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一肌脱いでもらおう
しおりを挟むテイカを懐柔して食堂へ向かうと住民総出で出迎えられる。どうやらずっと質問攻めを受けていたようで、ワーリンもキキラも疲れた顔してるよ。
「カケル、もふもふ」
「ああ、もふもふだな」
キキラの頭をもしゃもしゃしながら肩車されてるネーヴェに、膝の上に乗る兎女児達。
「カケル…さぁん。怖いよう。動けないよう」
「ネーヴェ、皆も仲良くしてやってくれ」
俺が言うまでも無く、お話合いは済んでいて仲良くしてくれるそうだ。一体どんな話をしたのだろうか?
夕飯を食べて、ワーリンはキキラを連れてセカンドハウスに帰る。早目に住民票を更新したいからだ。冒険者するなら事務処理しなきゃだしな。残った俺達は食堂でお茶を飲みながら皆に土産を見せた。
「なにそれ?袋?」
「旦那さま、サラッとしててシーツ作るのに良さそうですね!」
「中々のモノですが、加工せんと赤ちゃんのお包みになってしまうぞ?」
「シルクワームでしたら存じております。城で着ていた衣服は殆どがソレで作られておりました」
お包みか。それはそれで使えそうだ。だが皆の服にもしたい。
「リア達はコレを糸や布に加工出来る職人に宛は無いか?」
あるにはあるけど面識が無く、糸を採るにも機織りするにも時間がだいぶ掛かるそうだ。数も多いし仕方無いよな。唯、こっちでは売買に規制の掛かる物では無いようで、貴族御用達の店等では糸布何方も売られている模様。
「わたしの街ではそんな店無いですけど?」
「うちにも無かったかも」
「ナーバーグは存じ上げませんが、確かにバルタリンドには御座いませんね。王都や上級貴族の住まう都市には御座いますかと」
「奥様、ナーバーグにもありましたよ。レンパインさんの仕立て屋です」「なる…」
辺境とは言え侯爵領の領都だったのだし無い事は無いだろうな。
手持ちの繭殻を処分したいのでどうしようか悩んでいると、サミイがパパにやらせると名乗りを上げた。普段扱う布は綿製品が殆どだが、シルクワームを扱う業者とも交流がある筈だと言う。可愛い娘と孫の為に一肌脱いでもらおうか。
翌日は朝食を摂ったらセカンドハウス経由でママ上殿の寝具店へと向かう。キキラ達がまだ出勤してなくて良かった。それにあちらも用があるようで、転移門のあるカラクレナイの部屋に丁度入って来た所だった。
「あ、お前さん、なんか服無い?キキラがバテちまうんだ」
「お湯に、浸かるとか。ねーわ…」
慣れないと熱くて苦しいらしい。少年隊もそうだったな。
ワーリンには温度調整の出来る全身タイツをくれてあるが、似た効果の物って無いんだよな。効果の無い装備は売っちゃったし…。
「魔装はあるけど絶対碌な事にならんだろうしな」
「男の子達、持ってるじゃん。魔装に魔剣なんてびっくりだよ…」
「子供が魔剣とか持ってるなんて思われないだろ?」
しかも彼奴等ハンドメイドで装備を作ったりカスタマイズしてるから、どれかが魔装だってなっても分かりづらいんだ。
取り敢えず、柔らかめにした雑木紙で皮鎧風のを練ってやる。紙鎧に袖を通し、毛皮のよりはマシになったと言うのでその足でママ上殿の所へと向かった。
「カケル様、いらっしゃいませカケル様。皆様が此方から来るのは久しぶりですね。カケル様、此方の方は新しい女ですね?カケル様?ねえカケル様」
カケリウムの切れたエージャが濁った目で俺の名を連呼する。取り敢えず怖いから頭撫でとく。で、ママ上殿の居るキッチン迄降りて、面通しとご挨拶。メッツ君にもなでなでぷにぷに、お兄ちゃん成分を補充して、冒険者組はギルドへと向かって行った。
俺は店舗にて親父殿と繭殻について話をする。やはりその手の業者とも繋がりはあるようで、仕入れ的には問題無いようだ。唯、売り払うには注意が必要で、数を出すと足元を見られたり採集場所を探られたりするそうなので、チマチマ売るのが良いみたい。
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