612 / 1,519
モコモコ
しおりを挟むギルドに両替に行こうかと迷ったが、多分ギルド証でも買えるだろうって事で店に入る。ダメならシャリーを置いて両替して来ても良いんだしな。
「いらっしゃいませー」
随分可愛らしい感じのおばちゃんが出て来たな。
「以前ラビアンの三人の服を見繕ってもらったろ?あれは俺の仲間でな。今日はこの子の為に温かい服を見繕ってやって欲しい」
「ああ、あの可愛らしい子等かい。ギルドの娘共にくちゃくちゃにされてたからよぉく覚えてますよー。先ずはこっちに来て温まりなさいな、スカートの下は下着だけかい?」
店の中央に置かれた薪ストーブがなんともノスタルジックな雰囲気を醸し出している。真っ直ぐ伸びた煙突は天井で曲がり外に出てはいるが、売り物に炎の匂いが染み付いたら噎せてしまわないか?
「其方のお嬢さんは、そんな薄着でよく我慢出来ますねぇ」
「うふ、種族特性です」
お嬢さんと言われて嬉しいみたいだ。店主はリュネが無理してない事を悟ると店内を徘徊してシャリーの防寒着を掻き集めていった。
モコモコしたブーツにモコモコした靴下、そしてふわふわのタイツに毛糸のパンツ。更にモコっとしたズボンが下半身装備。上半身はふわふわの長袖シャツに厚手のコート。そしてモコモコした手袋。毛編みのマフラーはふわっと真知子巻きにされた。
「ラビアンの子達から温かい所から来たって聞きましたからねー。女の子ですし、このくらい着込んでも良いでしょうね」
「ギルド証で払えるかい?」
「勿論ですよー」
問題無く払えるようで良かった。ギルド証で支払って、シャリーが着替え終わるのを待つ間に店主と野菜や塩の話をした。やはり値上げが続くのは痛いらしい。煎り豆をお裾分けしてポリポリサクサクしながら温まった。
「お待たせしてしまい申し訳ありません」
「お帰り。可愛らしくなったな」
全体的にモコっとしたシャリーは手足がピッタリ閉じられなくて仁王立ちぬいぐるみみたいだ。お礼を告げて店を後にした。
買い食いはしにくいが、ネーヴェに上げる小遣い銭が欲しいのでギルドに寄って行く。やはりギルド証では開かないのでノックして開けてもらった。
「寒いので早く閉めてくださ……ペニスケース…?まさか?」
「とにかく入れてくれ。ドアを閉められん」
「はっ、はい!」
ドアを開けてくれた職員は逃げ出して階段を駆け上がって行った。そして…。
「カケルくーん!」
ジョンである。
「ジョ~ンくぅ~ん」
「久しぶりだな!其方の二人は奥方か?」
「きゃ、奥方ですって。うふふふふ」
「リュネ様だ。わかるな?」
「様…、マジかよ…。ネーヴェ様も来てるのか?」
「まあな。こっちのモコモコしたのはシャリーだ」
「どうも、シャリーと申します」「リュネですっ」
リュネはご機嫌なので更地が広くなる事は無いだろう。今の所はな。
事務処理や金の引き出しなんてカウンターでも出来るのだが、問題が起こると更地になるのでジョンの部屋で処理される事となった。
「そんな程度でギルマスの部屋に通されるなんて…」
ソファーに掛けてお茶が出た。シャリーは恐縮しているが、俺一人だと絶対お茶なんて出ないぞ。
「街の外の更地を見たろ?これ以上広げられると狩りが泊まり掛けになっちまうんだ」
「まだ土地使って無いのか」
「商業ギルドが地上げしてんだよ。名目上はアルアの屋敷を作るってんだから文句も言えねぇ。まあ、後一月も経てば畑が使えるようになる筈だがな。で、カケルは何しに?ダンジョン行くか?」
「今日は商売だ。乾燥野菜や塩を売りにな」
「また商業ギルドと揉めそうな物を…」
「値上げ、辛いみたいだぞ?今回は先に家政婦組合に話をするし、元商業ギルドの職員も連れて来たから出血も脱糞もしなくて済むかもな」
「お手柔らかにな。俺は食うだけだから何も出来ねぇ」
事務処理と金の引き出しを終えてギルドを出る。次に向かうはヤリ部屋だ。
0
お気に入りに追加
135
あなたにおすすめの小説
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
性的に襲われそうだったので、男であることを隠していたのに、女性の本能か男であることがバレたんですが。
狼狼3
ファンタジー
男女比1:1000という男が極端に少ない魔物や魔法のある異世界に、彼は転生してしまう。
街中を歩くのは女性、女性、女性、女性。街中を歩く男は滅多に居ない。森へ冒険に行こうとしても、襲われるのは魔物ではなく女性。女性は男が居ないか、いつも目を光らせている。
彼はそんな世界な為、男であることを隠して女として生きる。(フラグ)
転生した体のスペックがチート
モカ・ナト
ファンタジー
とある高校生が不注意でトラックに轢かれ死んでしまう。
目覚めたら自称神様がいてどうやら異世界に転生させてくれるらしい
このサイトでは10話まで投稿しています。
続きは小説投稿サイト「小説家になろう」で連載していますので、是非見に来てください!
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します
潮ノ海月@書籍発売中
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる!
トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。
領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。
アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。
だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう
完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。
果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!?
これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。
クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。
貞操逆転世界に無職20歳男で転生したので自由に生きます!
やまいし
ファンタジー
自分が書きたいことを詰めこみました。掲示板あり
目覚めると20歳無職だった主人公。
転生したのは男女の貞操観念が逆転&男女比が1:100の可笑しな世界だった。
”好きなことをしよう”と思ったは良いものの無一文。
これではまともな生活ができない。
――そうだ!えちえち自撮りでお金を稼ごう!
こうして彼の転生生活が幕を開けた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる