上 下
754 / 1,519

お土産に丁度良い

しおりを挟む


 商業都市とは聞こえが良いが、要はくれてやる貴族が居らず王直轄地になっただけの事。悪さしなけりゃ好きにやれ。その代わり税は踏んだくるって事だろうよ。

「さて、此処の用事も終わったしタイワメノールに行くか」

「カケル、タイメワノール」

タイメワノール、タイメワノール…。千葉滋賀佐賀みたいな短い名前の街は無いのか?

「何だ、王都まで行商か?」

「ちょっとケンカしにな」

「そりゃあ穏やかじゃねぇな。イゼッタ嬢の事は終わったんだろ?」

「ん。私じゃない」

「悪りぃこた言わねぇ。程々にな」

「大丈夫、女を泣かせる野郎をぶちのめすだけだ」

「俺んトコには迷惑掛けねぇでくれよな。な?」


 金を引き出しギルドを出たら、再び街の外へ出る。荷車に乗って森へと進み、空に上がった。

「タイ…メワノールに直行するぞ」

「いよいよ私達の仕事ですね」

「調べ方は任せる。上手い指示出せないしな」

「「御意」」

「ぎょい~?」

借りて来た猫状態だったバジャイを撫で回し、UFOに乗り換えて一路タイメワノールへ。

「帰りに寄りたい所とか、あるか?それと暗部にはこれを渡しておこう」

イゼッタは特に無いと言うが、幼馴染とかに会わなくて良いのかと聞くと会えるなら…って感じで頷いた。
シャリーは王都で買い物したいそうだ。おいそれと旅行が出来無いシルケでは、話に聞く王都は憧れの都なのだと言う。
バジャイはお腹空いたって。干し肉お食べ。
で、暗部の二人にはさっき引き出した金を渡す。ノースバー大陸とはデザインが違うからな。硬貨を持ってまじまじ見てるよ。外国のコインってお土産に丁度良いよな。

「私達も先ずは買い物ですね」「土地の服を着て紛れ込みます」

「成程な。俺のこの服だと派手過ぎるかな?」

「見る人が見ればとんでもない物であるとバレますね」

「バジャイさんの服もですが、冒険者であるならギリギリ何とか」

「俺も冒険者なんだがなぁ…」

「カケル、私も装備欲しい」

「今回は戦わんぞ?キレイなおべべにしなされ」

「ダンジョン行きたい」

「だいぶ鈍ってるよな。それならエージャを連れてった所にしよう。本当は勇者の件が終わってからにしたかったが…」

「なるほど。なら今回は良い。服だけ買う」

産後太りの解消…とか考えてるのかな?ミーネに鍛えてもらえば十日せずにガリガリになるぞ?


 腹時計が昼を指し、干し肉と少しの甘味しか持って来なかった俺達は、お湯とそれ等で飢えを凌いでタイメワノールの近く迄やって来た。流石に王都の上空に留まるのは見付かりそうだからな。
街道に降りて静かに進む。偶然なのか、何時もの事かは分からんが、ブフリムの群れに囲まれてしまった。《感知》で数えて五十匹を超えている。他にもちょっと大きい奴が十匹程と、人よりデカいのが三匹。結構居るなぁ。

「毛の無いケブですね」

「カケル様、殺りますか?」

「そうだな。イゼッタは荷車の運転、シャリーはイゼッタを守れ。バジャイは入って来る奴だけ相手しろ」

「わかった」「お守りします」「うー…」

荷車の運転をイゼッタと代わり、後部の開口部に寄って来るブフリムをざっと十匹程《収納》してスペースを確保すると、俺と暗部が外に出る。暗部の二人は出入口の左右に陣取り、ナイフでチャクチャク斬って行く。この程度の有象無象でどうにかなってたら暗部なんてやってられんわな。
俺は荷車の上でふわりと浮いて、前と左右を相手する。少年隊につまんねーと言われるだろうが雑魚なんて脳味噌《散開》して終わりだ。暗部が殺った奴と一緒に全て《収納》する。
ちょっと大きいのは多少動きが良かったが、座標は自動追尾なので関係無し。力なく倒れてその場から消えるだけだ。

「カケル様の戦い、初めて見ました」

「敵にならないで下さい。敵になるなら寝返りますので教えてください」

「戦って無いけどな」

こんなの唯の虐殺だ。殲滅速度のあまりの速さにデカいの三匹狼狽えてるよ。そっと脳味噌粉にする。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話

妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』 『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』 『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』  大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

旦那様、どうやら御子がお出来になられたようですのね ~アラフォー妻はヤンデレ夫から逃げられない⁉

Hinaki
ファンタジー
「初めまして、私あなたの旦那様の子供を身籠りました」  華奢で可憐な若い女性が共もつけずに一人で訪れた。  彼女の名はサブリーナ。  エアルドレッド帝国四公の一角でもある由緒正しいプレイステッド公爵夫人ヴィヴィアンは余りの事に瞠目してしまうのと同時に彼女の心の奥底で何時かは……と覚悟をしていたのだ。  そうヴィヴィアンの愛する夫は艶やかな漆黒の髪に皇族だけが持つ緋色の瞳をした帝国内でも上位に入るイケメンである。  然もである。  公爵は28歳で青年と大人の色香を併せ持つ何とも微妙なお年頃。    一方妻のヴィヴィアンは取り立てて美人でもなく寧ろ家庭的でぽっちゃりさんな12歳年上の姉さん女房。  趣味は社交ではなく高位貴族にはあるまじき的なお料理だったりする。  そして十人が十人共に声を大にして言うだろう。 「まだまだ若き公爵に相応しいのは結婚をして早五年ともなるのに子も授からぬ年増な妻よりも、若くて可憐で華奢な、何より公爵の子を身籠っているサブリーナこそが相応しい」と。  ある夜遅くに帰ってきた夫の――――と言うよりも最近の夫婦だからこそわかる彼を纏う空気の変化と首筋にある赤の刻印に気づいた妻は、暫くして決意の上行動を起こすのだった。  拗らせ妻と+ヤンデレストーカー気質の夫とのあるお話です。    

魔境に捨てられたけどめげずに生きていきます

ツバキ
ファンタジー
貴族の子供として産まれた主人公、五歳の時の魔力属性検査で魔力属性が無属性だと判明したそれを知った父親は主人公を魔境へ捨ててしまう どんどん更新していきます。 ちょっと、恨み描写などがあるので、R15にしました。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

処理中です...