギルド証をお預かりします」
この街のダンジョンは地下一階からそれなりの強さの魔物が出るそうで、浅い層でも稼げるって事で名が通っているらしい。浅い層で稼げる事の弊害が、深部の情報の少なさとして上がる。地下三十階以降の情報も商材となるそうだ。
入場料が掛からない代わりに買取価格は渋め。それでも一般的な冒険者パーティーが食えているのだから豊かなダンジョンと言えよう。
最後に、出入りは自由だが救援は見込めないと伝えられ、ギルド証を返された。完全実力主義か。
長居してても稼ぎにならんので、早速ダンジョンへと向かう。街の外れにある小高い丘にダンジョンの入口があるようで、俺の先にも五人パーティーが向かってるのが見える。装備からして野郎だな。無言で歩いてダンジョンの入口へ。
野郎パーティーがランタン等を準備するのを横目に、俺は一人ダンジョンに潜る。中はだいぶ薄暗い。《暗視》と《感知》を掛けると、部屋と通路のある遺跡型ダンジョンである事が分かった。
「キキッ、キッ!」
「うわ、群れてるなー」
高い声で鳴きながら、蝙蝠っぽいのが沢山、天井に張り付いてたり飛んだりしている。こんなの一斉に来たら気持ち悪いなんてもんじゃ無い。襲い掛かって来る奴だけを煙に変えて先を急い…あれ?煙にならん。それにダンジョンの敵って、敵が捨て身で襲い来るんだったよな。
その原因は暫くして判った。
ダンジョンに入り込んだ野獣が自然繁殖したモノだと、下り階段の周りに建てられた現地の露天商の一人に聞いた。謎肉串焼き一本五百ヤン、観光地価格だ。
因みに此奴等、全然外に出ないモンだから《洗脳》受けてないみたい。売上げ下がってボヤいてたよ。
階段を降りて更に進む。箱はあるけど誰かが開けてる姿を《感知》で見たのでスルー。大した物でも無さそうだし、とっとと潜るに限るな。下への階段迄、《結界》で身を包んで飛んで行く。敵は大きめのブフリム?にウォリスみたいな犬っぽいの。大陸が違うと名前も変わって来るから正しい名前が分からない。突っ込んで来ては《結界》にぶつかって呻いてる。これはダンジョン産だな。ゴリゴリと壁に追いやり下へ下へ。そして十階、ボス部屋前に到着した。
先に四人が待機してる。パーティーかな?
「なあお前等、並んでるのか?」
「あ?あ!カケル様!並んでます」
紅一点に声を掛けると俺の事覚えてくれていた。
「カケル様…ああ、あれか、ギルドに関わるなって言われてる奴」
「割り込みしたいなら金積むか、力で何とかしてみな?」
男からはこんな感じに言われる。基本、ダンジョンで他の冒険者に話し掛けてはいけないのがお分かりだろう。これでも《洗脳》されてんだぜ?
「ドロップ要らないから同行させてくれん?待つのも億劫だしさ」
「喜んで!」
「「何でお前が決めんだよ!」」
「あンた達ねぇ…、逆らわない方が身の為なの。分かる?」
「俺もそう思うぞ。此奴、相当やるよな」
静かにしてた男が割って入る。装備的にはローブに皮鎧で中・後衛かな?漏れてる魔力が見えちゃったみたい。苦笑いを返しとく。
「邪魔しないなら良いぜ。但し俺達の視界から外れるなよ?」
「カケル様、ごめんね。みんな不意打ちが怖いのさ。分かってね?」
「気にすんな。俺の目的地は下層だから、時間を無駄にしたくないだけなんだ」
「は?一人で下層だと?」
「止めなってば!この人そんくらいの実力あるんだよ!?」
煽った男にキレる女を宥めて宥めてボス部屋が空くのを待った。
0
お気に入りに追加
133
あなたにおすすめの小説
愚かな父にサヨナラと《完結》
アーエル
ファンタジー
「フラン。お前の方が年上なのだから、妹のために我慢しなさい」
父の言葉は最後の一線を越えてしまった。
その言葉が、続く悲劇を招く結果となったけど・・・
悲劇の本当の始まりはもっと昔から。
言えることはただひとつ
私の幸せに貴方はいりません
✈他社にも同時公開
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話
妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』
『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』
『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』
大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
美しい姉と痩せこけた妹
サイコちゃん
ファンタジー
若き公爵は虐待を受けた姉妹を引き取ることにした。やがて訪れたのは美しい姉と痩せこけた妹だった。姉が夢中でケーキを食べる中、妹はそれがケーキだと分からない。姉がドレスのプレゼントに喜ぶ中、妹はそれがドレスだと分からない。公爵はあまりに差のある姉妹に疑念を抱いた――
魔境に捨てられたけどめげずに生きていきます
ツバキ
ファンタジー
貴族の子供として産まれた主人公、五歳の時の魔力属性検査で魔力属性が無属性だと判明したそれを知った父親は主人公を魔境へ捨ててしまう
どんどん更新していきます。
ちょっと、恨み描写などがあるので、R15にしました。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる