上 下
252 / 1,519

賄賂

しおりを挟む


 今、街の少し手前で荷車と専用機を《収納》し、徒歩で門前へ向かっている。普段なら荷車のまま入門して寝具店に直行するのだが、今日は街から出る人が多くて移動し難かったのだ。
すれ違う者は主に冒険者。ホルストを付けた商隊用の荷車もあれば、小型の荷車を曳く人も居る。歩いてる者を立ち止まらせるのも往来の邪魔になるし、道を譲って草の中を歩こう。背中に背負ったカラクレナイも静かにしてるし気にされないので此方も気にしない。
門兵にミーネの分の入門料を払い、先ずはサミイの所へ向かう。街の人なら少なからず何か知ってるかも知れないし、カラクレナイを布団で寝かせてあげたい。一緒に寝たいまである。

「あ!旦那さま、おかえりなさーい。皆さまもようこそです。カララさまは…お休み中ですね。お布団用意してきます」

手ぶらなので正面から入ったら、客の居ない店内でサミイが一人店番をしていた。そして俺達を置いてカラクレナイの布団を用意しに行ってしまった。大所帯で店番する事も無し、俺とイゼッタが店番を受け持ち、他の子等は客間に入ってもらった。客の来ない店番程有意義な時間は無いが、暫くするとサミイが戻って来た。

「てっきり店内で宜しくやってると思っちゃいました」

「ドキドキを楽しむ時間は取れなかったな」

「取り敢えずお店閉めちゃうので、客間で待ってて下さいね」

客間に入り、お茶を啜り、サミイを待つ。そう言えば両親殿が居ないな。

「お待たせしましたー。今パパとママが寄り合いに出てて居ないんですよ」

「街を出る人が多いのと関係あったり?」

「わたしはまだ何も聞いて無いですが、多分その話もしてるんじゃ無いですかねー。二人で行く事なんて今迄無かったですし」

その辺は両親殿が帰ってから、若しくはカロにでも聞くか。

「此方もサミイに報告があるんだ」

「また雰囲気変わった事ですか?」

「よく分かったな、流石俺の嫁だ。カロにも話すから後でカロを呼んで話そう」

「えへっ、取り敢えずお昼ご飯の準備しましょう!焼肉パーティーするってカララさまと約束しましたし」

「ご主人、我等は食料の調達に出よう」

「あたしは外の準備を」

「では私はお肉でも…」

リュネがお肉を獲ると聞いて、不安がぎる。

「リュネ、一回で食べ切れる量で頼むくれぐれも頼む」

「大丈夫ですよ。カケルさんは心配性なんですから、うふふ…」

うふふの後の溜めが怖い。リュネのお乳に顔を埋めて賄賂賄賂。

「カラクレナイは鳥が食べたいそうだ」

「お任せあれ。…じゃあこれで。取れました」

これが龍の《収納》である。細かい範囲は判らんが、《感知》に引っ掛かった獲物は何でも《収納》される。相手は死ぬ。若しくは死んだ方がマシな精神状態になる。

「カケルさん、覚えましたか?」

「《感知》使った所しか分かんなかったよ!」

「あら。ならこれはどうでしょう?…はい。肉とそれ以外に分けましたよ?」

これが龍の《収納》である。《収納》内の獲物を解体出来るのだ。細かい範囲は判らんが、肉、骨、羽根、内臓に分けられていると思われる。

「そっちは何となく…。骨付き肉から練習するのが良いのかな?」

「カケルなら直ぐに出来るようになるさ」

「努力しよう。皆が料理の支度をしてる合間にちょっとギルドに寄って来るよ」

「カロも呼ぶ?」

「そうだな。今日は泊めて欲しいし。肉でも焼いて待っててくれ」

「ではカケルさん、これを」

リュネが取り出したのは大量の羽根。今獲った鳥の羽根か。長い奴で百二十ドンくらいあるんだが、食べ切れるのか?出された羽根を《収納》してはまた出されを数回繰り返しギルドに向かった。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

性的に襲われそうだったので、男であることを隠していたのに、女性の本能か男であることがバレたんですが。

狼狼3
ファンタジー
男女比1:1000という男が極端に少ない魔物や魔法のある異世界に、彼は転生してしまう。 街中を歩くのは女性、女性、女性、女性。街中を歩く男は滅多に居ない。森へ冒険に行こうとしても、襲われるのは魔物ではなく女性。女性は男が居ないか、いつも目を光らせている。 彼はそんな世界な為、男であることを隠して女として生きる。(フラグ)

転生した体のスペックがチート

モカ・ナト
ファンタジー
とある高校生が不注意でトラックに轢かれ死んでしまう。 目覚めたら自称神様がいてどうやら異世界に転生させてくれるらしい このサイトでは10話まで投稿しています。 続きは小説投稿サイト「小説家になろう」で連載していますので、是非見に来てください!

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します

潮ノ海月@書籍発売中
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる! トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。 領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。 アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。 だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう 完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。 果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!? これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

貞操逆転世界に無職20歳男で転生したので自由に生きます!

やまいし
ファンタジー
自分が書きたいことを詰めこみました。掲示板あり 目覚めると20歳無職だった主人公。 転生したのは男女の貞操観念が逆転&男女比が1:100の可笑しな世界だった。 ”好きなことをしよう”と思ったは良いものの無一文。 これではまともな生活ができない。 ――そうだ!えちえち自撮りでお金を稼ごう! こうして彼の転生生活が幕を開けた。

処理中です...