上 下
408 / 1,519

オーバーフロー

しおりを挟む


 夕飯食べて、客間でお茶等しながら駄弁っていると、漸くして家主が帰って来た。

「カケル様、皆様只今戻りました」

あれ?何かおかしいぞ?何時もなら「くぁ~けりゅ~さまぁ~ん」って来ると思うのに。

「何かあったか?」

「はい。日暮れ前に早ホルストが着きまして、南の…、正確には南西のダンジョン都市で魔物が溢れた、と」

「ふーん。で、バルタリンドとしてはどうするのだろうね」

「街としては静観でしょうね。ギルドとしては冒険者を応援に送ると言う事で依頼が出されました」

「俺達もそれ受けよーぜ!」「やってやるぜ!」「のぜ!」

「ダーニーガーの三方には許可を出せません。経験を積むかリュネ様を倒せるくらいになったら許可します」

「それダメって事じゃーん」「「じゃーん」」

「それって龍に近い敵が出てんの?」

「多対多に慣れてないと危険と言う意味です。はぐれたら死にますよ?」

「そうか。残念だったな少年隊。俺も家造りしなきゃだし、Dランクのペーペーじゃ参加は出来んな」

「カケル様は参加しても大丈夫かと思われますが…」

「私を倒してるのですから大丈夫ですね、ふふっ」

「家造りはあたしもお手伝いしますので、ご無事で帰って下さい」

帰って来た頃には全部完成してそうだ…。注意事項を説明しながら手持ちの光の属性魔石をテイカに託した。

「行きたくないけど嫁達の期待には応えなきゃな」

「今から推薦状を書いてギルマスに捺印させますので、ギルド迄ご同行願います」

カロが自室で推薦状を認めしたた てる間に装備を整える。

「いーなー」「いーなぁ」「なー」

「代わってもらいたいけどお前等飛べないじゃん。是非飛べるようになってくれ」

「そうだな!飛べるように頑張る!」「実力も付ける!」「けどリュネさまは無理!」

それは俺も無理だ。せめて認められるくらいに強くなろうな。

「カケル様、お願いします」

カロの支度が整ったようで、玄関に向かう。

「飛んでくから抱き着け」

「ふぁい~」

あ、ダメな感じになってる。やはり我慢してたか。空に上がってこっそりキスしてあげた。お肉味だって。

 ギルドに着いてギルマスの部屋に一直線。ノックして入るカロに続くと、中には数人の冒険者が立っていた。此奴等も『溢れ』に向かうのだろうか?

「誰を連れて来たと思ったらやはりカケルかー」

「俺だー。って、不満そうだな?」

俺を見て苦笑いのギルマスがボヤく。

「ぶっちゃけるとな、お前が入ると他のモンが割を食うんだよ。自分の討伐記録は解ってんだろ?」

「ああ、狩り過ぎるってか。自覚はあるけどそう言う仕事だったんだよ」

「それは分かるがよ、オーバーフローに参加する奴の目的なんてどう取り繕っても金なんだよ。どうにか割を食わさずにお前を使ってやりたいもんだ」

「カロさんや、俺、居ない方が丸く収まらん?」

「居た方が早く安全に終わると確信しております」

「おいペニスケース、随分強気じゃないか」

強気なのはカロだ。

「中身が気になるのか?男のクセに欲しがり屋さんめ。しかしこれは女専用だ、残念だったな」

ペニスケの先っちょをピンっと弾くと皆の視線が集まる。そんなに見んなよ…。

「俺の報酬はランク上げてくれるだけで良い。ダンジョン入らせろ。出来れば只で」

「実質無報酬か。皆が皆こうなら楽で良いのに」

「お前Dランクか!?そんなかぶいた成りして」

「ダンジョン入れるのがCからなんて知らなくてな。実績無視して金ばかり稼いでたんだ」

ザワザワし始めたのでもう行くか。

「取り敢えず、俺は、居るかどうか判らんが飛んでるのと入口から出てるのを殺れば良いな?それなら割を食わさずに済むだろ」

「……わかった。必ずギルドに寄ってから行けよ?」

捺印された紹介状を受け取り、窓から外に飛び出した。冒険者共は驚いてたよ。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

テンプレな異世界を楽しんでね♪~元おっさんの異世界生活~【加筆修正版】

永倉伊織
ファンタジー
神の力によって異世界に転生した長倉真八(39歳)、転生した世界は彼のよく知る「異世界小説」のような世界だった。 転生した彼の身体は20歳の若者になったが、精神は何故か39歳のおっさんのままだった。 こうして元おっさんとして第2の人生を歩む事になった彼は異世界小説でよくある展開、いわゆるテンプレな出来事に巻き込まれながらも、出逢いや別れ、時には仲間とゆる~い冒険の旅に出たり 授かった能力を使いつつも普通に生きていこうとする、おっさんの物語である。 ◇ ◇ ◇ 本作は主人公が異世界で「生活」していく事がメインのお話しなので、派手な出来事は起こりません。 序盤は1話あたりの文字数が少なめですが 全体的には1話2000文字前後でサクッと読める内容を目指してます。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

〈社会人百合〉アキとハル

みなはらつかさ
恋愛
 女の子拾いました――。  ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?  主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。  しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……? 絵:Novel AI

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです

飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。 だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。 勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し! そんなお話です。

1×∞(ワンバイエイト) 経験値1でレベルアップする俺は、最速で異世界最強になりました!

マツヤマユタカ
ファンタジー
23年5月22日にアルファポリス様より、拙著が出版されました!そのため改題しました。 今後ともよろしくお願いいたします! トラックに轢かれ、気づくと異世界の自然豊かな場所に一人いた少年、カズマ・ナカミチ。彼は事情がわからないまま、仕方なくそこでサバイバル生活を開始する。だが、未経験だった釣りや狩りは妙に上手くいった。その秘密は、レベル上げに必要な経験値にあった。実はカズマは、あらゆるスキルが経験値1でレベルアップするのだ。おかげで、何をやっても簡単にこなせて――。異世界爆速成長系ファンタジー、堂々開幕! タイトルの『1×∞』は『ワンバイエイト』と読みます。 男性向けHOTランキング1位!ファンタジー1位を獲得しました!【22/7/22】 そして『第15回ファンタジー小説大賞』において、奨励賞を受賞いたしました!【22/10/31】 アルファポリス様より出版されました!現在第四巻まで発売中です! コミカライズされました!公式漫画タブから見られます!【24/8/28】 ***************************** ***毎日更新しています。よろしくお願いいたします。*** ***************************** マツヤマユタカ名義でTwitterやってます。 見てください。

処理中です...