上 下
334 / 1,519

猫ちゃん

しおりを挟む


 解体場には先に来ていた買取嬢の他にも、むさ苦しいおっさん達が嬉嬉として肉等切っていた。

「あ!お客さん、此処は入っちゃダメにゃんだよ?」

「僕が許可した。さ、此方に出して下さい」

デカいテーブルに、冒険者の持ち物と略奪品を分けて出す。一つ五百ヤンだから結構な額になるが、二束三文よりは良いし、ギャンブルしてやるか。
刃毀れしてる武器や防具は軽く見て、ササッと紙に書いてペッぺと横に置かれる。即ちハズレだ。冒険者の持ち物はアクセサリー以外は殆どそんな感じ。アクセサリーには魔法が込められたりしてるのでふんふん言いながら書き込んでいる。これは小当たりか?
略奪品は瓶だとか皿だとか。アルア邸に使われていた白磁もあるが、食器は揃えで値が付くとかあるのでどうなるか…。指で弾いて音を聞いたりしてるので、中には良い仕事してる逸品もあるに違いない。

「お、これは捜索依頼が来てますよ?」

ノートを捲って嬉しそうなツルちゃん。

「当たり出た?」

「十万ヤンです、おめでとうございます」

「お前さん、やったね」

その後、ポツポツ当たりを引いて、角の計量も終わりカウンターに戻って来た。

「先ずはこっちから。ドウドウにょ角二十本、計二十三ニャリと二百六十二。締めて六十九万七千八百六十ニャンとにゃります」

「み、ミスリル…」

「暫く見てなかったけど、こんなに青かったのね…」

「次は鑑定から。総数百五十三点で七万六千五百ヤンお支払い頂きます。で、ゴミが八十三点、一つ五十ヤンで四千百五十ヤン、値が付いた物は四十九点、総額三十万五千ヤンとさせて頂きました。捜索依頼の品が二十一点、総額百六十万ヤンとなります。総計百八十八万三千、飛んで五十ヤンとなります」

「五十ヤン、おまけしてよ」

「欲が無いですね、酷い人だと二百万にしろとか言いますよ?」

「金はあるからな」

「分かりました。では百八十八万五千ヤンとします」

二百五十八万二千八百六十ヤン。角の方もおまけして貰えば良かった。ワーリンに百万、残りは俺のギルド証に振り込んだ。

「い、一生食べて行けそう…」

「いーな、いーなー、カケルさぁ~ん」

「はいはい。先ずは宿を決めましょうねー。ワーリンは何処に泊まってる?」

「オレはギルドのやってる安宿だよ」

「私の住んでた所とどっちが良さそうかな?」

「断然あっちだね。こっちは隙間風吹くもん」

「なら隙間風の吹かない宿に鞍替えしないとな」

猫ちゃんに良さげな宿を聞いてみると、とにかく温かい宿を紹介してくれた。何よりも暖を求む猫系獣人御用達の宿、だそうな。キャットタワーとかありそう。
裏路地を少し進み、南向きの丁字路の向かいにある『猫と兎亭』は陽当たりがあり如何にも暖かそうな雰囲気の宿だ。温かい日中は仕事に出てるんだけどな。

「いらっしゃひ!人!」

「どうも、人です」

「オレは獣人だぞ」

「人だけど…ダメなの?」

兎の獣人がフロントでキョドってる。ラビアンに対する認識が何処の大陸も共通なら気持ちは分かる。

「ギルドの猫ちゃんから紹介されたんだ。怖くないよー?虐めないよー?」

「カケルさん、その兜で言うと逆に怖いよ?」

「それに、ラビアンなら我が家のある集落に一杯居るぞ?」

「も、もう一人欲しくなったり…?」

「とにかく攫わないから安心してくれ」

「どうかにゃー?」

背後に立つ、少し高い声は多分女。何かしたら引っ掻きますよーって気配を出している。

「爪研ぎならそっちの柱でやってくれ」

「ンナージャ、柱もダメです!」

ンナージャと呼ばれた猫ちゃんは、ワーリン同様猫に近い面構え。尻尾が細くてギルドに居た猫ちゃんに似てなくもないな。

「爪研ぎ出来無くて残念だったな」

「あっしはそこのわんちゃんみたいに飼い慣らされたりしにゃいよ?」

ンナージャの頬に思い切りビンタした。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

性欲排泄欲処理系メイド 〜三大欲求、全部満たします〜

mm
ファンタジー
私はメイドのさおり。今日からある男性のメイドをすることになったんだけど…業務内容は「全般のお世話」。トイレもお風呂も、性欲も!? ※スカトロ表現多数あり ※作者が描きたいことを書いてるだけなので同じような内容が続くことがあります

幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話

妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』 『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』 『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』  大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。

魔境に捨てられたけどめげずに生きていきます

ツバキ
ファンタジー
貴族の子供として産まれた主人公、五歳の時の魔力属性検査で魔力属性が無属性だと判明したそれを知った父親は主人公を魔境へ捨ててしまう どんどん更新していきます。 ちょっと、恨み描写などがあるので、R15にしました。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

転生したら赤ん坊だった 奴隷だったお母さんと何とか幸せになっていきます

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
転生したら奴隷の赤ん坊だった お母さんと離れ離れになりそうだったけど、何とか強くなって帰ってくることができました。 全力でお母さんと幸せを手に入れます ーーー カムイイムカです 今製作中の話ではないのですが前に作った話を投稿いたします 少しいいことがありましたので投稿したくなってしまいました^^ 最後まで行かないシリーズですのでご了承ください 23話でおしまいになります

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

処理中です...