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立派なギルドマスター
しおりを挟む話が変な流れになって来た。
「それがな?期限も短かった上に荷物を減らさなかったおかげでさ、人数分のチケットがもらえたんだ。行きたいだろ?」
「おお!」「行きたーい」「是非とも」「うんっ」「行くぞ!」「俺も!」
「ジョン、謀ったなジョン!」
皆が皆、フル装備なのは着替えるのが面倒だからかと思ってた。酒も飲まず腹八分目なのはこれが狙いか。そしてジョンもお花摘みでは無くチケットを貰いに行ってたのだな。ピラピラとチケットをチラつかせるジョンは、もう立派なギルドマスターだ。
「カケルだって、お土産欲しいだろ?可愛いあの子が首長くして待ってるぜ?」
魔石は売る程あるんだが、そう言われるとな。ぐぬぬ…。
「はぁ…。分かった。成る可く死ぬなよ?」
「やったぜ」「「「流石ジョン!」」」
「カケル、よろしくねっ」
「私達も良いトコ見せなきゃねー」
「二つ名を見せてやりますよ」
そんなこんなでダンジョンへと向かった一行は、ジョンのチケットでダンジョン内に潜り、最短距離で下へ下へと降りて行った。
ジョンが階段迄のルートを覚えていたのだ。分かれ道に隠れてる敵には《威圧》を当てて、動けない隙を突いてマッチョが打ちのめし、偶にマルーンが首を狩る。魔法と回復は温存だ。そして俺も温存だ。
「カケルに殺らすとつまんねーからな」
つまんね言うな。
ボス部屋前で休憩し、ボコってドロップ見て少し休憩。そして更に進む。初めは楽勝だったが三十一階から先は武器のしょぼさが出始めて魔法を投入。
「普通の武器だとこの辺からキツくなんだよな」
「八百万もしたんだぞ?」
トカゲの魔石二つ分とはだいぶ気張ったな。ミスリルコートした大剣だが、魔法が使えないのにミスリル武器を使うのは、正直無駄でしか無い。ドータンの大盾はベコベコにされているが、素材が柔いだけでダンジョンには合っている。盾二人でローテーション組みながら飛び道具で屠る…とか、効率的だと思った。今は盾で何匹かを受け止めて、ルウェインとキャストルが交代で戦う形になっている。因みにキャストルの武器は長剣の二刀流。狭いダンジョンではやり難かろう、突きメインでチクチクしてるよ。
「魔法はまだ効いてるねー」
「首は守られて無ければ何とか…」
「みんな、強い…。怪我して」
物騒な事を言う癒しの冷姫である。
「ドロップの武器に持ち替えながら行くぞ。その内もっと良いのが出っかんな」
「「「おお」」」
ジョンが鼓舞してやる気を出して、四十一階。トカゲのボスを倒し、下の階へ降りて夕飯となった。少年隊と来た時よりだいぶ早いな。ジョンが道を分かってたのもあるが、皆の力が本物だと言う事もある。
皆の分の火の鉄板と、油を塗った煉瓦板を二セット。薄切り肉を皿に盛り、お椀にはトロトロの白濁を注いで渡す。
「片方は薄ソーサー用だ。俺のを見ながら作ってみてくれ」
薄ソーサーは煉瓦板に注いで待ち、ひっくり返して待つ。それだけだ。その間に薄切り肉を数枚焼いて、薄ソーサーに乗せて巻いて食う。皆真似ながら食いだした。今回はジョンも一緒になって焼いて巻いてして食ってるな。
「美味いな」
「この薄いのが手掴みで食うのに良い」
「焼きながら食えるのも良いな」
皆にも高評価を頂けたようだ。
「カケル、…美味しいね」
「そうかそうか。お代わりもあるぞ」
「これは魔道具ですよね?お幾らです?」
「それよりさ、ドラゴンのお肉食ーべーたーいー」
「今食ってるだろ」
トカゲ肉と聞いて無言で食い出した。現金な物だな。
「なあカケル。今夜は此処で寝るのか?」
肉食共が暴れ食う中、ジョンが予定を聞いて来る。
「取り敢えずはそのつもりだ」
「だったらさ、腹熟しに少し狩って来ても良いか?」
「また血みどろで帰って来るんだろ?今夜はぐっすり寝てしまえ」
煉瓦でトイレとパーテーションを作って男女が寝られるスペースを確保した。さぁさぁ寝ろ寝ろ。
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