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イキった馬鹿を煽る
しおりを挟むブフリムの群れが居なくなり、暗部を乗せたらイゼッタと運転を変わって再出発。王都の目と鼻の先だと言うのに物騒な森を抜けると、畑に囲まれた王都と城が見えて来た。前方からホルストに乗った兵隊とホルスト車が徒党を組んで走って来て無ければとても平和な街に見えるよ。
「イゼッタ、風吹かせてくれ」
「ん。私が走らせよか?」
「そうだな。少しだけ頼むわ」
スキル運転から魔法運転に変わり、少しするとホルストに乗った兵隊は目と鼻の先となる。
「そこの荷車、止まれ!止まれーっ!」
「止まれだとよ。速度落とせ」
「うぇ~い」
外にも聞こえるくらいの声を上げ、出入口から身を乗り出すと、ホルストに乗った兵士が抜剣して待っていた。
「物騒だな。何の用だ?」
「貴様何処から来た!?」
「質問に質問を返すな三下」
「カケル様、あまり煽るのは如何なものかと」
お前の言う事も尤もだな。少し優しくしてやるか。
「初見の冒険者に喧嘩を売ると痛い目に遭うぞ?死にたがりなら止めはせんがな。俺達はエディアルタから来た。お前等は何者だ!」
「田舎冒険者が舐めた口を…」
「敵対する者には容赦はするなって、田舎じゃ常識なんだがな。王都の腰抜けは口ばかり達者なようだ。手に持つ得物は飾りか何かか?」
「カケル様…」
手荷物をプルプルさせて顔真っ赤。イキった馬鹿を煽るのは楽しくてしょうがないぜ。
「待て。私が話をする」
後からノコノコとホルストに乗ってやって来た全身鎧の人物は、声からして女だと思う。プルプルしてた馬鹿はごねながらその場に待機し、後続の隊と合流するようだ。
「部下が不快にさせたな。だが、此方も役務だ。その荷車はどうやって動かしているのだ?」
「風魔法で押してるんだ。ホルストの世話しなくて良いし、駐車場代も値切れるスグレモンだよ」
「成程な。お前達はこの街道を通って来たな?途中でブフリムの群れと出会しただろう?」
「あの程度なら敵にもならなかったが、それがどうした?」
「そうか、群れは移動していたようだな。エリート種とマスター種のブフリムが発生したそうでな。隊を率いて討伐に向かう所なのだ」
「ならば俺達を誰何してる暇は無い筈だろ?こっちは腹減ってイライラしてんだ」
タイミング良く腹が鳴る。見栄張って殆どバジャイ達に食わせたからなぁ。全身鎧の女はクスリと笑って進行を再開した。プルプルしてた馬鹿は此方を睨め付けながらも納剣し、ホルストに運ばれて行った。
隊列からは牽引しない荷車を物凄く見られたが、イゼッタが魔法の風で押して進むと驚きと関心の声が上がった。魔力が持つなら好きなだけ真似ると良い。
「カケル様がギルドと仲が悪い理由が分かった気がします」
「シャリーよ。それは違うぞ?ギルドがケンカを振って来るんだ。どの街もそうだが、余所者には厳しいのさ」
「それは、まあ…」
兵隊共と擦れ違い、暫くして運転を変わる。イゼッタも空腹で切なくなっているのだ。早く飯にしないといけない。王都タイメワノールの門前でも荷車について一悶着あったが、シャリーのギルド証を見せたら渋々通してくれたよ。流石商業ギルド。
「カケル様、我々は此処で」
ギルドに寄る前に先ずは宿を探して飯にしよう。そんな話をして大通りを進んでいると、お前と貴様が此処で途中下車をすると言う。
「そうか。気を付けろよ?」
「カケル様も女の色香に惑わされませんよう…」
「だね」
「これでも悪い女には捕まった事無いんだぜ?」
「捕まってばかりです」「離さないでくださいね」
「「それでは」」
気配を消して荷車を降りると雑踏の中に溶けて行った。
二人を降ろして暫く進み、バジャイの鼻が反応した店に入る事にして側道に入って荷車を《収納》する。宿では無く食事処だったが、美味いなら問題無い。序に宿の場所も聞いておくかな。
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