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罪な女
しおりを挟む夕方までハーク坊っちゃまを持て囃し、今日は素直にメイドと一緒にハーク邸を後にした。前にジジババのゾーイ車も居るし、職質はされないだろう。
「貴様!何故麗しのライナ嬢と一緒に歩いている!」
西通りの出口でフラグ達成。メイドに気がありそうなので引導を渡してやろう。
「ライナと言うのか」
「はい。カケル様にご迷惑をお掛けして申し訳ございません」
「呼び捨て!」
「良いさ。所でライナ、誰彼構わず怒鳴りつける男を旦那にしたいと思うか?」
「いいえ、思いません。力をひけらかさず、優しい物腰の男性が理想です」
もう立ち上がれないな、ご愁傷様である。メイドも笑ってる。罪な女に別れを告げて、星が瞬く東に向けて歩き出した。
「甘~いお菓子の匂いがする」
宿に帰ると受付の前で待ち構えていたワーリンに抱き着かれてクンカクンカされた。犬か。ああ、犬系獣人だったな。
「女の匂いじゃ無いのが驚きね」
「女の匂いはするけど…、おばあちゃんかな?取り敢えずコレは使ってないねー」
「そうだな。午後になってハークに拉致されたけど昼間は外で仕事だったからな」
「そこでお菓子をご馳走になったのね」
「食ってないぞ?昼飯をご馳走になって腹一杯だったし、ハークの幸せそうに食う顔を見て満足した」
立ち話も何だし、食堂に移動して夕飯を食べながら二人の話を聞いた。二人は公共浴場に行ったそうだ。良いなぁ、股間のアイツがこんなになってからは一度も行ってないよ。アイツに《阻害》を掛ければ何とかなりそうな気もするが、ジョンくんみたいなのが入って来たらバレてしまうだろし、萎えさせる事も出来無くも無いが、混浴での揉み揉まれに慣れてしまった俺にはもう公共浴場には入れないと思う。
話は変わり、明日からはまたランク上げの依頼をこなす事になったのだが、二人でいくつか依頼を見繕って来たらしい。キュルケスが居るおかげでDランクの依頼を受けられるのが有難い。もう一人か二人Cランクが居ればCランク依頼も受けられるそうだがワーリンに伝手は無く、諦めざるを得ない。やれる事をやろう。
ヤりたいだけヤっての翌日。今日は西門に直行だが、ダンジョンに潜る訳では無い。その先の森での討伐依頼だ。とは言え折角だし、序にダンジョンの入口を見学してく。
「話には聞いてたけど、地下迷宮なのね」
小さな神殿風の建屋が入口を塞ぎ、衛兵が立っている。その横の建屋に冒険者共が列を成し、ガラガラ籤を回して一喜一憂してた。当たった者はチケットと金を交換してダンジョンへ、外れた者は走ってギルドに向かってく。冒険者は勤勉だ。
一通り見物して俺達も仕事先に向かう。今回の依頼は野良ゾーイの生け捕りだそうで、一頭単位の出来高払い。雄雌子供問わず一頭分支払ってくれるそうな。
子ゾーイを放置すると生き残れないだろうしな。それに、調教するなら子供の方が良いのだろう。橇風呂を蹴って街道を進んだ。
雪深い時期のゾーイは、木の皮や雪に埋もれた枯れ草等を食べて飢えを凌いで居ると言う。昨日乗ったゾーイも俺が除雪した途端モグモグ始めてた。飼う方も、餌を工面するのが大変なのだろうな、サイロも無いみたいだし。
《感知》を使い、ケブを殴りながら野良ゾーイに近付いて行く。
「お前さん、オレの拳じゃゾーイを殺しちまうよ。どうやって捕まえたら良いんだい?」
「私は一度やった事あるわよ?ロープで足元なり首なりを縛って木に繋げると、木の周りをぐるぐる回って木にくっ付くの。それから一旦木に縛り付けて、目隠ししたら落ち着くまで待って街まで連れてくの」
「大変な仕事だな」
「お金にはなるのよ。私が参加した時は八十人くらいで三日掛けて二十頭くらい捕まえてたかな?それで一人十五万ヤンくらい」
「えーと、十五万×八十÷二十…十五の四倍で一頭当たり六十万ヤンか」
「変な計算だけど合ってるわね」
変かな?
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