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アルアイア・メルユーチヒ・シュワイトリンゲン

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「なっ!?」

目の前が暗くなったと思ったら薄ら明るい空間に居た。

『ご飯!ご飯じゃない!ご飯!』

『俺はご飯じゃないねぇ…』

「強い魔力を感じてみれば、やはりお前か」

人語が聞こえて振り向くと、巨大な青い龍だった。するとこのはあの時の男の子か。

「カケルだ。俺を餌にするのか?」

「…そんな事をしたら我等に明日は無いだろうよ。魔力を制御も出来ぬ程、お前は焦っているのだな」

「ああ。かなりな。知り合いが連れ去られた。しっかり考えて行動すれば良かったが、後悔してる時間も無いんだ」

「成程の。我はお前に礼をしたいと思っているのだ。力を貸してやっても良い」

「願っても無い…、けど良いのか?この子が放ったらかしになるぞ?」

「人を捜す等訳無い事よ。直ぐに終わる」

「では、頼む。アルアを見付け出して欲しい」

深く頭を下げる俺に青い龍の鼻面が伸びる。あ、何か覗かれてる気がする。抵抗は無意味だな…。

「お前は異世界の者だったか」

「神二人を処分させた男だぜ」

「神殺し…良い響きよ」

「一応秘密にしといてくれ、人の子には刺激が強過ぎる」

「そうよの。では探すとするか……」

青い龍が目を閉じて、構ってちゃんがぺろぺろしだす。数ピルもしない内に、目の前に何かが現れた。

「ひっ!ここは!?」

「アルア!」

「ひゃっ!カケ…ドラゴン!?」

俺をペロってる龍を見て腰を抜かすアルアだが、何とか手を翳して魔法を打つ素振りを見せた。

「落ち着け。恩人の息子だぞ?」

「恩人…?」

「それを言うならば恩龍であろうよ」

振り返ったアルアは気絶した。雑木マット出すか…。

 子龍にトカゲの魔石を与えてペロらせてる隙にアルアを介抱し、漸く落ち着いてもらえた。

「まさか、物語のドラゴンを見られるなんて…」

冬を連れて来るドラゴンの話は身分を問わず聞かされる寝物語の一つだそうで、話し手により色々脚色されると言う。アルアの家では絶対の力と繁栄を齎されるのだとか。まあ、間違いでは無いな。

「ドラゴン様、お助けくださり感謝の言葉もございません。このアルアイア・メルユーチヒ・シュワイトリンゲン、一生の感謝をささげます」

「要らぬよ。これはそこの者への礼をしたまでの事。礼に礼を返されてもお前では返す事も出来まい」

「そんな…」

「あう…あ…」

平伏するアルアに辿々しく人語を使う子龍が鼻っ面を伸ばす。触れるか触れないか、鼻息の掛かる距離にアルアは動けない。

『食べちゃダメだよ?』

『食べないよ!親、アルア、良い子?』

『さあな。この者が仲間と言うならば、良い子なのだろう』

『良い子、食べない』

悪い子も食べないで欲しいが、取り敢えず餌認定はされなかったようだ。

「この子のお友達になるか?」

「人の子と、龍がか?…お前のように幾つもの龍を従えるようにするつもりか?」

「俺とリュネ達は家族だ。俺なんて直ぐに死んじまうけど、それまでは家族だし愛してる」

「カケルさぁ~~んっ!!」

リュネが来た。飛び込まれ、抱き締められて顔が幸せでパフパフ。

「グリュ…お前、見ていたな?」

「愛するカケルさんが年増の魔の手に堕ちないか見張っていただけですっ!」

「リュネ、あまり悪く言うな。俺の恩人なんだぞ?」

「カケルさん、この龍は私達の母です。だから年増で合ってるんですーっ」

「なん…だと…?」

知り合いとは聞いていたが母親かよ…。期せずして家族と顔合わせしてしまったのか。

「娘を生き長らえさせた礼もしなくてはならんな。それに、ミネストパーレに龍殺しの汚名を付けなくて済んだ…。礼を尽くしても尽くしきれん」

「礼はリュネ達から貰ってるから気にしなくて構わないよ」

「どうやら、そのようだの…」

頭ん中見られてるし、理解も早いか。

「だがこの礼は必ずする。龍の約束だ」

「母さん!」

リュネが大きくなって怪獣大戦争に発展してしまう前に帰ろう。子龍とアルアは何となくだが仲良くなった気がする。二人して蚊帳の外だったからかな?

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