571 / 1,519
お手本
しおりを挟む「できた」
俺が二オコン程掛けてやった作業を五リット程で終わらせたネーヴェが俺の腹に頭を擦り付ける。撫でて欲しいのだろう。なでなでなでなで…。
その後の作業もネーヴェのおかげで素早く煉瓦を盛り付けて固める事が出来た。入口は一先ず此処までにして壁に移ろう。
現在の壁は、高さ十ハーンの幅一ハーン程なので、壕の深さが十五ハーンあるとしても梯子等あれば誰でも上がって来られてしまう。もう少し高さと、人が移動出来る幅が欲しい。
「高さは三十ハーン、幅は五ハーンは欲しいな。落下防止と隠れる為の壁も作りたい」
「ん。やってみて」
お手本が欲しいのだな?岩壁に押し付けるように、そして壕とツライチになるように、高さ三十ハーンの壁を今ある壁にめり込ませた。
「こんな感じだ。下の壕との段差が出来ないように作りたい」
「わかった。見てて」
ドロドロしてるが多分煉瓦だろう。空に巨大な塊が現れると、壁の上にべっとり乗っかった。それを削り均してキュッと固めてはい完成。規模がデカいだけに広いエリアを作れてしまうな。
「流石はネーヴェだ。俺は落下防止の壁を付けてくから、その調子で進めてくれ」
「ん」
べとーん、ズリズリ…、キュッ。
べとーん、ズリズリ…、キュッ。
魔法建築の素早さは地球とは比べ物にならんな。追い付かないと格好付かないのでとっとと壁を作ってく。一×一ハーンで長ーく伸ばした煉瓦ブロックを外側の際に並べながら、一立方ハーンのブロックを時折乗っけてネーヴェを追う。まあ、追い付けないんだけどな。二オコン程で大体真ん中辺りに到着し、作業が終わった。何時の間にか帰って来たリームが俺達の作業を見て、東側から進めてくれたのだ。
「ネーヴェとリームのおかげで素早く出来るよ」
「主様の仕事を取ってしまったが喜んでくれたなら我も嬉しい。そう言えば、此方に向かって歩く人の子が見えたぞ」
「入口と道を作らなきゃな」
「はしも」
「そうだな。昼飯が遅れてしまうがやっておこう」
「それならば我が手を貸そう」
野菜の入った背負い籠を肩に掛けたボーデンフェルトが空に上がって来た。どうやら男手と共に収穫をしていたようだ。
「助かるよ。多分だが逃げ出した者だろう。顔を知ってるお前が居てくれた方が良いな」
「橋と門。それに街までの道だな」
「迂回しても良いから平らに作ってくれ。荷車は坂道に弱いからな」
「任されよ。昼飯は女達が広場で作っている筈だ」
背負い籠を預かり街の広場に飛んで行くと、奴の言った通り昼飯会場が出来上がっていた。肉は無いが、ボーデンフェルトが獲って来た魚を焼いたのが串に刺さってジュワジュワしてる。
街の人に混ざって食事にありついた。
この街の主たる燃料は薪だ。荒野と化したこの港では、海から流れ着いた流木や、船で買い付けた薪を燃料としているそうで、船が逃げてしまった現在、個人で作るより全体で作った方が燃料コストを下げられる為、此処でこうして和気藹々しているのだそうだ。
「建材より先に燃料として使う事になるな」
「リームは植林したら直ぐに燃料に変えてくれ。ネーヴェも頼むぞ」
「うむ」「ん」
昼食後、俺は再び一人で作業だ。外の壁と岩壁に通路を通す。壁は海抜三十ハーンを超える高台で、岩壁は更に二十ハーンは高い。奥まで逃げられれば二十五ハーンの津波にも耐えられるだろう。西側の壁際に立ち、四×四ハーンの《収納》の枠を作る。それを勾配十%程で切り取って行く。目分量なので正確では無いが、分度器無いし、仕方無い。
岩壁を突き抜けた所で四ハーン内側に移動し、つづら折りの坂道にして行く。二往復半で内側に方向を変えて斜面を削り、入口を広く取って避難路が繋がった。斜面の端を均したり開けっ放しの穴に転落防止のブロックを詰めたりしてたら夕方になってしまった。
夕飯を作る広場の灯りに、腹の虫が鳴った。
0
お気に入りに追加
133
あなたにおすすめの小説
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話
妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』
『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』
『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』
大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。
旦那様、どうやら御子がお出来になられたようですのね ~アラフォー妻はヤンデレ夫から逃げられない⁉
Hinaki
ファンタジー
「初めまして、私あなたの旦那様の子供を身籠りました」
華奢で可憐な若い女性が共もつけずに一人で訪れた。
彼女の名はサブリーナ。
エアルドレッド帝国四公の一角でもある由緒正しいプレイステッド公爵夫人ヴィヴィアンは余りの事に瞠目してしまうのと同時に彼女の心の奥底で何時かは……と覚悟をしていたのだ。
そうヴィヴィアンの愛する夫は艶やかな漆黒の髪に皇族だけが持つ緋色の瞳をした帝国内でも上位に入るイケメンである。
然もである。
公爵は28歳で青年と大人の色香を併せ持つ何とも微妙なお年頃。
一方妻のヴィヴィアンは取り立てて美人でもなく寧ろ家庭的でぽっちゃりさんな12歳年上の姉さん女房。
趣味は社交ではなく高位貴族にはあるまじき的なお料理だったりする。
そして十人が十人共に声を大にして言うだろう。
「まだまだ若き公爵に相応しいのは結婚をして早五年ともなるのに子も授からぬ年増な妻よりも、若くて可憐で華奢な、何より公爵の子を身籠っているサブリーナこそが相応しい」と。
ある夜遅くに帰ってきた夫の――――と言うよりも最近の夫婦だからこそわかる彼を纏う空気の変化と首筋にある赤の刻印に気づいた妻は、暫くして決意の上行動を起こすのだった。
拗らせ妻と+ヤンデレストーカー気質の夫とのあるお話です。
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
魔境に捨てられたけどめげずに生きていきます
ツバキ
ファンタジー
貴族の子供として産まれた主人公、五歳の時の魔力属性検査で魔力属性が無属性だと判明したそれを知った父親は主人公を魔境へ捨ててしまう
どんどん更新していきます。
ちょっと、恨み描写などがあるので、R15にしました。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる