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にょきにょき
しおりを挟む四龍と俺の合作、大型寸胴鍋の評判が良い。まだコトコト煮てる状態だが、それを見た兎達に同じのを五~六個強請られてしまった。龍五人、兎十九人、人八人。総勢三十二人のこの集落で、飯は食堂で一気に作る。鍋の数が足りないと思って沢山買って来たが、大きさも足りなかったのだな。食べ盛りのカラクレナイが元の姿に戻ったのだから尚更だ。今まで竈をやりくりし、増築までしてやって来たのだ。反省せざるを得無い。
…と言う訳で再びカラクレナイの巣の前で鍋と蓋を増産し、糖の実を煮てる横に煮物スペースを増築すると、早速スープを作り出した。
「皆、何度も手伝ってくれて助かったよ」
「ん。ねぎらって」
母屋のソファーで寛ぎながら、兎の持って来たお茶を啜る俺と龍達。ネーヴェが膝に乗ってるので頗る飲みにくいが撫で散らしてやろう。
「私は何も出来ませんでした」
リュネは残念そうだが今回は適材適所。他の所で役に立てば良いのだ。つか役立たなくても良い。隣でくっ付いてるだけでも充分なのだ。
「おっぱい」
「はぁい」
むんにゅりするだけで機嫌が直るリュネであった。
「我はもっと役に立ちたいぞ」
「リームは果樹園作ってくれたし、充分役に立ってるよ。ありがとな。ミーネは後で物を冷やすのを教えてくれ。冷たい飲み物を作りたいんだ」
「期待に添えて何よりだ」「任せておけ」
「「……」」
「何だ?」
「おっぱいは要らんのか?」「我のは必要無いのか」
「今は私の番ですー。ねー?」
「二人には後でたっぷり労ってやろう。リームの巣で、三人だけでな」
「ふむ、ならば此処は折れてやらんでもない」
「楽しみだ」
「あはーん、ずるぅ~い」
「私は後で良い」
今撫で散らしてるのは労いに入らないらしい。まあ、後でと言うならそれで良かろう。
長女は昼寝に、次女は仕事と言って出て行った。リュネは俺にベッタリで、ネーヴェは俺の上で寝てるぜ。
「皆とエッチしたいけど、全然時間が足りやしない」
「人は少し食べないだけで窶れてしまいますものね」
「お肉の調達、いつもありがとな」
「出来の悪い姉にも言って上げてくださいね。今は野菜をにょきにょきしてますよ?」
「土の養分が枯れてしまわないか不安になるな」
「吸わせているのは魔力でしょうから、きっと大丈夫でしょう」
俺達が不在の間はリームが野菜をにょきにょきさせていたようだ。《感知》で見ると、見事に育った名も知らぬ野菜を《収納》しまくってるリームと目が合った。唇でチュッとされたよ。人の最高レベルであれが出来るのなら俺も頑張れば出来るのかな?って気持ちになる。
「んもう、私の番なのにぃ」
「じゃあ、リュネ、んちゅー」
「チュッチュッチュー」
「じーーー…」
声に出してじーーーっと見詰めるネーヴェに、流石のリュネも気不味くなったらしい。女児達のお世話だなんだと逃げ出してしまった。
「おはよう。起こしちゃったか」
「カケル、時間、欲しい?」
「聞こえてたのか」
「また、あの部屋みたいなの作る?」
あの部屋と言うと、主婦達と組んず解れつしたあのヤリ部屋の事か。確かに全員と満遍無くエッチするなら欲しいとは思うけど、あれ、絶対俺だけ歳取るよな。
「欲しいけど、俺だけ歳取りそうで怖い」
「そだね。時間、戻せるようにしないと、人はすぐ死んじゃう」
やっぱりかー。
「時間を戻すとなると、その間の俺の記憶はどうなっちゃうんだ?」
「若返るだけ。記憶は残る」
「それって死ななくなるって事だよな?」
「ん」
一文字で肯定されてしまった。お前百まで儂ゃ九十九まで、妻達の悲しむ顔等見たくない。けど龍は、長い長い時間悲しむ事になるんだよな…。
「ネーヴェ。俺は人並みに生きて、人並みに死にたい。人成らざる存在になり掛けてるけど」
「わかってる。だから人は尊い。カケルが好き。死んだら時の止まった部屋に寝かせたげる。その時までよく生きて」
「そうだな。死んでる俺にエッチな事するなよ?」
「…おなかすいた」
話を逸らしたな?
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