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目から鱗

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 津波は来た。が、潮位は一ハーン以下かそこらだった。とにかくホッとしたよ…。
いくら龍が厄災だと言え、元々の俺は人間だ。ちょっとばかし人の力を超えたからって、自然の力に敵う筈は無いのだ。

「クァー」「クケー」「グリュルルル」

呼ばれた気がした。トカゲ達が羽を広げて何か言ってるが、龍語じゃないので分からない。悪い感情は見えないので悪口では無さそうだ。

「皆、迷惑掛けたな。海側の結界以外は消しておくよ」

「「「クックー」」」

トカゲ達が散り散りになって寛ぎ出す。此奴等の、野生の勘が確かならば、これ以上の脅威は無いと思われる。リュネ達の所もこんな感じで居て欲しい。高く上がって島へと向かった。


「おかえりなさいませ、カケル様」「おかえりなの」

 カラクレナイに乗ったテイカが島の上空でフライングで出迎えてくれた。

「只今。リュネ達は戻ってるか?」

「居るの」「お出掛けから戻られて、今はお茶の時間です」

朝食も残してくれてるみたいなので食堂に降りて飯にした。入口から首だけ入れて、俺の尻尾を甘噛みするカラクレナイにお肉を分けてやり食事を平らげた。カララが噛んだ、尻尾が痛い。

「リュネー」

「はぁい~」

 食事を終えて、新居の居間の外でリュネを呼ぶ。窓が開いて出迎えてくれるが鼻先しか入らないからね?

「津波の様子はどうだった?」

「バルタリンドでは波が高い程度でした。ママ上様がまた来たいと言ってましたよ」

リュネはバルタリンドに行っていたようだ。ママ上殿は勇者の件が終わってから来て頂こうかな。この姿じゃ相手も出来無いし。

「旦那様はキネイアッセンに居たようだな。小島の国も同じくらいだ。分かるだろう?」

ミーネはウラシュ島だ。距離的に近いので被害状況も変わらんか。

「島では高波程度だったがネーヴェ様の結界で防ぎ切れた。魔力を見ていたが、良いブレスだと思ったぞ」

リームとネーヴェが島を見ていてくれたようだ。爆心地から一番近いとは言えネーヴェの結界を破れる気はしない。

「雄よりつよい」

俺も雄なのよね。そこらの龍より強いブレスって事なのだろう。少し自信持てた。

「皆ありがとうな。自然の力には敵わないけど、取り敢えず海に撃つのは止めた方が良いかな?」

「海に結界はる。もんだいない」

「それに主殿よ、ブレスは真下に放つモノだ」

「そうなの?」

龍同士の喧嘩にブレスなんて使わない。痛くないから。食べる獲物にも使わない。《収納》で充分だし。なので使うのは地面を這ってる細々したのを広範囲に殲滅する時に使うだけなのだとリームは言う。

「確かにな…」

目から鱗である。因みに龍同士の喧嘩は、ドーンッてしてガブーッてするのだとリュネが言う。それでチンチンパーンしてたら馬鹿にもされるわな。

 さて、明日からはネーヴェが結界で試射場を囲ってくれるとの事で攻撃についての目処は立った。筋力トレーニングはミーネとカラクレナイが指導してくれると言う。リュネとリームはやる事が無くて寂しそうにしていたが、二人にはだいぶ助けてもらってるのでそれで良いじゃないか。

昼飯を食ったその後は、夕飯迄の間ネーヴェが連れて来た各地の友達と兎女児達の玩具にされ、夕飯を食べると糞をひり出しアイツがでろ~んした。夜なので気付かれる事無く火山島に移動して来たつもりだったのだが…。

「カケルまたチンチン出てるの」

「さあ、筋力を鍛えるぞ」

「見に来た」

ミーネ母子とネーヴェに先回りされてたよ…。カラクレナイが腹ばいになった俺の背中に乗って、腕立てと脚立てをしろ、だと。腕立ては良いけど、脚立てだとでろ~んが地面をファックしてしまう。

「持ったげるの」

持つと言うより、尻尾に絡み付かれているのだが汚れるよりはマシか。《強化》を調整しながら体に負荷を掛け、朝には腕と脚が産まれたての小鹿のようになった。
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