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配慮
しおりを挟むシャリーに任せた店舗だが、大通りにある飲食店の一部を間借りして営業する事となったようだ。営業時間は朝と夕方、昼と夜をメインにしている飲食店の空いた時間を使う事になると言う。
豆乳自体は完成品の持ち込みのみなので、仕込みの邪魔にはならないし、余った豆乳は格安で卸して料理に使ってもらう事で無駄を無くす算段が出来ているのだと。
働き手は孤児院暮らしの街の子供を使うと言うが、制服貸与の二食賄い付きで日給銅貨六枚。安くね?と思うなかれ。安宿に一晩泊まれて手元に一枚残るのだ。そして、持ち過ぎて大人に奪われにくい額でもある。と、シャリーは力説する。
朝一で来る客は各ギルドの女性職員に夜の蝶達。昼になるとギルド職員が戻って来て飯を食う。夕方の客は主婦が多くなる。自分や子供の為に買って帰る。夜になって現れるのは冒険者。エールに肉の締めにスープを飲んで帰る。
「流石は元商業ギルド職員だな」
「私はそれ程でも。良い物が認められたのです」
「物だけじゃ無いぞ。ちゃんと経済回そうと考えてるじゃないか」
シャリーお手製の報告書を読んで素直な感想を口に出す。謙遜してるが耳は真っ赤だぞ?
「飲食店からの反応はどうだ?子供を使ったりしてて不満は出てないか?」
「清潔な制服と衛生観念の徹底が効いてますね。それに子供と言っても十歳からですし、問題はありません」
無いのか?地球だと大問題なんだが。孤児院での食事だけでは物足りない食べ盛り達には食料を手に入れる術が必要なのだろう。食えない時期を知っているシャリーならではの配慮だと感じた。
「またダンジョン?」「また女?」
ダンジョン=女と思うのは止めて頂きたい。だが女と言われて別件も思い出してしまった。
「ネーヴェのおかげでそっちの要件を思い出したよ。魔具捨てに行かなきゃいけなかったんだった」
夕飯を食べながら明日からの予定を告げるとイゼッタとネーヴェが口を揃える。
「ミスリルと金銀もまだまだ欲しいし、またアソコに行く事になりそうだ」
「…………」
無言の圧力?視線が気になり振り向くと、待機モード中のペルマが俺を凝視していた。
「…一緒に、行きたいのか?」
大きく首を横に振る。
「…行ったらダメ、なのか?」
今度は大きく頷いた。
そうなると、魔具は他のダンジョンで捨てなきゃならん。それ自体は問題無いが、金属ドロップが見込めなくなるな。
「…ペルマの意思を尊重しよう。なら何処行くかな~」
「旦那様よ、カケラントにもダンジョンがあった筈だな」
「ああ、あったあった。だが初見だと何が採れるか分からんのよな」
「それを確かめに行くのも必要だろう。少なくとも魔具と魔石の問題は解決するのだ」
それもそうか。もっと良い物拾えるかも知れんしな。
「なら明日はそっちに行ってみるかね」
「「そして女がふえる」」
「増えない努力はしてるつもりだ」
ダンジョンに女が居るのが問題なのだ。あんなイレギュラー早々あって堪るか。
翌日は夜明けと共に起き出して、支度を整えウラシュ島に向かう。龍を連れてって難易度を下げたく無いし、人を連れてって難易度を上げたくも無い。
一人の状態での難易度を基準にしたいのだ。
「カケルさま?」
「バジャイか。おはよう」
人間用の扉を開けて外に出ると、異変に気付いたバジャイが巣から顔を出した。
「行っちゃう?」
「お仕事だよ」
とは言えしょんぼり顔をのバジャイは放っては置けん。巣に飛び込んでバジャイのベルベットおっぱいに頬擦りした。
「カケル、さま。好き。好きっ」
「俺もバジャイ好き~」
一オコン程バジャイとイチャイチャしてたら仕事に来たリームに見付かってしまった。
「気配がしないと思ったらこんな所に」
「バジャイが可愛かったからつい」
「うにー好き好きー」
「ふぅ、早く行って早く帰って来るが良い」
呆れ顔で飛んでってしまった。俺も仕事しないとな。
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