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食べちゃうぞ?
しおりを挟む先頭を往く船に狙いを定め、ビューンと飛んで甲板に降りた。
「全員出て来て此処に並べ」
こんな事言って、のこのこ出て来るのは下っ端か警戒心の無い間抜けである。が、動ける者全て甲板に上がって来て縦横に並んだ。《洗脳》の効果である。
「この船の代表者は誰だ」
一人がのっそり、虚ろな目をして手を上げる。並ぶ者全て虚ろな目をしているが。
「此処に居ない物は居るか?」
「お…はい…。繋いだ奴隷と、箱に入れた奴隷が、い…いる…ます」
「全員甲板に出す。案内しろ」
「お…はい…」
丁寧語は苦手なようだ。のっそりのっそり降りて行く男の後に付いて行く。箱に入れて釘止めしてる奴隷が十八人。飯どーすんだよこれ。箱だけ《収納》すると、汚物塗れの女が這うように動き出す。甲板に出て並ぶのだろう。大人だけでなく子供も居る。
使う予定があるのに汚してどうすると言うのか。
十八人が外に向かうのを見届けて、繋いだ奴隷の元に案内させた。
「う…、う~…あ~…」
全裸の獣人が首と手足を繋がれて、それでも外に出ようと藻掻いていた。珍しい、全身獣タイプの女のようだ。力があるようで枷を引っ張る手足には血が滲んでいる。先ずは《洗脳》を解いてやろう。
「う…うぁ、ぐあぁあっ!殺す!殺す!こ!ひあっ!!怖い怖い怖い怖い助けて食べないで!」
俺を見て怖がって居るのでは無い。俺の後ろの空高くから見守っている怖ーいおねーさん方に反応しているのだ。
「助けてやろうか?」
「助けろこのやろピギャーッ!」
食べられても知らんぞ?森の中で四つん這いになってたら普通に動物に見えるからなぁ。
「お前を助けるのは唯の気紛れだ。この船の間抜け共が海賊行為をしそうだったのを懲らしめる序でしか無い。生き長らえたいなら助けようとする者に感謝の意を表すモノだろ?」
「ア、アレより弱いクセに!」
「お前よりは強い」
「にぎぃいいいっ!!」
プシャーーーー
腕と脚を大きく広げ、《威圧》とポーズをして見せると、腹を見せてチビりよった。
「食べちゃうぞ?」
「た、助けて…」
「食べないでやるから大人しくしとけ」
激しく頭を振る粗獣の雌の枷を外し回復してやる。
「付いて来い」
「あいっ」
ゆっくり歩く男を先頭に、獣を率いて甲板に上がる。箱入りだった十八人も、虚ろな目で並んでた。
「おい獣、この女達は知り合いか?」
「知らない。ワタシの後に来たヤツと、ワタシより先にいたヤツの匂いだ」
「おいお前、この女達と獣は何だ?」
「こいつらは、奴隷…。おか、して…売る…」
売り物犯して価値落とすなよ。
「奴隷は貰う。お前等は港に着岸しろ」
「「「「お、はい…」」」」
別に丁寧語を話せと指示して無いのだが…。箱入り十八人と獣を船室に戻し、残りの二隻も同様に、《洗脳》して奴隷と間抜けを確認し、港へ向かわせた。
「カケル、どーするの?」
「貴重な労働力が船と住民連れてやって来てくれたんだ。こき使ってもらおうぜ」
「主様は死を救済とお考えなのだな」
「そりゃあそうだ。死んだら輪廻の輪に組み込まれるんだし、そうなったらどんな悪事を働いててもチャラになっちまう。生きてる内にしっかり苦しんでから死んでもらわないとな」
「女は?」
「ネーヴェとリームが居るだろう?」
「えへ…」
抱き着いて来る可愛い子背中に背負い、背中に乗れと擦り寄る可愛い美人の背中に抱き着き子亀孫亀状態で港へと飛んだ。
「おい、カケル殿!あの船は何だ!?」
兵士が集まり俺に問い質して来るので、海賊が奴隷を持って来た事を伝えると一気に慌てふためき出した。
「まあ落ち着け」
「落ち着けるか!先ずは避難!それから武器と男手を集めろ!」
「大丈夫だ。俺が海賊共を《洗脳》してある。命令には服従させるが虐めたりすんなよ?」
「せ、洗脳?」
「所で、奴隷紋を解放…出来なさそうだが、出来るか?」
「お察しの通りだ。出来る訳ゃ無い」
一度他の街に連れてってやる必要があるか…。
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