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色々食った

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 服が濡れると嫌なので《収納》に仕舞う。すると兎が寄って来る。お前等何処に隠れてたんだ?

「滝壺に潜るからソッチはまた後でな?」

「「「はーーい」」」

冷たい水に腰まで沈めて深呼吸を一つ、二つ…。空気の膜を纏えば耐えられる事に気が付いて、滝壺の中に沈んで行った。

 流木に玉石、そしてエアフロー。まるでキレイなアクアリウムのようだ。滝壺の下に広がる世界は本当そんな感じ。水草と魚が居れば完璧だな。

「ぶっはっ」

「カケル、生きてる?」

「生きてるよ」

息継ぎに上がるとイゼッタが変な心配をしてた。この世界の人間って殆ど泳げなかったり泳ぎを教わる事無く一生を過ごすらしいから、泳げるのは平民の極一部らしいんだ。迂闊に入水したらデカい魚や野獣に食われちゃうから仕方の無い事だろう。
息を整え再び潜る。石の中から宝石になる物を《集結》し、陸に浮かび上がらせる。ゴロゴロとした石が浮かんで集まり、一塊になって上がってく。何となく色が付いてるな。

「ぶふっ!はぁ、はぁ…」

「お帰りなさいませ。それが原石なのですか?」

「ふう~。多分な。磨けば光るのだと思う」

「「「お身体温めます」」」

イゼッタ達が石ころを持って凝視するのを余所に、俺は兎達におしくらまんじゅうされた。あったかいなり~。

 ウサマンに、熱い子種を流し込み、すっかり夕方になってしまった。石は皆が母屋の居間に持ってってくれたので、飯風呂したら久しぶりにこっちの居間に集まりお茶にする。

「イゼッタは、原石の事は詳しいのか?」

「他の人よりは?」

「リュネはどうだ?」

「出来の悪い姉は石が好きで集めてましたね」

「魔力を増やそうと試みて色々食ったぞ」

食ったのか。

「削ったり切ったりすると部屋が汚れるから《収納》で切ってみるか」

「是非そうしてください」

テイカはキレイ好きなので部屋を汚すと嫌な顔をするんだ。なのでイゼッタのグラインダーは使えない。絨毯の上に小山になって転がる石を掴み上げ、じっと見てみる。

「カケル、それ、グリーンジェム」

「殆どがグリーンジェムでしたね」

ホワイトジェムと言い、目の前のグリーンジェムと言い、地球では聞かない名前だ。『詳しくは分からないが○色の宝石』って意味なら何となく理解出来るが、此方ではコレが正式名称だそうだ。

「他には何があったんだ?」

「純度が低くて使えないヤツ。あと、グリーンストーン」

「ストーン…石か。ミスリル鉱山の近くは緑色が多いのかな」

「たぶん」

ノーノ曰く、石も宝石も魔道具には良い所だけ使うのだそうだ。マーブルとかキレイだと思うのだが、魔道具にすると割れたりするんだそうな。
純度の低いジェムや石は粉にして絵の具にしたりするので多少価値は下がるが売れるとシャリーは言う。良いヤツでも小さ過ぎたりする物も粉になるんだって。

「私、宝石商に聞いた事がございます。グリーンジェムの産地とミスリルの産地は同じで御座いました」

  「偶然かと思ってました」
「結晶化する石の中にミスリル成分が溶け込んでると緑色になるのかもな」

「成「成程」程」

 居間の端に移動して、石を浮かせて回転させる。そして《収納》の断面を出して石を押し込むと音も無く端の方から消えて行く。縦回転しながらゆっくりと横回転をして行くと、じゃが芋みたいに歪だった石が丸く砲丸のような大きさになった。切り口がキレイなのでツルツルだ。

「キレイな緑になったぞ」

「「「おおお…」」」

俺が加工してたのはグリーンストーンだったようで、濃い緑の石だった。何本か筋が入ってて、魔道具にするならこの部分は捨てる事になるのだと。

「カケル、きれい」

「そうだな」

雑木を練って台座を作り、ミスリルの横に安置した。

「カケル、人形の目にしたい。いっぱいちょーだい」

ネーヴェに言われたら断れないな。隙を見て作ってやるか…。
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