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マタニティトーク

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 人化したカラクレナイとママ上殿の面通しの真っ只中だが、俺とサミイはバックヤードへ搬入を行う。向かう途中、店番をしてる親父殿に挨拶して、何時の間にか付いて来たエージャにも確認させて搬入を終えた。

「必ずや完売せしめて見せましょう」

「売れ残る位が丁度良い。かと言って売り渋るなよ?」

「肝に銘じます」

「在庫は抱えたくないですけど…」

「新規の客は毎年ポツポツ増えるもんだ。その時の為に少しだけ残しとかないとな。作るのも持って来るのも忘れがちになるし」

「忘れないように催促しますね!」

「忘れた頃に頼むよ」

「ご主人、おいでか?」

「おいでだよ」

バックヤードで一息着いて居るとフラーラがやって来た。

「我等買い物に向かう故暫く離れます。姫様を頼みます」

「わかった。行ってらっしゃい」

「あ、わたしとカララさまも一緒に行っても良いですか?材料を買う所からお料理が始まるんです」

「我等は構わないが、親御様にも一言断るべきだろう」

「ですね!聞いてみます!」

一足先にパタパタと向かって行くのを追って、客間に向かう。サミイの交渉の結果、メイド二人とサミイが離れない事を条件に、カラクレナイの動向が許可された。ママ上殿はカラクレナイを離したく無さそうだったが、料理を教わりたいと聞いて奮起している。…離せよ。

 メイド達が家を出て、残るは妊婦と経産婦、そして従業員。従業員は仕事しなくて良いのか?どうやらママ上殿の世話をメインでしてるので今は此処に居て良いらしい。ママ上殿が許しているのだから良いのだろうな。マタニティトークに花が咲いているが、俺はその輪に入れない…。従業員は自分と、多分俺の子を産んでる時を妄想してえへらえへらして居られる。俺も買い物に出れば良かった…。

「「ただいまー」なの」

耐え忍び、数オコンして、漸く終わりが見えた。サミイ達が帰って来たのだ。客間から逃げるように玄関へ出向き、二人と熱い抱擁を交わす。

「お~が~え~り~」

「はいはいよしよし」

「カケル、だいすき」

「これからソーサー作るので、もうちょっと待ってて下さいね!」

カラクレナイと作る初めての料理はソーサーらしい。材料と調理法次第でいくらでも味の変わる高難度料理だ。しがみ付く俺をペリっと剥がし、二人仲良くキッチンに行ってしまった…。

  「どうされたのですか?」
「マタニティトークと言う暗号会話を聞き続ける苦行に耐えられなかった」

「成程。買って来た荷物を収納して、時間を潰して下さい」

荷車の横に積まれた食料品に衣類、雑貨等を小箱に収納して…、一瞬で終わった。荷車の中で横になろう…。

「カケルさぁん、カララちゃんがお料理してる姿を見ないのですか?」

目を閉じて聞こえるのはリュネの声。今頃キッチンではキャッキャウフフと粉を捏ねくり回している事だろう。見たいけど、何故だか瞼が開かなくて、体も起こせる気がしなかった。

「眠過ぎてもうダメ」

片腕に柔らかい圧が掛かり、静かな吐息が頬に当たる。ぽんぽんとお腹を叩く優しさに、意識を手放す他は無かった…。
そして目覚めたら夕方。昼飯も食わずに寝剥がしてしまったらしい。横ではリュネが優しげな瞳で見守ってくれていた。

「カラクレナイのソーサー、食べそびれちゃったな」

「私には至福の時でしたよ。今度は食べそびれないようにしましょう」

裏庭には既にテーブルセットが並んでいて、メイド達が皿等運んでる。眠気の残る体に回復を掛けて手伝いに行こう。

「あ、旦那さま、今起きたんですね」

「昼飯食いそびれてすまん」

「カケルー」

「カラクレナイもごめんな」

昼に作ったソーサーは俺とリュネの分は残してくれておいたそうで、ママ上殿のソーサーの横に、ナンみたいなのが数枚添えてあった。基本的にソーサーはピザ生地のように丸い形をしているが、形は味に影響しない。だから全然全く問題無いのだ。
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