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カケリウム

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 結果として意外な程呆気なく属性魔石が出来てしまい暇になってしまった。

「カケル様、皆様、お茶が入っております」

テイカの謎の察知能力は今日も健在だな。砂粒を袋に仕舞い、客間に行こうとした所で裏口に人の影。

「御免下さい。冒険者ギルドの…あ、カケル様」

裏口に居たのはカロだった。仕事中でキリッとしてるカロも良い。揃って客間に向かった。


「で、依頼の件で来たんだろ?どうなった?」

お茶を飲み飲みカロに話を振ってみる。放っとくとどんどんデレてしまうのだ。

「はい。通信の魔道具を使い、公都アフマクシアの冒険者ギルド経由にて連絡しました。夜迄には連絡があるかと」

「そうか、宜しく頼む」

「それでですね、今夜は帰りが遅くなりますので…」

「アルネスに伝えとくよ」

「は…、はい…。お願いします」

哀愁漂う背中を向けて仕事に戻るカロ。このギャップが堪らない。気配を殺して忍び寄り、後ろから抱き締めた。

「きゃふぁ~カケルたまぁ~ん」

嬉ション垂れ散らす犬の如く反転してスリスリして来る。よーしよしよしよしよしよしよし。

「喜怒哀楽の振り幅が大きい」

「参考になりますわね」

「おとなかわいいなんてずるいです」

「あれだけ出来て今迄独り身だったのが不思議でならないな」

  「モテたのに気付かなかったまでありますよ?」
「あの雄叫びは何なのでしょう?私達の言葉だと脇腹なのですが」

「驚きからの愉悦だと思われます」

カロは俺から何かの成分を充填し、キリッとしてギルドへ戻って行った。カケリウムと名付けよう。否、辞めよう。カロと入れ替わりで母親殿が顔を出した。お昼を作りたいので手を借りたいと言うとサミイを筆頭にメイドの二人、イゼッタにリアまでママ上殿~って言いながら付いてった。
テイカは俺と二人きりになるチャンスと見て気配を消してたな?そそくさと膝に乗り、身を委ねて来るテイカだが…、もう一人居られるのをお忘れか?

「私もお楽しみに加わるべきでしょうか…」

珍しい、テイカの照れ顔が見られた。

「テイカよ、昼飯が出来るまでの時間にちょっと森に行って来ようと思う。属性魔石をこの前作ったみたいに棒にくっ付けるんだ。一緒に行くか?」

抱き着いて顔を俺の胸に埋めたままコクリと頷いた。


 門を出て、正面は街道を挟んで畑ゾーン。そして畑の先は森だ。何となく今日は左に曲がりたい気分、テイカとリュネを引き連れて、北と思しき方向へ歩を進めた。
目的地はすぐそこ。小枝が一本あれば良いのだ。なんなら寝具店の庭木から拝借する事も出来たが流石にそれは止めといた。《鑑定》で毒の無い木を見繕い、枝葉を払って棒にしてミッション完了。久しぶりのバットだ。振りたい。バット用にちょっと良い木も切り出して、ホクホク顔で森を出た。

「カケルさん、何だか嬉しそうですね」

「棍棒に強い思い入れがあるのでしょう」

俺、寝具店に戻ったらノーノに此奴を脱水してもらうんだ。
…等とフラグチックな事を思ったせいで、折角のバットの材料を血に汚す事になる。

「天下の往来で良い大人が弱い者虐めしてんじゃねーぞ」

投げ付けた木材はスキルの力で一直線に飛んで行き、男の首から上を消し飛ばして彼方に消えた。

「え!?あ!旦那!!」

頭の消えた仲間を見て一目散に逃げて行く冒険者達。逃がすかよ。小石を拾ってモーションに入った所で全員倒れ伏した。

「カケルさん、子供に見せるようなモノではありませんよ?」

気付けば首無しも消えている。どうやらリュネが何かしたらしい。テイカは子供達の介抱をしている。

「大人気ない事をしたな。大丈夫か?」

「ミミンが殴られた!」

お前もだろ。取り敢えず悪党を回収してギルド経由で寝具店に戻ろう。
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