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後が怖い

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 ネーヴェ達の後ろから巣の主であるリュネもやって来た。

「カケル、おかえり」「カケルさぁん、私もチュッチュしたいです~」

「只今。テッチー達は部屋に戻るのか?」

「ん。あっちで寝る」

「明日には家に帰る予定です」

「カケル様ぁ、また遊びに来ても良い?」

「鍵が掛かってなければ良いぞ。唯、ネーヴェやシャリーが居るかは分からんがな」

「やった!」「ありがとうございます」

ネーヴェ達が転移門を潜り、下に降りようとした所で背中に柔らかい物が押し付けられた。リュネのたわわである。

「行っちゃ嫌です~」

「トイレ行かせて。かなりマジで」

「戻って来ないと齧りますからね?」

「後、風呂入って来るから寝て待っててくれ」

尻を揉み揉み、柔らかさを堪能して解放された俺はトイレで脱糞して風呂で身を清めた。湯上りの冷やし豆乳が美味い。きな粉も黒蜜も要らん。ストレートが良い。

「カケル!カケルさまっ!」

平和な食堂に慌ただしい声が響く。一人でこっちには来ないバジャイが俺の前に駆け込んで来たのだ。周りに居た女達も焦るバジャイを見て不安そうな顔になっているよ。

「どうしたバジャイ、何があった?」

「敵!デカい男が、呼んでこいだって!」

デカい男…、ボーデンフェルトか。直様鎧を身に纏い、とにかく急いで龍の巣へ。齧られたら痛いからな。

「リュネ!」

「カケルさん、分かってます。齧るのは他のにしましょうね」

龍の巣に入るとリュネがオーラを纏ってベッドに座ってた。これはヤバい。

「背中に乗せてくれないか?」

「カケルさぁ~ん」

オーラ引っ込んだ。普通の人の子はこれを浴びると倒れちゃうからな。抑えてもらってウラシュ島へと向かった。


 家から出ると、ボーデンフェルトが玄関前で待って居た。リュネを見て鎧の上から冷や汗をかいている。

「リュネ、ボーデンフェルトは悪くない。分かるな?」

「はい…。悪いのは敵、ですね…。雄龍、状況を教えなさい」

「魔剣持ちの軍隊に街の入口迄を占領された。被害は強制労働者の男が三十七人に、兵士の二人が死亡。怪我人は無し。現在野菜と水を略奪されている」

「死人が多いな。ボーデンフェルト、お前は何してた?」

「勿論戦った。魔剣に負けておめおめと逃げ帰って来たがな」

龍の回復力のおかげで傷は消えたそうだが、血が足りなくて力が出せないと言う。龍の姿で蹴散らせば、とは思うが、元の姿を晒す訳には行かないのだろうな、子供が怯えてしまうだろうし。

「龍に戻って蹴散らしなさい。雄程度でもそれくらいは出来るでしょう」

「街を、壊したくなかったのだ。カケル殿達が皆の為に作ってくれた、この街の宝だからな…」

「そんなモンいくらでも直してやるわい。命の方が大切だろうが」

俯き加減の大男に激を飛ばし、リュネを連れて空に上がる。

「ちょっと高く上がるぞ?」

「どうされます?」

「盗んだ物は返して貰わねばな。それに、失った労働力もな」

「《洗脳》ですね?」

「我慢させてごめんよ?」

「後で、たぁ~っぷり、発散させてくださいねっ」

後が怖いぜ…。

 上空五千ハーン。龍になったリュネであっても星の一つ程度にしか見えない高さだ。リュネドラの頭に乗って、《感知》で見渡す…。

「カケルさん、見付けました」

早いなぁ。俺の出る幕が無い。略奪した荷物を乗せた荷車が列を成して一つ所に向かってる。大きく迂回して東に移動しているようだ。

「船ですね」

船と言うヒントを得て探して行くと、街の東の岸近く、十隻の船が海上に集まっているのを確認出来た。しっかりとした作りで破損等が無い。軍艦なのか?

「他には無いか?」

「壁の上から迫って来てますね。闇に乗じて侵入するつもりでしょう」

「食ったらヤるってか。分からなくもないが面白くないな」

「そろそろ始めますね」

許可を求めていないセリフを吐いて、人が、荷車が、そして船が消えた。

「…お疲れ様」

「まだですよ?」

そうだな。まだ、残ってる。
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