上 下
770 / 1,519

満員御礼

しおりを挟む


 久しぶりの二十一階は前来た時と同様にデカい木が茂っていた。旅館オナホである。だが今は寄る予定も無いのでイゼッタを背に乗せて向かい側へ飛んだ。

「すごい森」

「あのデカい木の中に人が入れる穴があってな。そこで寝られるんだ」

「へぇ~」

「さて、此処からは少し頑張ってもらうぞ」

「ん~」

近接戦闘では手こずりそうな犬顔やトカゲ顔だが、魔法を使うイゼッタには敵にならない。通路全体に範囲魔法を飛ばすから、近寄る者皆斬り捨てられて行く。

「円盤いっぱいだすだけ。簡単」

だそうだ。これでは運動にならないので少しだけ急ぎ足で進む事にした。とは言え曲がり角や脇道ではしっかり確認させてるけどな。俺は全体を見て、下階迄の直行ルートを指示しているが敵の有無は告げてない。後は罠を塞いでドロップを拾うだけだ。

 イゼッタの魔法は岩も斬る威力なので、敵はスパスパ煙に変わる。避ける隙間は背後にしか無く、逃げてもスパッとされるので敵にとっては悪夢でしか無いだろう。魔力の総量も相変わらずだな。サクサク下に進んで行った。
三十階のボスをスパッと殺って、箱が出る。《罠感知》に反応が無いので開けさせると、靴が一足と金。

「靴出た」

「鑑定してから履くと良いぞ。呪われてるとかあるみたいだしな」

「カケル、鑑定して」

「やり方覚えてるかな…」

鱗の靴

トカゲの皮で作られた靴。

《鑑定》したらこんな結果だった。まんまかよ。それに敵のトカゲ顔は靴履いてねーぞ?

「トカゲの皮で出来てるんだとさ。効果は無いみたいだ。新品だろうし臭くは無いと思う」

「可愛くないから要らな~い」

「ギルドに売っ払っちまおう」

「ん」

「もう十階潜るか?疲れたなら二十一階に戻っても良いぞ」

飯は何時でも何処でも食えるけど、イゼッタの体力を考えて提案してみる。階段を三十階も下って来て疲れてない筈も無く、イゼッタはこっそり杖に体を預けてる。

「回復すれば平気」

「なら後十階迄な」

干し肉を齧りながら回復魔法を使うイゼッタを待ち、再び潜行する。此処の敵は変わり映えしないから殆ど作業な感覚だ。

「カケル、エージャとは何階まで行ったの?」

「えーと…、確か七十一階だったかな」

「今三十八…」

こんな事話してても余裕で屠れる程度には殺れている。イゼッタには楽過ぎたかな。だが予定は変えず、四十階のボスを倒して引き返した。


「なっ!何だよ!?」

「此処は一杯だぜ?」

二十一階、旅館オナホに着くと満員御礼。木の周りをグルグルしながら飛んで空室を探しているのだが、どれも人が入ってた。困った。

「カケルー…」

「そんな声出すなよ。こんなに混むとは思っても無かったんだ」

空いてる隙間に穴を開けるのも出来なくは無いが、旅館オナホが怒りそうだし止めておく。だがまだ寝られる場所はある。上へ上へ、人が入るには細過ぎる枝が生える中へ飛んでくと、枝を包みながら煉瓦の床を作った。

「ちょっと主に断り入れとくか」

「だれ?」

「この木だよ」

枝に手を当て《念話》を送る。ここで寝るからトイレ作ってくれ。程度の話だったのだが、トイレ所では無くなった。煉瓦に挟まれた枝々から、床を覆う程の床が生えて来て煉瓦が見えなくなると、端から壁がそそり立つ。ある枝は柱に変わり、壁となり、またある枝は屋根を作って消滅した。延床四十平方程の部屋が数リットしない内に出来てしまった。

「すごい…。なにこれ…」

「この木はモンスターなんだよ。人の排泄物や魔力を糧に生きている」

「ダンジョンなのに?」

「ダンジョンの養分になってるのかも知れないな」

「カケル、この木に何したの?」

ニョキニョキとベッドやテーブルセットが生えてるのを見て、イゼッタの目が点になってる。

「二回程利用しただけだぞ?宿賃は奮発したがな」

「あ、なる…」

何を納得したのか。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

性的に襲われそうだったので、男であることを隠していたのに、女性の本能か男であることがバレたんですが。

狼狼3
ファンタジー
男女比1:1000という男が極端に少ない魔物や魔法のある異世界に、彼は転生してしまう。 街中を歩くのは女性、女性、女性、女性。街中を歩く男は滅多に居ない。森へ冒険に行こうとしても、襲われるのは魔物ではなく女性。女性は男が居ないか、いつも目を光らせている。 彼はそんな世界な為、男であることを隠して女として生きる。(フラグ)

転生した体のスペックがチート

モカ・ナト
ファンタジー
とある高校生が不注意でトラックに轢かれ死んでしまう。 目覚めたら自称神様がいてどうやら異世界に転生させてくれるらしい このサイトでは10話まで投稿しています。 続きは小説投稿サイト「小説家になろう」で連載していますので、是非見に来てください!

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します

潮ノ海月@書籍発売中
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる! トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。 領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。 アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。 だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう 完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。 果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!? これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

貞操逆転世界に無職20歳男で転生したので自由に生きます!

やまいし
ファンタジー
自分が書きたいことを詰めこみました。掲示板あり 目覚めると20歳無職だった主人公。 転生したのは男女の貞操観念が逆転&男女比が1:100の可笑しな世界だった。 ”好きなことをしよう”と思ったは良いものの無一文。 これではまともな生活ができない。 ――そうだ!えちえち自撮りでお金を稼ごう! こうして彼の転生生活が幕を開けた。

処理中です...