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ポスポス
しおりを挟むシルケには基本娯楽は無い。平民の娯楽は酒、ギャンブル、セックス。貴族に於いては社交会、狩り、買い物、ギャンブル、セックス。平民、貴族の双方が言うので間違い無いだろう。
そんな娯楽不足の我が島に現れた唯一の娯楽、それが紙風船である。赤ちゃんルームでポスポス始めたのを切っ掛けに、暇があると一人で、若しくは複数でポスポスしたいと強請られて、増産したら俺以外の人種が各自一球持つ事になってしまった。それが各地から帰宅した球好きの目に留まり、強請られて献上。それをネーヴェがバルタリンドとジョンの街とウラシュ島に持ち込んで、地元住民がそれを真似て作り出し、その三都市でポスポスブームが巻き起こってしまった。
まあ、街で作られてるのは獣皮紙製なのでポスポスと言うよりバスバスなのだが、近くお高い紙でも作られると言う。
「マージン取っとけば儲かっただろうなぁ」
「ん。けどテッチーもティータも喜んでた」
「喜んでくれたら何よりだよ」
「兄貴い」「あーにきー」「あーにーきー」
ポスポスブームの影響で、一度も里帰りしなかった少年隊まで帰って来る始末だ。
「ポスポスくれよ~」「ポスポス高ぇよ~」「ポスポスポスポス~」
獣皮紙は紙より安いが安くは無い。けど此奴等なら買える値段だ。が、地元の製作者が上前跳ねてるみたいで原価の十倍程になっているのだ。それでも買えるだろって思うが、無駄遣いするとブチ姉妹に怒られるらしい。
「なあリュネや」「あ、シカトした」
「何ですか?」「リュネ様言ってやってくれよー」
「トカゲでも何でも良いんだが、皮余ってない?」
「皮ですか…。ではこれで」
リュネが出したのは青い皮。デッドサーチャーか。意外とスベスベしてやがる。貰った皮を切り、貼り、くっ付け、中に《集結》させた空気を詰め込んだ。
「ほれ」
「皮じゃん!」「ふわっとしねーよ!」「ポスポス言わな~い」
「お前等じゃ直ぐ壊しちまうからな。見てろ」
バスッバスッバスバスバス!
手から床面へと押し出された球が、勢いそのまま跳ね返るのを皆が注目し始める。音デカいからだな。因みに居るのは新居の居間だ。建屋の二階でやるもんじゃない。
「なんかすげ~」「獣皮紙のより良いかも」「バスバス~」
そして穴の空いた桶状の枠を作り出し、壁の途中に取り付けた。
「左手は…何だっけ」
スッと投げた球が放物線を描いて枠の中に…入らない。ガツッと当たって落っこちた。俺、野球部だもん。
「桶に入ったら得点が入る…ってな」
「けど底抜けてるぜ?」
「入ったら取り出すのが面倒だろ」
「「「なる~」」」
少年隊は皮のボールをせしめると、赤ちゃん達を撫で散らかすと言って帰って行った。
「これもまた、マージン取れないんだろうなぁ」
「そうなるだろうな。所で主様よ」
球好きが、上目遣いで覗き込んで来る。一人に渡すと後四つ必要なんだが。ああ、リュネも物欲し気に見てる。材料貰っちゃったから作らないと怖い。
切り貼りくっ付け空気を込めて、先ずは二人に献上した。それから、小島の国から帰宅したミーネとネーヴェに進呈する。カラクレナイは皆と遊ぶのに紙風船使ってるから要らないって。マジ天使。
シンプルなAラインの衣を纏う、めちゃマジ天使のカラクレナイは、服のお披露目でも一悶着あった。
予想通り、リュネの着せ替え人形になってしまったのだ。夕方になっても降りて来なかったのでリュネの部屋に向かうと、カラクレナイに泣き付かれた。その時俺から溢れ出した魔力はリュネやミーネも冷や汗をかいたと言う。取り敢えず赤ちゃん達に被害が出なくて良かったが、ミーネが怒ってリュネが泣いた。罰として暫く接近を禁じたからだ。それから今日まで、紙風船や弟の殻をくっ付けたの等、丸い物を抱いて過ごしている。
「何だかミズトカゲの卵みたいですね」
テシッと叩く手付きは優しい物だった。
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