566 / 1,519
致命傷
しおりを挟む朝飯に肉。これが食えなくなったら歳なのだろうか?肉を焼き、頬張る二人を余所に採れたて実物野菜を生齧りする俺である。勿論肉も食うぞ?見た目トマトで食感はピーマン、味はセロリと言う謎野菜に塩を振って食うのが頗る美味いのだ。普通は煮て食うそうなのだが、寄生虫の心配も無いし生でもいけるだろって感じで齧りついたら美味かった。肉詰めして焼いても良さそうだな。
食事を終えたら食休み。食休みを終えたら作業開始だ。光と水の属性魔石を家の各所に設置して行く。使う所から重点的にやってって、エントランス、厨房、大部屋、トイレ、脱衣場、そして浴室と移動した。階段の足元に埋め込んだり、手元ライトを作ったりしてたら二百個近くあった光の属性魔石なんて直ぐに使い切ってしまったよ。
「おわった?」
「もう倍程作っておけば良かった」
「ゆっくりやれば良いのだ」
エントランスに戻って来た俺に、いつの間にかソファーを作って寛いでるリームとネーヴェが反応する。クッションの中身が気になる所だ。
「種とアマグキを煮ようか」
「種、水漬けてる」
「準備してくれてたのか。偉いぞ」
「ほめたたえて」
「主様、火の板を作ってくれ。絞っては無いが此方も砕いてあるぞ」
「そうか、ありがとう」
厨房に向かい、火の鉄板を三枚作って隅に置き、鍋も作って上に乗せた。そういや種やアマグキは何処だ?
「ネーヴェ、種を鍋に入れたいんだが、出してくれるか?」
「んー」
鍋の上がモヤっとしたと思ったら、ザラザラと種が落ちて来て、鍋に七割程注ぎ込まれ、最後の一粒が落ちた。鍋の中から一粒取って確認すると、しっかり含水して膨らんでいた。ネーヴェの《収納》は時間設定が出来るのかも知れんな。
水を入れて火に掛ける。焦げないように気を付けねば。
「リーム、アマグキを出してくれ」
「うむ」
リームが取り出したデカい盥には、アマグキのミンチが山になっていた。
「もう少し細かい方が無駄が出ないぞ」
《散開》を掛けて粉々にしてやるとミンチがペーストになった。水を足して丸ごと煮てしまえ。煮ながら取っ手を付けた漏斗に雑木濾紙をセットして、お玉で掬ったドロドロを隣の空き鍋へ濾して更に煮る。まあこれだと更に絞ったりで時間が掛かり過ぎるので宙に浮かせて《威圧》で絞る。楽。
「何故初めからそれをやらんのか」
「それはな、後から気付いたからだ」
「成程」
絞り汁と種を《威圧》の手で混ぜたり灰汁を取る。
「手伝う」
「熱いから気を付けてな?」
「私は溶けた岩でも平気」
種の茹で上がりの指示をして、海へミズゲルの核を採りに行く。
「見ても良いか、主様」
「別に構わないぞ。直ぐに終わっちゃうけどね」
アマグキの絞りカスを土に混ぜ込んでいたリームが見に来たが、二百個程度の数なので本当に直ぐ終わる。
「残ったゲルはそのままなのか」
「ゲル版に加工出来るが、やる時間が無くてな」
「《集結》して持って置いたらどうだ?」
「んー、ゲルだらけで見た目も悪いし、そうするか」
死んでるミズゲルを《集結》させて、空に浮かせ、ギュギュッと小さく纏めてく。青くて透明度のある玉になった。滅茶苦茶重いけどちょっとキレイ。海も底が見えるようになったよ。
玄関前に戻って核を加工し、リームに付与してもらったら足りない場所に設置して行った。個室の全てと、龍の巣、それ等を繋ぐ廊下に施行して魔石を使い切った。まだ少し足りないが、続きは明日でも良いや。
「カケルー、カーケールー」
耳元で大声を出されて俺の耳が致命傷を負う。が、ネーヴェは厨房で種等煮てる筈。風魔法で声を飛ばしたのか?両耳を回復しながら厨房へ向かうとやはりネーヴェが種煮てた。
「呼んだか?」
「よんだ。これ、冷やして」
黒糖の鍋はまだちょっと緩いかなって感じだな。もう少し煮てやらねば。
「まだ煮足りないな。しっかり混ぜながらドロドロするまで煮るのだよ」
「量が減っちゃう」
「その分甘くなる」
「なるほど…」
目減りして一喜一憂するようでは乾物なぞ作れないぞ?
0
お気に入りに追加
133
あなたにおすすめの小説
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話
妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』
『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』
『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』
大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
魔境に捨てられたけどめげずに生きていきます
ツバキ
ファンタジー
貴族の子供として産まれた主人公、五歳の時の魔力属性検査で魔力属性が無属性だと判明したそれを知った父親は主人公を魔境へ捨ててしまう
どんどん更新していきます。
ちょっと、恨み描写などがあるので、R15にしました。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL
全能で楽しく公爵家!!
山椒
ファンタジー
平凡な人生であることを自負し、それを受け入れていた二十四歳の男性が交通事故で若くして死んでしまった。
未練はあれど死を受け入れた男性は、転生できるのであれば二度目の人生も平凡でモブキャラのような人生を送りたいと思ったところ、魔神によって全能の力を与えられてしまう!
転生した先は望んだ地位とは程遠い公爵家の長男、アーサー・ランスロットとして生まれてしまった。
スローライフをしようにも公爵家でできるかどうかも怪しいが、のんびりと全能の力を発揮していく転生者の物語。
※少しだけ設定を変えているため、書き直し、設定を加えているリメイク版になっています。
※リメイク前まで投稿しているところまで書き直せたので、二章はかなりの速度で投稿していきます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる