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晒し首

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「なあカケルよう、またダンジョン行こうぜよーう」

俺が顔真っ赤にしたサブマスから金を受け取っていると、構って欲しそうなジョンが声を掛ける。

「良いのか?」

勿論ジョンでは無く目の前に居るサブマスに聞く。

「え、らめっ」

「ダメだそうだぞ」「っざけんなよ」「あ!ダメじゃないです」「どっちなんだよ」

とんだコントである。
ジョンの希望は叶えられるようだが、仕事の調整が終わってからになるそうだ。大体十日程掛かるのをゴネにゴネて七日に負けさせていた。暖かくなって個人からの依頼が増えて来るこの季節は色々忙しいのだとさ。寒い時期は勝手に凍死するケブ見たいな小物が、暖かくなって悪さしだすとか何とか。

 小銭を貰って俺用出入口から外に出る。時間はまだ昼前で特にする事も無し。作り置きした飯を消費したいのでヤリ部屋でまったりする事にした。

「おかえりなさいませ、カケル様」

ヤリ部屋の玄関先で待ち構えていたのは貴様だ。

「何かあったか?」

「昨夜遅く、かの方が襲われました」

此処で話す内容では無いが急いだ方が良いだろうな。

「被害は?」

「護衛の全滅、メイドとかの方は連れ去られました。冒険者は逃亡」

「…飛んで行く。案内しろ」

「御意に」

「それと、冒険者は晒し首な」

「御意」

ノーズコーンを取り出して先に乗り、背中を抱くように貴様を乗せたら直ぐに発射する。

「お前はどうした?」

「怪我をして離脱しております」

「強かったのか」

「騎龍が出たそうです」

「野盗の振りも出来ないくらい焦ってる?」

「アルア様が殊の外お強かったそうで」

「あの兄妹天才だからなぁ」

「カケル様、そろそろです」

話を聞きながらアルア一行が襲われたと言う場所の上空に到着。街道には、血と、壊れた鎧に荷車が散乱しており、野獣等に襲われた風を装ってあった。夜の内に少なからず食われてはいるだろうがな。
 《感知》で見ると、荷車が移動したであろう轍と、騎龍の飛び立った跡が確認出来た。

「アルアは騎龍で連れてかれたか」

「轍で移動した痕跡は罠ですか?」

「メイド達だな。俺は、見捨てねばならん」

「問題ありません。主を生かしてこその従者ですから」

「アルアが傷付く。出来れば避けたい」

ゾーイ車の移動距離等高が知れている。轍の上を移動しながら《感知》範囲を伸ばして進むと林の中にゾーイと車輪を潰された客車が目に入る。生命反応はあるが、急いだ方が良さそうだ。

「カケルだ!生きてるか!?」

見覚えのある客車に声を掛けると、中の反応がモゾりと動いた。恐怖に絶望、悔恨の感情を垂れ流し、ドアを開けたのは知った顔のメイド長であった。

「カ…、カケル様…。お嬢様…お嬢様がっ」

「暗部から話は聞いている。先ずは体を暖めろ」

林の木を数本《収納》し、以前旧王都の森で作った家を出してやる。捨てなくて良かったぜ。メイド達を中に入れ、光と水の棒、火の鉄板、雑木マット。そして作り置きの飯を出す。

「後は自分達で出来るな?」

「それよりも早く!お嬢様をっ」

「当たり前だ。アルアは何処に向かった?」

「は、はい。街道から逸れて北に向かいました。ですが、其方の方角には街等はありません」

迂回したか。それとも隠れ家でも作ってあるのか。アルアを死なせるだけなら掘っ建て小屋でも良い訳だが、それなら連れ去る意味すら無い。

「行って来る。貴様は此処で護衛してくれ」

「御意に」

外に出て空に上がる。《感知》を伸ばして生命反応を拾ってく。人以外の反応しか無い。
焦るな!落ち着け…。
移動しながら《感知》を重ね掛けして多方向を探し、移動し、探す。

「クソっ!海を越えられたら益々捜し難くなっちまう」

視界の先に海が見えて、独り言を吐き捨てる。貴様に報告を受けた時から俺は焦って居たようだ。部屋に入って聞いていれば時間を掛けて考えられただろう。島に居るだろうリュネに助力を乞うても良かったかも知れん。否、多分それが正解だろう。
メラメラと魔力が溢れ、俺の視界は真っ暗になった。


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