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人の子は何でも名前を付けたがる

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 光の棒と水の棒。先ずはこの二つを女達の内職にしてもらった。単純作業なので覚えるのも早く、人数も多いのでその日の晩と翌日の朝の片手間時間で百本ずつ組み終えてしまった。
残るトイレと火の鉄板は、一先ずトイレを優先。底の方だけ少しだけ柔らかくして、部屋の隅にズラーッと並べておいた。魔石を埋め込んだ物には蓋をして、後で俺が固めておく。火の鉄板は魔石が足りないので暫く放置する。
 で、今日は家の風呂を使いに街の女達がやって来るので、その前に橋を作ろうと思う。
島の端から対岸に向けて橋を架ける説明と工程をネーヴェとリームに説明すると、巨大な煉瓦の塊を対岸まで敷いてしまえ、なんてとんでもない事をおっしゃられる。潮の流れが変わって魚が獲れなくなったり砂が溜まったりする事を伝えて自然を守る必要性を説いた。
 説明を終えて先ずは実践。長辺二十ハーンの楕円形の柱を海底に二十ハーン程埋め込んで垂直に建てる。それを二十ハーン間隔で対岸に向けて建てて行く。柱が多いが安全第一だ。二人共に見た物を真似るのは得意なようで、ズポズポ柱を挿して行く。
対岸まで辿り着くと、待ち切れぬ女が数人、そわそわ此方を伺って居たが、もう少し待つのだ。
ネーヴェに橋桁を掛けてもらう。柱の上に長~~~い煉瓦を敷く作業だ。その間に桁と地上を繋ぐスロープを作る。これで女達が上がって来られる。リームにはスロープと、桁の左右に落下防止の壁を作ってもらった。この壁には高欄と言う名前があるんだが、

「人の子は何でも名前を付けたがるのだな」

とリームに言われてしまった。俺はと言うと、排水口作りだ。《収納》の枠を桁に当て、ほんの少しだけ傾斜を付けたら適当な間隔で穴を開けて行き、島まで到着。

「カケルさま!いたー!」

「居たぞー。歩いてあっちまで行けるようにしたぞ」

わーっと走って行って、途中で帰って来た。あの辺りまでが縄張りの範囲なのだろう。柱の下に向かい、テトラポッドを沈めてく。上からバジャイが覗き込んでるが、落ちたら魚に食われちまうぞ?

 橋が出来た事で女達がぞろぞろ歩いて来た。結構距離があるから湯上りにまた汗をかくかも知れないな。魔道車での送迎も考えなきゃならん。
ドバドバしてる俺を見て、ネーヴェとリームもテトラポッドを沈めるのを手伝ってくれた。大きさと形がバラバラだけど気にする程でも無い。
街までドバドバし終えたら、送迎車両を簡単に作る。長さは十ハーン、幅は六ハーンで楕円に近い箱を作り、ドアは前後に一つ、センターは通路に、その左右には二人座れる長椅子を並べた。

「動力、どうしよう…」

「魔石で動かすのだろう?」

「魔石をどのように動かす力に変えるかを悩んでるんだ。動きっ放しじゃ事故になるし、急発進急停止は怪我をしかねん」

「はじめゆっくり、はやくなって、ゆっくりとまる」

「で、反対側にも走ってくんだ」

「前作ったやつみたいにする?」

「小さい車輪の台車を作って此奴に乗せよう」

「ん。材料ちょーだい」

魔石と鉄と、煉瓦で良いかな?行き帰りで二セット分渡したよ。
魔力で包んでぐにゃぐにゃーっとして、面白い台車が出来た。片側の車輪は小さいが普通の車輪だ。だがもう片方の車輪は球形だ。縦回転は止めずに横回転で加減速するみたい。で、横回転が百八十度を超えると逆走するのか。中々考えたな。

「停まってる時間を設定出来るか?」

「とーぜん」

「では十リット待ってから出るようにしてくれ」

「うぇ~い」

車体に設定が終わった台車を乗せてくっ付ける。車高も引くて良い感じだ。走り出しの十ピル前に台車の前後にある魔石が光って走る合図を出すのだと。ハイテクだなー。
遅れて来た主婦を乗せて走らせてみる。シュルシュル言いながらゆっくり進んで行った。トップスピードは歩いてる人を拾う度に浮かせて止めてるから分からないが、そこまで早くない感じ。早いと怖がる人も居るだろうし、遅い程度で丁度良いかもな。
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