360 / 1,519
しでかす
しおりを挟む先触れが戻るまでの退屈な時間をヒラウオの巻き上げる泥を見て過ごす。何となくだが、大きさは三十ドンくらいだろうか?採れたてを調理しても泥臭い為、十日程泥吐きさせると言うのは日本の鰻や鯉に通ずる物があるな。
「取ったらダメなのか?」
ワーリンよ、勝手に取ったらダメだろう。それに十日は食えないぞ?売ってるのを買った方が断然美味いと俺は思う。
「坊っちゃま、先触れが戻りますのでお席にお着きを。カケル殿等は此処よりお言葉遣いにお気を付けくださいませ」
「お心遣い感謝に絶えませぬ」
「カケルさんって意外とオーバーよね」
「大雑把だとは思う」
これでも繊細なボールコントロールで鳴らしたものなんだがな。
「総員出発ーー!」
先触れが帰って来て隊列に加わり、門に向かってゆっくり常歩で歩き出す。俺も雪を蹴ってる振りして進む。五百ハーンそこらの距離に十リットもの時間を掛けて、漸く門に辿り着いた。
「開門ーー!」
ゴゴゴゴギギギギ…っと、重そうな音を鳴らしながら奥と手前に設置された門が垂直に上がって行く。中世のお城みたいに閉じ込めて殺すタイプの門だな。この国なら、熱した油より冷水ぶっ掛けた方がダメージデカそうだな…、なんて考えながら黒光りする鉄格子を抜けて街に進入した。門の中は雪が無く、格子越しに見える街並みも雪を掃き清めてあるのでここからは歩きで移動する。ワーリン達は丸太の姿で歩くのか?お前等が良いなら良いけど。
街の中はとても静か。と言うより大通りの端に平民達がズラリと並んでて、バルタリンドでの凱旋よりとてもお行事が良い印象を受ける。騒ぎに乗じて何かをしでかさないように、静かに見守るのだと三号車の馭者は言う。《感知》には色んな所に人が隠れてるのが見える。屋根の上だとか路地の隙間とか。しでかすのか?と思えど害意も悪意も無い。ならば、しでかす奴を探す係なのかも知れないな。チラっと見ると、スっと隠れる。
北から南に城へと続く、一直線の大通りの先には再び壁と門が立ち塞がる。此処からは貴族街。そして護衛依頼の終了となる。
「此度の働き見事であった。この書状を王都の冒険者ギルドに渡し報酬を得るが良い」
「ありがとうございます。また良しなに」
ゾーイ車から降りて書状を渡すブルランさんに、代表のキュルケスがとても自然に返答する。流石先輩慣れてるっすね。必死に手を振るハークきゅんにホッコリし、後詰の護衛が中に入り門が閉ざされるのを確認したら俺達は宿屋探しだ。ヒラウオ食べてみたいしゆっくり寝たいのだ。それにワーリンとキュルケスが左右の腕に絡み付いている。ご無沙汰だったし俺もしたい。
門前に立つ二人の門兵に宿屋の場所を聞いてみるが、ジモピー宿屋に行かないし、宿舎のある兵隊さんなら尚更行かないのが宿屋である。食事処や酒場なら知ってると言うので場所を聞き、後は自分達の足で探す事にした。
「此処、魚っぽい匂いする」
飯屋はワーリンの鼻ですぐ見付ける事が出来た。一般のご家庭でも魚くらい調理するだろ?って思うのだが、何故かちゃんと料理屋を探せるのが凄い。よしよしよしよし。しかし南天には暫く時間があるし、ワーリンもお腹空いて無いみたい。この店はキープにして昼までは宿を探そう。
こう言う時、冒険者ギルドが有るととても役立つのだが、旧王都に冒険者ギルドは無く、有るのは商業ギルドと家政婦組合だけだそうな。
「商業ギルド、行く?」
「そうだな。歩き回るのは明日でも良いし」
キュルケスの一声で側道を東に抜けて、北東の大通りに向かう。民家であろう集合住宅に一×二ハーン程の板が沢山並んでる。これは盾なのか?それとも雪かきにでも使うのだろうか?
「魚の匂いがするね」
俎かも知れん。日光に当てて除菌するとか言うしな。
0
お気に入りに追加
133
あなたにおすすめの小説
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話
妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』
『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』
『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』
大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
魔境に捨てられたけどめげずに生きていきます
ツバキ
ファンタジー
貴族の子供として産まれた主人公、五歳の時の魔力属性検査で魔力属性が無属性だと判明したそれを知った父親は主人公を魔境へ捨ててしまう
どんどん更新していきます。
ちょっと、恨み描写などがあるので、R15にしました。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL
ヒューマンテイム ~人間を奴隷化するスキルを使って、俺は王妃の体を手に入れる~
三浦裕
ファンタジー
【ヒューマンテイム】
人間を洗脳し、意のままに操るスキル。
非常に希少なスキルで、使い手は史上3人程度しか存在しない。
「ヒューマンテイムの力を使えば、俺はどんな人間だって意のままに操れる。あの美しい王妃に、ベッドで腰を振らせる事だって」
禁断のスキル【ヒューマンテイム】の力に目覚めた少年リュートは、その力を立身出世のために悪用する。
商人を操って富を得たり、
領主を操って権力を手にしたり、
貴族の女を操って、次々子を産ませたり。
リュートの最終目標は『王妃の胎に子種を仕込み、自らの子孫を王にする事』
王家に近づくためには、出世を重ねて国の英雄にまで上り詰める必要がある。
邪悪なスキルで王家乗っ取りを目指すリュートの、ダーク成り上がり譚!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる