520 / 1,519
まずは見てろ
しおりを挟む煙突からの帰り道、眼下の森を見ていてふと森の中を散策したくなった。何もしないで行って帰ってじゃあ冒険者組はおまんまの食い上げだし、何か狩って帰りたい。皆もそれに同意したので、地上に降りて魔道車を《収納》した。
「カケル様と狩りするの初めてだぜ!」
「俺達の強さを見せてやんよ」「よーよー」
「あんまり燥ぐなよ?何が居るかわかんないんだから」
「わーってらい。隊列は前が俺、ワー姐、ニット。中に兄貴。後ろは友恋とガット、だな?」
「俺が中か」
「アズも中、あたいとガットが後ろ。まだまだだねぇ」
「ちくしょう」
俺を守ると言うより、まずは見てろって事だろう。先頭のダートが邪魔な草を切り払い、ワーリンが索敵、隣のニットは近場の警戒。アズと俺は左右の警戒をしつつ温存で、シトンとガットは後方の警戒となった。
ワーリンは方向感覚が優れていて、起伏のある森の中であっても真っ直ぐバルタリンドに向かってる。暫く行くとダートとニットが交代し、体力を残しながら草や小枝を切り払っていた。
俺は飛んでしまうから、こう言う事して来なかったんだよな。立派に冒険者してるじゃないか。
「止まれ、前に居る。正面二十ハーンだ」
ワーリンの索敵に掛かったのは木に絡まった大蛇だった。木の塊に擬態して、獲物を待ち構えたり寝てたりするのだろう。俺は《感知》で見てたので移動先に当たらない奴まで確認してたけど、移動先に居るのだけをターゲットにするならば、この距離でも良いのだろうな。
ワーリンの言葉を聞いてガットとニットが交代し、二人は木に登る。アズがワーリンに強化魔法を掛けて戦闘開始となった。多分速度強化かな。
音を立てずに進み寄り、相手の攻撃を誘う。とぐろを巻いた大蛇がワーリンに噛み付こうと体を伸ばすのをひらりと躱し、先ずは左目に右フックを決めた。ぐらりと揺れた大蛇の頭に、樹上から飛び降りたダートの剣が突き刺さる。しっかり手入れしてるみたいだ。間を置かず飛び降りて来たニットが尻尾を捕まえて踏ん張っているおかげで攻撃と移動を阻害する。中々のパウワーだ。その後はワーリンが三十発程殴って大蛇の意識を刈り取ると、ダートが動かなくなった首を撥ねた。
「やるじゃないか」
「まだまだ。血を流させ過ぎだよ」
「血の匂いで敵が集まってしまいます」
「カケルさんに良いトコ見せたかったんだろ。今回はおまけしてやんなって」
「俺なんて見てただけなんだぞ!」
そう言う事ならおまけをくれてやろう。死んだ獲物を仕舞わせて、辺りに流れた血を《洗浄》してやった。
「ありがとう兄貴!」「兄貴!」「あーにきー」
武器持って抱き着いて来んな!刺さりはしないがドキドキすんだろ!可愛くてちょっと臭い弟共を《洗浄》し、先を進む。
街道から離れた森の中は、実に色んな生き物がいる。最初に仕留めた蛇然り、近付く前に逃げて行く鹿っぽいのや猪っぽい野獣達。何処にでも居るブフリムやゴーラ、久しぶりに見たゲビトみたいなモンスター。モンスターを食って魔石を取り込んだ犬っぽいのや熊っぽい魔獣も見付かった。
熊っぽいのが出た時は俺も手伝ったのだが、
「兄貴が手ぇ出すと棒立ちでつまんねえ」
と、苦言を呈されたので殆ど見学に徹し、回収と解体、アズの魔力タンクと成り果てた。
「うわっ!矢だ!」
この時まではな。《威圧》の壁で辺りを覆い、飛んで来た矢は一瞬止まって地に落ちた。俺を中心に男女ペアとなり三方向を警戒する。
俺は《感知》で見えてたけど、まさか攻撃して来るとは思って無かったので敢えて報告しなかったのだ。報連相は大事だね。
「誰だー?」
ワーリンが矢を放った相手を誰何する。ワーリンにも相手は見えてるみたいだな。
「此処は我等の領地!余所者は排除する!」
出て行けでは無く排除するとは中々物騒な奴だな。まあ、ランナーなんてこんなモノか。声の主が男なので余計に残念感が強い。女ならとっ捕まえてアヒアヒ…は子供も居るし出来んか、残念。
0
お気に入りに追加
133
あなたにおすすめの小説
転生チートは家族のために~ユニークスキルで、快適な異世界生活を送りたい!~
りーさん
ファンタジー
ある日、異世界に転生したルイ。
前世では、両親が共働きの鍵っ子だったため、寂しい思いをしていたが、今世は優しい家族に囲まれた。
そんな家族と異世界でも楽しく過ごすために、ユニークスキルをいろいろと便利に使っていたら、様々なトラブルに巻き込まれていく。
「家族といたいからほっといてよ!」
※スキルを本格的に使い出すのは二章からです。
黒狼の牙 〜領地を追われた元貴族。過去の世界で魔法の力を得て現在に帰還する。え、暴力組織? やめて下さい、黒狼会は真っ当な商会です〜
ネコミコズッキーニ
ファンタジー
世界から魔法の力が失われた新鋼歴の時代。ルングーザ王国の大貴族であるディグマイヤー家。主人公のヴェルトハルトはその家の長男として生を受けた。
だが12年後のある日、父の政敵が領地に侵攻してくる。ヴェルトハルトは敵兵から逃れるうちに、気づけばまだ魔法の存在していた過去の時代……幻魔歴の世界へと迷いこんでしまう。
そこで傭兵団に拾われ、12年の時を過ごし、ある日魔法の祝福を受ける事に。
紆余曲折を経て元の時代へと帰還するのだが、その時彼は、現在では失われたはずの魔法の力を持っていた。
今日もヴェルトはその力で暴力組し……真っ当な商会を営み、仲間たちと共に帝都で「自分達らしさ」を活かした生活を送る。
◼️同タイトルでカクヨムでも連載しております。
微妙なバフなどもういらないと追放された補助魔法使い、バフ3000倍で敵の肉体を内部から破壊して無双する
こげ丸
ファンタジー
「微妙なバフなどもういらないんだよ!」
そう言われて冒険者パーティーを追放されたフォーレスト。
だが、仲間だと思っていたパーティーメンバーからの仕打ちは、それだけに留まらなかった。
「もうちょっと抵抗頑張んないと……妹を酷い目にあわせちゃうわよ?」
窮地に追い込まれたフォーレスト。
だが、バフの新たな可能性に気付いたその時、復讐はなされた。
こいつら……壊しちゃえば良いだけじゃないか。
これは、絶望の淵からバフの新たな可能性を見いだし、高みを目指すに至った補助魔法使いフォーレストが最強に至るまでの物語。
悪役貴族の四男に転生した俺は、怠惰で自由な生活がしたいので、自由気ままな冒険者生活(スローライフ)を始めたかった。
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
俺は何もしてないのに兄達のせいで悪役貴族扱いされているんだが……
アーノルドは名門貴族クローリー家の四男に転生した。家の掲げる独立独行の家訓のため、剣技に魔術果ては鍛冶師の技術を身に着けた。
そして15歳となった現在。アーノルドは、魔剣士を育成する教育機関に入学するのだが、親戚や上の兄達のせいで悪役扱いをされ、付いた渾名は【悪役公子】。
実家ではやりたくもない【付与魔術】をやらされ、学園に通っていても心の無い言葉を投げかけられる日々に嫌気がさした俺は、自由を求めて冒険者になる事にした。
剣術ではなく刀を打ち刀を使う彼は、憧れの自由と、美味いメシとスローライフを求めて、時に戦い。時にメシを食らい、時に剣を打つ。
アーノルドの第二の人生が幕を開ける。しかし、同級生で仲の悪いメイザース家の娘ミナに学園での態度が演技だと知られてしまい。アーノルドの理想の生活は、ハチャメチャなものになって行く。
男爵家の厄介者は賢者と呼ばれる
暇野無学
ファンタジー
魔法もスキルも授からなかったが、他人の魔法は俺のもの。な~んちゃって。
授けの儀で授かったのは魔法やスキルじゃなかった。神父様には読めなかったが、俺には馴染みの文字だが魔法とは違う。転移した世界は優しくない世界、殺される前に授かったものを利用して逃げ出す算段をする。魔法でないものを利用して魔法を使い熟し、やがては無敵の魔法使いになる。
さようなら、私の初恋。あなたは私をいらないと言ったけど──私も、私の人生にあなたはいらない。
ごろごろみかん。
ファンタジー
結婚式の夜、私はあなたに殺された。
彼に嫌悪されているのは知っていたけど、でも、殺されるほどだとは思っていなかった。
「誰も、お前なんか必要としていない」
最期の時に言われた言葉。彼に嫌われていても、彼にほかに愛するひとがいても、私は彼の婚約者であることをやめなかった。やめられなかった。私には責務があるから。
だけどそれも、意味のないことだったのだ。
彼に殺されて、気がつけば彼と結婚する半年前に戻っていた。
なぜ時が戻ったのかは分からない。
それでも、ひとつだけ確かなことがある。
あなたは私をいらないと言ったけど──私も、私の人生にあなたはいらない。
私は、私の生きたいように生きます。
魔境暮らしの転生予言者 ~開発に携わったゲーム世界に転生した俺、前世の知識で災いを先読みしていたら「奇跡の予言者」として英雄扱いをうける~
鈴木竜一
ファンタジー
「前世の知識で楽しく暮らそう! ……えっ? 俺が予言者? 千里眼?」
未来を見通す千里眼を持つエルカ・マクフェイルはその能力を生かして国の発展のため、長きにわたり尽力してきた。その成果は人々に認められ、エルカは「奇跡の予言者」として絶大な支持を得ることになる。だが、ある日突然、エルカは聖女カタリナから神託により追放すると告げられてしまう。それは王家をこえるほどの支持を得始めたエルカの存在を危険視する王国側の陰謀であった。
国から追いだされたエルカだったが、その心は浮かれていた。実は彼の持つ予言の力の正体は前世の記憶であった。この世界の元ネタになっているゲームの開発メンバーだった頃の記憶がよみがえったことで、これから起こる出来事=イベントが分かり、それによって生じる被害を最小限に抑える方法を伝えていたのである。
追放先である魔境には強大なモンスターも生息しているが、同時にとんでもないお宝アイテムが眠っている場所でもあった。それを知るエルカはアイテムを回収しつつ、知性のあるモンスターたちと友好関係を築いてのんびりとした生活を送ろうと思っていたのだが、なんと彼の追放を受け入れられない王国の有力者たちが続々と魔境へとやってきて――果たして、エルカは自身が望むようなのんびりスローライフを送れるのか!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる