上 下
382 / 1,519

俺の限界

しおりを挟む


 水である事を確認したら、これの粘度を上げてやる。イメージは蒟蒻…蒟蒻ぅ…。

「魔力を込められておりますね」

「水の組成を変えてる…のかも?」

「…唸ってるだけに見えますな」

見た目変わらずの板状の水に同じく弾を投げ付けると、ぺちっと当たって跳ね返った。成功したー。

「硬くなったようですな」

「弾力が増したのでございましょう」

「水に入った状態であれされたらきっと抜け出せないわね」

今度はもっと柔らかく、石鹸水ってイメージ湧かないな、シャボン玉の液って液体洗剤と水に洗濯糊とか入ってるんだっけ?取り敢えずネトネトにして、水を足すイメージ…。シャバシャバヌルヌル……。

「唸ってますな」

「そうですね」

「調整に難のある術式なのでございましょうか?」

「どうだ!?」

出来上がりはやはり見た目変わらず、薄い板状だ。水板に近寄り、煉瓦で作ったストローを咥えて空気を送ると、幾つもの玉となって落ちて割れた。膜が厚くて重過ぎだ。

「落ちましたな」

「カケルさんも苦手があるのね」

「浮いたらさぞお綺麗でしょうね」

「精進が足りない俺の限界だな。多分、あの子等は直ぐに遊べると思う。お風呂を泡だらけにしないように祈ってるよ」


 翌日も元気一杯の子供達を乗せた橇風呂が行く。シャボン玉遊びを教えてやると、アルアは直ぐにネトネトした水を作り出した。水の適正の無いハークは千切ったネトネトに風を纏わせねりねりしてる。練れば練る程空気を含んで色が変わるのを楽しんでいるよ。そう言う遊びでは無いのだが、楽しそうならそれで良い。アルアは薄めるのをマスターしたようで、指先から出る風でシャボン玉を飛ばす事に成功していた。流石天才。

「お兄様、キレイですよ!」

「流石アルアだ!僕にもカケルにも出来無い事をさらっとやってのける!」

スライミー練って遊ぶ貴方もですよ?練ったネトネトの中に空気を入れて、ゴムボールみたいにして浮かせてる。本当器用。

 昼間はシャボン玉、夜は車をかっ飛ばしての最終夜となった。明日の分も作ってるのでメイド達は忙しそうだ。で、作った物は俺の《収納》で保管しろだと。温かいまま保存出来るので問題無いが、前以て作って保存してもらえば良かったと言われて少し困った。俺が消えたら食えなくなっちゃうじゃないか。
ハーク達がすっかり寝てしまった頃に明日の朝昼と飯を作り終える事が出来た。風呂に入っておやすみなさい。俺達も夜更かしし過ぎたので寝る。

 早起きして朝食を摂り身形を整える。今夜は宿のベッドで寝られるぞ。敵も来なくて暖かく眠れるとは言え仕事だからな。リラックスして寝る事は出来無かったのだ。なのでハークの、家に泊まってってと言うお誘いは断固として断った。疲労を馬鹿にしてはいけないのだ。それにエッチもしたいしな。
 休憩地迄後十キロハーンと言う所で休憩地に人の反応があり移動を止めてもらった。

「何事ですかな?」

「休憩地に人が居たので相談を。それと、ハーク達は安全確保の為ゾーイ車に戻ってもらう」

「僕も戦う!」

「まだ戦うと決まって無いぞ?それに護衛の仕事を奪うな。感知能力でも高めてなさい」

「…はい」

アルアが素直にゾーイ車へ向かう中、ハークは少しごねて居た。子供が人殺しなんてしちゃいかんだろ?ハークがゾーイ車に乗り込んだら、橇風呂を先頭にして進む。五人六人なら冒険者と見ても良い。けど直径三十ハーンそこらの土地に五十人以上は不自然だよな?ゾーイ車も無いし、ほぼ当たりだろう。

 当たりだった。
この国の野盗は皆、毛皮を着込んで顔まで隠してるので丸わかりだ。一キロ手前、隠れてる斥候に見付かると同時に悪意の反応が出る。結構な速さで移動してるがスキーでも履いているのだろうか?
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

性的に襲われそうだったので、男であることを隠していたのに、女性の本能か男であることがバレたんですが。

狼狼3
ファンタジー
男女比1:1000という男が極端に少ない魔物や魔法のある異世界に、彼は転生してしまう。 街中を歩くのは女性、女性、女性、女性。街中を歩く男は滅多に居ない。森へ冒険に行こうとしても、襲われるのは魔物ではなく女性。女性は男が居ないか、いつも目を光らせている。 彼はそんな世界な為、男であることを隠して女として生きる。(フラグ)

転生した体のスペックがチート

モカ・ナト
ファンタジー
とある高校生が不注意でトラックに轢かれ死んでしまう。 目覚めたら自称神様がいてどうやら異世界に転生させてくれるらしい このサイトでは10話まで投稿しています。 続きは小説投稿サイト「小説家になろう」で連載していますので、是非見に来てください!

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します

潮ノ海月@書籍発売中
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる! トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。 領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。 アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。 だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう 完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。 果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!? これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

貞操逆転世界に無職20歳男で転生したので自由に生きます!

やまいし
ファンタジー
自分が書きたいことを詰めこみました。掲示板あり 目覚めると20歳無職だった主人公。 転生したのは男女の貞操観念が逆転&男女比が1:100の可笑しな世界だった。 ”好きなことをしよう”と思ったは良いものの無一文。 これではまともな生活ができない。 ――そうだ!えちえち自撮りでお金を稼ごう! こうして彼の転生生活が幕を開けた。

処理中です...