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土産

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 部屋の中はほんのり薄暗く、奥に座るパパリンと、隣に立つ一人が苦虫噛み潰した顔してる。

「親父、何のつもりだい?灯りまで落としてさ」

ワーリンが部屋の明かりを強くすると、テーブルセットが部屋の隅に立て掛けてあり、何時でも乱闘可能な感じにセッティングされていた。

「言わんこっちゃないぜ~?カケルだったなー。其奴等は親父に雇われた小遣い稼ぎだー。許してやってくれやー」

「そうだな」

下の兄は乗り気では無かったようで、二人の許しを乞いながらワーリンの頭を撫でていた。濃いグレーの体毛がワイルドで、良い体してやがる。《威圧》の纏いから解放された二人は山羊と氈鹿かもしかで、如何にもな三下スタイルだ。

「ジロ、お前何ぬけぬけと撫でてやがる!」

パパリンの隣に立つ焦げ茶の犬耳が吠える。締まった体をしているがそんなに大きく無いな。俺と同じくらいか。

「お前さん、紹介するぜ。下の兄貴のジロと、うっさいのが上の兄貴でジュリー。親父は昨日見たよな。そこの二人は知らん」

「知らんのかい。俺はカケル。冒険者だ」

「冒険者だと「話はテーブル出してからだよ!」」

テーブルと椅子を並べて家族が座る。山羊と氈鹿は帰って行ったよ。

「はい、コレ土産な」

テーブル一杯にタオルやら服やら武器に盾。酒に干し肉なんかもあるぞ。土産にしては多過ぎないか?三人も若干引いている。物量に言わせて黙らせる作戦か。

「俺も土産買ってくれば良かったかな」

「構わん。見ず知らずの人種に物を貰う謂れが無い」

上の兄はそう言うが、なんか嫌なので土産をくれてやる事にした。《収納》に入ってる物なんて大した物無いけどな。

「なら見知った記念って事で」

椅子から立ち上がり、ドアへ向かう。黙りだんま のパパリンが帰れコールするのを無視して《収納》から鉄塊を取り出した。

「鉄ー?」「鉄だな。何で浮いてるんだ?」

「この人のスキルだよ。まあ見てなって」

目の前のドアを見ながら練り練りと一回り大きく作る。ほんの少しだけ《収縮》させて、鉄枠の大きさに切り取った穴にドアを嵌め込んで元も大きさに戻す。縦三ハーン、横二ハーンのドアとなった。

「おお!鉄扉だ~!」「デカいな…」

下の兄は直様駆け寄りキコキコ開け閉め。上の兄はその大きさに感心してるようだ。

「ちぃっ、油臭ぇモン付けやがって…」

「親父ぃ、臭く無ぇぞ?つか油注さね~と~」

ワーリンが持って来た土産の油を口に含んで、噛み合わせにピュッピュと吹いて、音が無くなる迄開け閉めしてる。食用油なんだが、まあ良いか。

「カケル~、お前ぇは今日から兄弟だ~!」

「本当ならぶちのめして追い返す所だがな!」

「殺れ!殺っちまえ!俺のワーリンを誑かした人種なんざズリん中ぁ練りこんじまえ!」

「親父ぃ、分かんだろ~?此奴は無理だってぇ」

「カケルだったな。親父よ、よくてみろよ。こりゃやべぇぞ?」

「んなモン分かっとるわっ。俺が後十人…否百人居れば…」

無理だろ。だがこの三人、何かがえるようで俺の強さが判るらしい。

「兄弟、俺達ゃ魔力が見えんのさ~。暗い中で魔物と殺り合うにゃ暗視や魔力視が必須でなぁ」

確かに、ランタン持って殴り合うのはスマートじゃ無いよな。

「所で親父、仕事はどうしたよ?」

「んなモン休んだに決まっとろーが。他の組に頭ぁ下げたんじゃ!撫でさせろ」

「ヤダよ親父爪刺さんだもん」

それは嫌だな。渋々爪を鑢で削るパパリンをスルーしてワーリンを撫で回す二人の兄であった。猫可愛がりされてたんだな、犬…狼なのに。

すっかり丸くなった爪をワキワキさせてワーリンに襲いかからんとしていたパパリンだが、ゴインゴインと鉄扉を叩く音で我に帰った。

「誰だ!?」

「ウヴァルか?俺だ。オルグだ。それより何だこの鉄扉は?」

「貰いモンだ、気にすんな。今開けるぞ」

パパリンがドアを開けて中に入って来た者は、二足歩行で立つ、全裸の熊だった。

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