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工場

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 エントランスは街の女達が屯して、湯上りの会話を楽しんでいる。街の浴場も良いがこっちも良いのだと。

「カケルさまぁ!」

謎の感知能力で外から走って来るのはバジャイ。右にリームがくっ付いてるので素早く右に回り込み、左脇腹にしがみ付いた。

「んが、おんなのにおい」

「テイカだ。会った事あるだろ」

「テイ、カ…。くんくん…」

クンカーになってるバジャイを抱え、外へ、街まで飛んで行く。野菜の加工場の前ではミーネが主婦等に囲まれて、包丁を拵えてた。

「ミーネ、悪いな。仕事をさせてしまって」

「気にするな。旦那様、それよりだ。このままだと女達の作った品が溢れてしまうぞ?」

作り過ぎた干し野菜は古い順から消費しているが、それでも貯まってしまうのでリームの指示で焼き塩の箱に保管していたそうだ。ネーヴェの作った箱なのでどれだけ入るかは謎だが、とにかく一杯入ってると主婦達は言う。

「売り先が一つ決まったからやっと給金を出せるぞ。とは言えこの街じゃ使えないだろうから各々の欲しい物を他所で買って物納する形になりそうだが」

「カケル様、なら私がみんなの欲しい物を纏めて回るよ」

調整役のマルシアだ。とてもありがたい。雑木紙とペン…は無いから炭を練った棒を与えて事務仕事をお願いした。

「そうだ、誰か秤を持ってないか?あったら貸して欲しいのだが」

「天秤ならウチにあるよ。天秤棒が折れなきゃ十ナリは計れるよ」

地元の主婦が名乗りを上げた。元は魚を売っていたようで、道具を大事に取ってあったそうな。まあ、此処で計っても再度彼処で計り直す事になるのだがな。一ナリと言っても大陸が違えば重さも違うかも知れん。現地の秤を用意する必要もありそうだ。

 昼食の時間は過ぎていたが、見かねた女達が焼肉とスープを作ってくれる事となった。その間に焼き塩と干し野菜を回収する。一ハーン四方の箱に焼き塩を流し込む。水なら一トンだが、塩もそのくらいだろ。
箱に敷き詰め蓋をして十二箱。十三箱目の三割程で尽きたので、保管箱に戻しておいた。
 同じ大きさの箱に、今度は干し野菜を流し込む。みっちり詰め込んでも軽いな。三十箱にもなってしまった。

「とんでもない量、作ってたんだね…」

塩作りの女達が箱の量に溜息を漏らす。

「見た目は多いが軽いから、売り出したら直ぐに無くなるさ。後は煎り豆と黒糖か」

「マメ?種だろう?」

「種って聞くと食べるのに躊躇すると思って、マメって呼ぶ事にしたんだ」

「それで煎りマメねぇ」

「主様、黒糖の手持ちはあるが煎り豆はまだ作っておらん」

「だな。まだ何方も工場を作って無いしな。今回は手持ち分を持ってく事にして、先ずは工場を建ててしまおう」

四十二個の箱を《収納》してその場を離れた。

「さーて、何処に作ったら良いか…」

何方も火を扱うから製塩工場の近くが良いと思うのだが、干し野菜の加工場の並びに建てる事にした。干し場が埋まってしまうと暇になってしまうからだ。
建屋は加工場等と同じ要領で簡単に作る。種を洗浄した廃水を干し野菜の加工場の排水管に繋げ、海側に洗い場を作成。浸水する場所、濡れた種を水切りする場所を設けて、陸側の端に焼き場を作った。
次に鍋やザルに木篦、洗い桶に浸水桶、水切り用の棚を作って行く。

「ネーヴェ殿の箱は使わんのか?」

「あれは人の子にして見りゃ反則だからな。保管だけにしておきたい」

「ふむ、そうか」

「龍が育ててる時点で反則だがな」

水場と竈に水の棒やら火の鉄板を仕込んだら一先ず煎り豆工場は完成だ。

「黒糖は治具を作るのが億劫だなー」

「主様のように《散開》したりは出来ぬからな」

「取り敢えず昼飯を頂くよ」

女達が飯が出来たと呼びに来たので食べに行く。

「バジャイも食べるか?」

「食べる!」

肉を頬張る可愛い獣を眺めながら、治具の構想を巡らせた。



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