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男は顔
しおりを挟む車輪のテストをしながらメルタールへ向かう。フェルトのクッションが効いてるので、生乾きの生皮が効いているのかどうか分からない。
街道なので最低限の整地がされており、島の道無き道よりはだいぶ音が静かだ。轍を挟んでカタカタゆっくり走って行く。
イゼッタとテイカは後ろで車輪のチェックだ。今の所縮み剥がれは無さそうだが、何時まで持つやら。
現在平原の真ん中を移動中。見晴らしも良くて眠くなるが遠くには森が見える。迂回しているのか、それとも突っ切るのかは分からないが、悪い子はああ言う所に潜んでるとテイカが言う。
ちょっと飛び上がって先のルートを見ておくのも悪くない。休憩がてら草地に止めて、コートを着込んで飛び上がった。
上空から見下ろすと、ルートは二つ。かなり迂回するので森を抜けた方が早く着くのだろうな。
下に降りると二人がお茶を用意してくれていた。
「森は多分罠」
「イゼッタ様に同意です。けれど悪党共を皆殺しにするのも良いかと思います」
「そんな事言って、悪党に襲われてる姫とかに出会したらどうするんだ?面倒だぞ?」
「嫁が増える」
「やりましたね、カケル様」
「一発ヤってはいさようなら、なら是非ともだがな、それが出来る程の器量良しでは無いのだ」
「二の句が無い」
「せめて笑ってくれ」
「男は顔じゃありません。あたしが保証します」
ぺとりと体をくっ付けて来たテイカ、良い子だ。
私もーっと抱き着いて来たイゼッタ、良い子だ。
休憩を終えて、ここからは俺が運転する。車輪も温存したいしな。
向かうは森、しかしまともにゃ行かないぜ。大空高く離陸した。
上空千ハーン。荷車が壊れたら二人が落っこちちゃうので布帯を命綱にして飛んでいる。
テイカは何故かこんな所で干し肉を炙りだした。さっきの場所で昼飯にしとけば良かった。煙い。
イゼッタは水をレンズにして地上を観察している。こんな高さからだと三人とも道くらいしかまともに見えないので地球の知識を伝授してやったのだ。
貴族の世界には凸レンズはあるそうで、凹レンズと組み合わせの概念を教えてやると直ぐに理解した。楽しそうに悪党に襲われてる二頭引きのホルスト車?等を見付けていたが、やっぱ助けなきゃダメなのか?
「なあ、イゼッタ…」
「カケルに任せる」
「カケル様は貴族様としっぽりするチャンスを逃すお方では無いと確信しております」
「しないよ?お前らで充分満足してんだよ?」
「性奴隷冥利に尽きます」
「私も。カケル大好き!」
イゼッタと並んで水のレンズを覗いてるが、どうやら護衛は全滅した様だな。
ホルスト車から女が三人降ろされた。きっと殺されるか犯されるか両方されるのだろう。一人は貴族と判る格好だ。この女が狙いの政敵だったりして?
「カケルゥ」
「どうしても救いたいか?」
泣きそうな顔でじっと見てくる。仕方ないな。
「ならば殺れ。一人も残すな」
言葉と同時に風のビームが降り注ぎ、一瞬でその場に居た男は殲滅された。残された女三人は腰が抜けた様子でへたり込んでしまった。
俺は荷車を汚い血溜まりの無い所に着陸させた。
「誰です!?」
メイドスタイルの女が貴族女を庇って立ち上がる。
「誰でも良いだろ」
熱々の干し肉を齧りながら男の死体から金になりそうな物を物色する。
「死人に対する冒涜は許しません」
貴族女が気丈に振る舞うが、俺は気にしない。テイカも気にしてない。
「自分達が殺されかけたと言うのに随分間抜けな言い様だな」
「カケル、貴族はこう言う生き物」
荷車から降りず肉を食む元貴族。
結局、俺達が戦利品を漁り終えるまで、三人の女は身動きしなかった。否、出来なかっただけだな。
勿論護衛の物は剥ぎ取らなかったぞ。売ったら足が付きそうだし。
戦利品は武器と盾と暗器、ポーション少し、金貨含む金、アクセサリーだった。暗器があるから暗殺者か?それより気になるのはアクセサリーだ。
「イゼッタ、この指輪を見てくれ」
「ん…、何処かの紋章?」
「何処かのギルドか?それとも貴族の家か?」
「わかんない」
メイドに指輪を投げて寄越すと、受け取ったメイドが貴族に渡す。顔色変わったなー。
「こんな所に長居するとモンスターに襲われるぞ?さっさと家に帰るんだな」
「貴様らは冒険者だな?ならばこのお方を街迄お送りするのだ!」
貴様と言う奴にろくなのが居ないのは学習済みだ。メイドであってもそれは変わらないだろう。
「やだよ。ホルスト生きてるしお前らで帰れよ」
「この薄情者!」
「お止めなさい!」
テイカは戦利品を積み終えて既に載ってるし、俺は何時でも逃げられる。面倒だから逃げたい。
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