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猫ちゃん
しおりを挟む解体場には先に来ていた買取嬢の他にも、むさ苦しいおっさん達が嬉嬉として肉等切っていた。
「あ!お客さん、此処は入っちゃダメにゃんだよ?」
「僕が許可した。さ、此方に出して下さい」
デカいテーブルに、冒険者の持ち物と略奪品を分けて出す。一つ五百ヤンだから結構な額になるが、二束三文よりは良いし、ギャンブルしてやるか。
刃毀れしてる武器や防具は軽く見て、ササッと紙に書いてペッぺと横に置かれる。即ちハズレだ。冒険者の持ち物はアクセサリー以外は殆どそんな感じ。アクセサリーには魔法が込められたりしてるのでふんふん言いながら書き込んでいる。これは小当たりか?
略奪品は瓶だとか皿だとか。アルア邸に使われていた白磁もあるが、食器は揃えで値が付くとかあるのでどうなるか…。指で弾いて音を聞いたりしてるので、中には良い仕事してる逸品もあるに違いない。
「お、これは捜索依頼が来てますよ?」
ノートを捲って嬉しそうなツルちゃん。
「当たり出た?」
「十万ヤンです、おめでとうございます」
「お前さん、やったね」
その後、ポツポツ当たりを引いて、角の計量も終わりカウンターに戻って来た。
「先ずはこっちから。ドウドウにょ角二十本、計二十三ニャリと二百六十二。締めて六十九万七千八百六十ニャンとにゃります」
「み、ミスリル…」
「暫く見てなかったけど、こんなに青かったのね…」
「次は鑑定から。総数百五十三点で七万六千五百ヤンお支払い頂きます。で、ゴミが八十三点、一つ五十ヤンで四千百五十ヤン、値が付いた物は四十九点、総額三十万五千ヤンとさせて頂きました。捜索依頼の品が二十一点、総額百六十万ヤンとなります。総計百八十八万三千、飛んで五十ヤンとなります」
「五十ヤン、おまけしてよ」
「欲が無いですね、酷い人だと二百万にしろとか言いますよ?」
「金はあるからな」
「分かりました。では百八十八万五千ヤンとします」
二百五十八万二千八百六十ヤン。角の方もおまけして貰えば良かった。ワーリンに百万、残りは俺のギルド証に振り込んだ。
「い、一生食べて行けそう…」
「いーな、いーなー、カケルさぁ~ん」
「はいはい。先ずは宿を決めましょうねー。ワーリンは何処に泊まってる?」
「オレはギルドのやってる安宿だよ」
「私の住んでた所とどっちが良さそうかな?」
「断然あっちだね。こっちは隙間風吹くもん」
「なら隙間風の吹かない宿に鞍替えしないとな」
猫ちゃんに良さげな宿を聞いてみると、とにかく温かい宿を紹介してくれた。何よりも暖を求む猫系獣人御用達の宿、だそうな。キャットタワーとかありそう。
裏路地を少し進み、南向きの丁字路の向かいにある『猫と兎亭』は陽当たりがあり如何にも暖かそうな雰囲気の宿だ。温かい日中は仕事に出てるんだけどな。
「いらっしゃひ!人!」
「どうも、人です」
「オレは獣人だぞ」
「人だけど…ダメなの?」
兎の獣人がフロントでキョドってる。ラビアンに対する認識が何処の大陸も共通なら気持ちは分かる。
「ギルドの猫ちゃんから紹介されたんだ。怖くないよー?虐めないよー?」
「カケルさん、その兜で言うと逆に怖いよ?」
「それに、ラビアンなら我が家のある集落に一杯居るぞ?」
「も、もう一人欲しくなったり…?」
「とにかく攫わないから安心してくれ」
「どうかにゃー?」
背後に立つ、少し高い声は多分女。何かしたら引っ掻きますよーって気配を出している。
「爪研ぎならそっちの柱でやってくれ」
「ンナージャ、柱もダメです!」
ンナージャと呼ばれた猫ちゃんは、ワーリン同様猫に近い面構え。尻尾が細くてギルドに居た猫ちゃんに似てなくもないな。
「爪研ぎ出来無くて残念だったな」
「あっしはそこのわんちゃんみたいに飼い慣らされたりしにゃいよ?」
ンナージャの頬に思い切りビンタした。
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