606 / 1,519
アヒャンヒャン
しおりを挟む煎り豆はほんのり甘いから女達の伸びる手が止まらない。
「んん。サクサク」
「旦那さま、これ、保存食としても良さそうですねっ!」
「腹に溜まるし、良いかもな」
女達の手が止まる。昼飯を腹一杯食った後だからな、気になるのだろう。
「確かに、種は腹持ちが良いと街の女達も言っていたな」
「あっちはソーサーが無いからな」
「私達…、ソーサーも食べてしまいました…」
「さんごぶとりしちゃいますー!」
まだ産前だろうに。残った煎り種は袋に入れて《収納》し、あっちでも食べさせてみようと思う。
「皆様、遅れました」
テイカが起きて来たので遅い昼食を摂らせ、俺とバジャイは居間に向かう。リュネとネーヴェ、リームも一緒に街に行くと言う。断る理由も無いので転移門を潜った。
ドアを抜けると真っ暗な部屋。多分龍の巣のどれかだろう。光の棒で照らしながら部屋を出て、外に出る。
「なわばり!何で!?」
「凄いよな。あっと言う間に家から街まで着いちゃった」
縄張りに帰って来て元気を取り戻したバジャイは自分の巣で寝るようだ。リームは農作業をすると言うのでリュネとネーヴェを連れて街へと向かう。
こっちも昼食を終えてまったり休んでる者が多い。
「あ、カケル様!帰って来たんだね」
俺達を見付けて主婦等が集まって来た。乾燥野菜は料理しても味に問題が無いだとか、焼き塩のおかげで薄味から解放されたとか。包丁の増産はよ、なんて話で時間を過ごし、午後から働く女達は仕事に向かって行った。
「モテモテですねー、カケルさぁん」
「生活基盤を作って安全を確保したからな」
「カケル殿、戻ったか。リュネ様も先程は…」
ボーデンフェルトは雌龍に様を付けるようになったのか。何れ龍王の国になるのだから今の内に下に付いとくって事かな。
「何かようですか?雄」
名前呼んでやれよ…。
「う、うむ。カケル殿に移動用の乗り物を頼んでいたのだが、進展を聞きに参っ…りました」
威圧すんなよ…。
「ネーヴェに動力部を作ってもらおうと思ったんだが、先日は他の用があったみたいでな。用が済み次第動力部は頼む予定だ」
「うむ。急ぎでは無いが頼んだ。人の子では門まで移動するだけで訓練みたいな物だからな。では、これで…」
尻尾を巻いて逃げ出すように、ボーデンフェルトは詰所方面に走って行った。そう言えば彼奴、尻尾無いけどアヒャンヒャンしながら仕舞ったのだろうか?雄の性感帯なんて知らないので何とも分からんが。
それにしても、ネーヴェは何処行った?女達に囲まれてる隙に行方を晦ましたようだが、また子供と遊んでるのだろうか。取り敢えず、動力部は後付けに出来るように車体を作ってしまおう。
リュネを伴い街の出入口へと向かう。ああ、子供とネーヴェが居た。球体関節人形を見せびらかして何やら遊んでるっぽい。あっちに行くと戻れなくなるので先に仕事だ仕事。
輸送用車両の幅は街道の半分以下にする。擦れ違いで事故等起こしては馬鹿みたいだからな。
六×三×二ハーンで雑木を箱組し、正面は上半分、後部は完全解放で切り取る。横面に幅六十ドンの板をくっ付け椅子とした。通路の天井にはつり革の代わりに丸棒を正面から後部に掛けて付けようとして、後部全部切ったのを後悔したが丸棒をL字にして問題解決。
車輪は下でなく横に付ける。車体の長さでコの字に組んだ板を土台とし、鉄のシャフトを通した車輪を三枚。シャフトの端には四角い鉄で輪止めをし、輪止めの収まる土台基部に上向きの空間を設け、バネを仕込んだ。所謂バネサスだ。丸い金属板をグルグル切った形にしたが、この世界の鍛冶屋に作れるだろうか?皿バネとどっちが良いか迷ったがきっとどっちも大丈夫だろう。車体に付けて完成とした。
フル装備の男を百ナリと見立て、百ナリの鉄塊を載せて行く。左右で十個、通路に六個。千六百ナリも乗ったら十二個あるバネもペタンコになるわな。十五人乗りとした。
0
お気に入りに追加
135
あなたにおすすめの小説
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
性的に襲われそうだったので、男であることを隠していたのに、女性の本能か男であることがバレたんですが。
狼狼3
ファンタジー
男女比1:1000という男が極端に少ない魔物や魔法のある異世界に、彼は転生してしまう。
街中を歩くのは女性、女性、女性、女性。街中を歩く男は滅多に居ない。森へ冒険に行こうとしても、襲われるのは魔物ではなく女性。女性は男が居ないか、いつも目を光らせている。
彼はそんな世界な為、男であることを隠して女として生きる。(フラグ)
転生した体のスペックがチート
モカ・ナト
ファンタジー
とある高校生が不注意でトラックに轢かれ死んでしまう。
目覚めたら自称神様がいてどうやら異世界に転生させてくれるらしい
このサイトでは10話まで投稿しています。
続きは小説投稿サイト「小説家になろう」で連載していますので、是非見に来てください!
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します
潮ノ海月@書籍発売中
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる!
トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。
領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。
アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。
だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう
完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。
果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!?
これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。
クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。
貞操逆転世界に無職20歳男で転生したので自由に生きます!
やまいし
ファンタジー
自分が書きたいことを詰めこみました。掲示板あり
目覚めると20歳無職だった主人公。
転生したのは男女の貞操観念が逆転&男女比が1:100の可笑しな世界だった。
”好きなことをしよう”と思ったは良いものの無一文。
これではまともな生活ができない。
――そうだ!えちえち自撮りでお金を稼ごう!
こうして彼の転生生活が幕を開けた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる