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雲丹
しおりを挟む一応バジャイには声を掛けておこうと思い、木の上の巣に行ってみるとぐっすりお休み中だったのでそっと出掛ける。
ノーズコーンに乗り込んで高高度に上がり、人の集落から遠い森を指示すると、東に進路を取った。方向的にはキネイアッセンか。
一直線に進んで行くと足元に街が見えた。馬鹿高い壁に黒い船が…ひーふー…十隻くらいはあるな。戦争用の船に違いない。あちゃー、街から何か飛んで来た。多分トカゲだと思うけど、どうせ追い付けっこ無いので無視して行こう。転移を含めずだが、この世界で一番速く移動出来るのは俺のコレだと自負してる。事実、一瞬で見えなくなったよ。
暫くして移動は止まった。だが下に降りてデッドサーチャーと鉢合わせたく無いので、その場に留まり《集結》で広範囲の木を引っこ抜いて《収納》した。殺しても魔石にしかならない上に、取り出すのも面倒臭い。下草や種等はそのままだし、そのうち立派な森に戻るだろう。場所を変えて三回程回収して街へ帰る。後を付けられても嫌なので、今度は少し迂回して帰ろうか。
島に帰って来たのは夕方。バジャイも起きてて飛び付いて来た。
「カケルーさま!どこ行ってたぁーっ!?」
「寝てたから起こしたくなかったんだよ。良い子にしてたか?」
「バジャイいーこ!はっ!ネべさまが、呼んでたぞ!」
ネべ…ネーヴェか。飯食う所に居ると言うのでしがみ付くバジャイを引き摺って向かうと、女達が食堂と厨房を行き来してた。どうやって戻って来たんだ?
「カケル、おかえり」
ネーヴェが飛び付くとバジャイはパッと逃げる。そんな間合いじゃ瞬殺だぞ?
「ただいま。雑木を採って来たんだ」
「ん、女の匂いしない。ゆるす」
許された。女達はUFOに乗せて浮かせて来たのだそうだ。
「主様、お帰りだな。今女達と夕飯を作っていた所だ」
「ただいま、リーム。後で属性魔石を作るから手伝ってくれ」
「心得た」
夕食の支度に向かう二人に付いて行き、配膳等を手伝う。
「カケル様、あそこは良い街だね…」
「そうなのか?」
女の一人が話し掛けて来た。帰宅希望者の一人だったか。余所者でも暖かく迎えてくれて、皆気さくに接してくれる。そして子供達に笑顔がある。自分の居た街はそんなの無かったと言い、料理を持ってその場を離れた。多分島の何処かで拉致された者だろう。
夕飯食べて、片付けて、今日も皆で話し合う。帰宅不能の二人の子供はマシュエル夫妻が引き取っても良いと言う事になった。子供達も納得しているので異議は無い。帰宅希望の子供達は意見変わらず。だが、それで良い。残留希望の大人も意見変わらずである。
帰宅希望の大人には少し変化があった。未婚の女八人が残留を希望した。飯作ってる時に話し掛けて来た女も居る。
戻っても食糧難な故郷より、生きやすいこっちを選んだそうだ。既婚者や、親が心配な者はやはり帰りたいと言う。
「そう言えば、昼過ぎにキネイアッセンに行って来たんだが、デカい港街があった。誰か知ってる人居る?」
「どんな街だい?」「港の大きさは?」
「壁が無駄に高くて、船は十隻くらい停めてあったな。あと、ドラゴン飛んで来た」
「ああ…、ソイツは街じゃないよ」
「そうだね、ありゃあ要塞さ。アソコから軍艦出して、兵隊を送り込んでたのさ」
「街じゃなかったのか」
「よく生きて戻れたね…」
「俺はあんなドラゴンより速く飛べるからな」
「冒険者ってのはバケモノ揃いなのかい?」
否定はしない。人の癖にヤバい奴結構居るからな。
明日の予定を決めよう。キネイアッセンのあれは街じゃなかったので、先ずはウラシュ島で拉致された者を集落に帰す事となった。島内の何処かに帰る者は七人、キネイアッセンに帰る者は十人となった。
「私もついてく」
ネーヴェが同行すると言う。
「ならバジャイはお留守番だな。良い子にしてろよ?」
「うにー…」
雲丹、こっちにも居るのかな…。山葵醤油で頂きたい…。
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