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五年後

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 尻をモジモジしてるリームを置いて街の外に出る。特に実が成ったり建材用の木で無くて良いので、太くてあまり高く無く、よく茂って毒の無い木を見繕って枝をたっぷり集めて来た。

「あ、主様。早かったのだな」

「近場で済んだからな。じゃあ街に戻るぞ」

「ああ。また、乗ってくれるか?」

「静かにするならな」

「約束は違えん」

空に上がり、光を纏って龍の姿に戻るリームの背に乗り街へと戻ると、街ではそろそろ昼飯の用意を始めるようで、住民達に混ざってミーネが肉を焼いていた。

「只今ミーネ。料理を手伝ってるのか」

「偶にはやらんと腕が落ちると思ってな。二人はキネイアッセンに居たようだが、何をしていたのだ?」

「植林する用の木を集めて来たんだ」

「木なら外に生えているだろうに」

「建材用の木は縦に伸びちゃうから、横に広がるのを探して来たんだ。此処は暑いから日陰作りたいしね」

「成程な。で、そこの愚妹は随分としおらしいじゃないか」

「聞くな姉者」

「どうせ何事かやらかして凹まされたのだろ?お前も手伝え。旦那様は働きには報いてくれる方だぞ」

「ああ」

二人して、肉を浮かせて焼き出した。俺も配膳手伝おう。テーブルや椅子を並べたり《洗浄》したりした。

「あ、カケル」

「カケル様だ」「カケルさーん!」「カケル様~」

テーブルに昼飯が並び始めた頃、テッチー姉妹とティータを連れたネーヴェが遊びに来た。昼飯を集りに来たのだろう。

「テッチー、ラッテ、ティータ、暫く見ない内にキレイになったな」

「えへ~、キレイだって」

「カケル様に認められるように頑張ってるもん」

「私は嫁ぎ先が決まりましたよ。嫁ぐのは五年後ですが」

テッチーは嫁ぎ先が決まったのか。五年後が楽しみだ。

「私、お婿さんを取るみたい。ヤだけど」

「頑張れラッテ。俺が突いてやるからな」

「カケルさぁ~ん、私、家を追い出されちゃうかも!?」

「息子に宿を任せるからか?」

「そうなの!弟が成人した頃には私お婆ちゃんだよ!引き取って~」

普通に働き続ければ良いと思うのだが、行かず後家は問題ありって事なのかな?

「ティータちゃんは私が雇ってあげるって言ってるのにー」

ラッテの商家が就職先になるなら俺が引き取る必要は無いな。取り敢えず全員座らせて料理を並べ、飯にしようぜ。何時の間にか隣に座ってるバジャイが上手にカトラリーを使って食事をしてるのを見て目頭が熱くなった。

「上手に食べられるようになったね」

「んぐ、んっ。バジャイ、覚えた」

「偉いぞ。後で撫でてやろう」

ちゃんと飲み込んでから返事するし、ホント良い子。

 食事を終えてお茶を飲み飲みバジャイを撫でてやっていると、調整役のマルシアが働き手の総意を伝えに来た。纏めると、そろそろ現物支給で無く金銭を支給して欲しいそうな。クリューエルシュタルトだけだが買い物出来るようになったので、これからは欲しい物は自分で用意したいのだと。特に断る理由も無いのでシャリーにその準備をさせる事を確約した。
本来ならウラシュ島の貨幣が必要になって来るのだが、金を作る程の地金も額面通り使ってもらえる信用も無いから、暫くはクリューエルシュタルトの通貨で遣り繰りしなければならない。五~六年は掛かるかな。

「あ、そうだ。外の街に住んでる行商達は貨幣使ってるのか?」

「はい。けど殆どが物々交換です。塩と干し野菜に干し魚を出しています」

「干し魚作り出したのか」

「焼き塩施設の屋根に並べて干してます。熱があるので直ぐに出来るんですよ」

排熱利用とは考えた物だな。貨幣があるなら見せてもらおうと思ったが、本当に少ないみたいでマルシアは持ってないと言う。記憶として貨幣との認識はあるが、国が亡くなった時点で地金にしかならない上に、使い道の無い地金なんて欲しくないのだそうだ。
ギルド証に振り込んだら金としてカウントされるのだろうか?

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