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ばっち来い

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 島に木を植えて畑も作りたい。街を作ると言っても早々人が増えたりはしないので、先ずは食料を作るのだ。

「一度家に帰ろうと思う。俺でも破れる結界を張ってくれないか?」

「内装に取り掛かるのですね」

「木も植えたいしな。ちょっと対岸に挨拶して来るよ」

「カララもー」

「否、カラクレナイは皆と一緒に居てくれ」

「ぐぇ…」

後ろ髪引くカラクレナイから離れたくない。それでも聞き分けて俺から離れる我が天使の健気さよ。直ぐに戻って来るからね!

 対岸へ飛んで港に降り立ち、マシュエルを探して街を歩くと何時もの兵士が集まって来た。

「おはよう」

「何がおはようだ。何しに来た」

「お前等をぶち殺しに来た。とか言えば納得するのか?マシュエルに話があって来たんだよ」

「ドラゴン無しならお前なぞ!」

「ああ、無理無理。俺は龍よりだいぶ弱いけど、お前等よりはだいぶ強いから」

「ほざくな!やるぞっ」「「「おう!」」」

「おう、ばっち来い」

兵士達が囲んで来るのをレスリングスタイルで待ち構えるが、どんなに押しても奴等が俺に近付く事は出来無い。

「おらおらどしたー。はよ斬り掛かって来いやー」

「何故っ!近付けんっ!!」

「スキルだよ。こんなモンも看破出来無いようじゃ、戦う以前の問題だぜ?因みに龍は一瞬で消し飛ばして来るからな、怒らせるなよ?」

「兵長!行きます!」

何処からか太っとい丸太を数人がかりで持って来た。破城槌か。

「良いぞー、ドーンと来~い!」

ドーンっと来て、跳ね返り、引っ繰り返る兵士達。まだまだだね。

「しっかり訓練しろよ?じゃあ俺は話し合って来るから」

「ちょっ!」

《威圧》の壁で兵士等を押し退け押し退けマシュエルのハウスへ向かう。

「こーんにーちはー」

ドアをノックし出て来るのを待つと、暫くしてお婆さんが顔を出す。マシュエルの奥さんかな?

「何方です?」

「対岸の島に住む事になるカケルだよ。マシュエルさんに話があって来たんだ」

「そうですか。主人を呼んで参りますので中でお待ちください」

「はーい」

客間に通され椅子に座って待つ。客間と言えばソファーのイメージの強いシルケだが、この家では椅子とテーブルなのな。

「何の用じゃ」

「少し家に戻って植林とかの準備して来るから挨拶しとこうと思ってな」

ドアを開けての開口一番、挨拶も無しに要件を聞く失礼な爺さんに、座る時間を与えず要件を伝えてやる。

「結界張ってあって中には入れんので注意しとくぞ?それと、婆ちゃんにはこれをあげよう」

雑木のお椀に山盛りにしたマルサヤノクサの種を出してやる。

「種?植えるのは良いですが、育ちますかどうか…」

「一晩水に漬けてから柔らかくなるまで煮ると美味いよ。薪足りてなさそうだし、これもあげよう」

火の鉄板もくれてやる。

「買うと二千ヤンだよ。魔力を通す毎に着いたり消えたりするから、鍋の下に敷いて煮込んでね」

「良いのでしょうか…」

マシュエルに視線を飛ばして伺ってるな。

「俺が対岸に住むと、そう言う魔道具を組み立てて売ってもらう事になる。使ってみて、種も食ってみて、しっかり考えて答えを出してくれ」

「そんなモン硬くなって食えなくなったホルストの餌じゃろうが」

「俺んちの食卓はそれの加工品ばっかりだぞ?先ずは煮たのをスープにでも入れてみるんだな」

婆ちゃんに鉄板の使い方をレクチャーして家を出た。兵士達が待ってたけど、何の用だ?

「マシュエル殿に何をした!?」

「話、して来ただけだけど?最初に言ったよな?後さ、弱い癖に突っ掛かって来んなよ。力の差はハッキリしたろうが。鍛え直して来い」

「うっ」「あががっ」「うげえ」「やめっ」

《威圧》を飛ばすと皆動けなくなる。呻く雑魚共を小突きながら道を作っていると、珍しく俺を止めようとする程度の《威圧》が飛んで来た。少なくとも人の世界じゃ抜きん出てる能力者は、俺の往く道に立ち塞がり驚いた顔をしていた。
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