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可愛い弟分

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「なあ、敵対して来る奴は殺しても構わんのだろう?」

「そうだねえ。けど、コイツ等のなーばりに入っちゃったオレ達も悪いし、頭下げてずらかるのも一つの道、かな?」

俺の意見にワーリンが答える。ワーリンは人間が出来ているな。

「だってよー。あたい等はその気無いけど、そっちがやるってんなら大変な目に遭うよー?」

シトンの言葉に森の中から殺気が膨らむ。馬鹿なのか?此方が折れてるのに伸し掛って来るとは、全く度し難い。

「ご希望通り、大変な目に遭わせてやろう」

「あにきぃ…」

ガットが不安そうな目で見て来るが、安心せい。直ちに死にはしない。
俺は木を引っこ抜いた。一本、十本なんてちっぽけな数じゃ無い。周囲二十キロハーンに生える全ての植物を根から掘り上げ宙に浮かせて全てを《集結》。練り合わせて雑木の塊にして《収納》した。木の上に居た者は尽く地べたに振り落とされ、幹の裏に隠れていた者は間抜けな姿を晒す事になる。彼奴等の集落だろうか、少し遠目に丸太で作った壁がある。ちょっかい出さなきゃ見て見ぬ振りしてたのになぁ。

「どうだ?大変だろう?」

「お前等こそ身を隠す場所を無くしたな!」

「お気楽な馬鹿だな。後の事考えろよ?獲物を狩るのに二十キロハーンは歩いて森に行かにゃならんのだぞ?大変だな」

「な…!?」

「村の周りにゃなーんにも無いぞー。魔物に囲まれたらどーなっちゃうのかねー?頑張って柵でも建てまくってくれ。その材料も遠くまで取りに行かにゃならんがな~」

男共を《威圧》して動けなくしてやったら更地になった森に別れを告げる。何も無い所を歩くなんて無駄でしか無いので、魔道車を出して皆で乗り込み移動した。

「兄貴ぃ、あれじゃ森が死んじまうぜ…」

「そうだな、木を植えないと死ぬだろうな。お前等は優しい子だ。だが間違えるなよ?お前等は冒険者だ。命を奪いに来る相手には容赦するな」

「「「うん…」」」

「なあシトン、此奴等ってまだ野盗の討伐してないんじゃないのか?」

「まあね。まだ子供だってのもあるけど、運がいーのか野盗に出会してないんだよ」

「飛び級でランクを上げた弊害か」

「可愛い弟分だけど、何時までも可愛いままじゃ、ダメなんだよね」

ワーリンが三人を抱き締める。苦しそうだが真ん中のガットは役得だな。

「可愛くて強い弟分になってもらおうか。これから野盗を殺しに行くぞー」

「「「えー!」」」

「えーじゃ無い。俺が見てる内に済ませとけ。人は強いし練習も出来んのだからな。死ななきゃ治してやるから安心して死に掛けて来い」

「ミーネ様よりえぐいぜ…」

「今夜の飯は美味いぞー」

食えればな。
更地の端まで走るのも億劫なのでとっとと空飛んで行っちゃう。上空から《感知》で見下ろすと、街道から程近く、断崖の麓にある洞窟を加工して住み込んでる奴等を発見した。
入口が分かりにくいように作ってあったり、脱出用なのか出入口が複数ある。通路の広さも充分で、待ち伏せ用の隠れ場や四角く整えられた部屋まである。土魔法が使える奴が居るのかも知れないな。
付近に居る者は全てで三十二人。内八人は捕まった女だ。多分男は殺されて捨てられている事だろう。

「逃げないように入口一つ以外は塞いでやる。皆頑張れ」

「殺らなきゃ、殺られる…」「うう…」「人は…、なんで人を殺すの?」

「獣が同士討ちしないと考えてるならそれも間違いだ。餌の取り合い、雌の取り合い、自分の命を守る為、色んな事で同族同士殺しあってるぞ」

「彼処に居るのは人じゃ無い。唯の野獣なんだよ。人を殺して餌と雌を奪ってる」

「戦う力の無い人が野獣に襲われないように、兵隊や私達冒険者が駆除しなきゃいけないのよ」

「ダーニーガーが前、オレ達はサポート」

「「「うん…」」」

ワーリンが隊列を指示し、リーダーがワーリンに変わったようだ。少年隊を戦闘に集中させたいからだろう。
俺は旅館オナホでもらった果実を切り分け、皆に振舞った。元気出して行こうか。




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