上 下
70 / 1,519

パン食い競走

しおりを挟む


 今日は一人で湖の周辺を見回りしている。
一昨日の被災地から更に範囲を広げて何か無いかと探しているのだ。

この湖がある森は、昨日サミイが持って来た地図を見る限り街からはだいぶ遠い。そしてモンスターや野獣は冒険者的には不味い部類に入る。門から五分も歩けば同じのが居るからだ。
なのに何故人が居たのか?野盗共はまだ理解できる。が、女二人は?野盗に捕まった感じは無かったし、何より、ギフトは女二人の冒険者を敵として認識した。

テイカの時もそうだったが、冒険者って悪事に手を染める事に抵抗ないのか?それとも仕事が無くて仕方なく?
否、悪事と気付いてない可能性もある。他の街に入る時、門で水晶玉に触れる事があると言うのに危険な橋を渡る奴が居るのか?居ると言えば居る。だが多くはない筈だ。

ギルドなどに依頼されてる可能性…。ありそうで嫌だな。

 水流の流れた端まで探索を終えたが、人の死体は古い白骨のみで鮮度のあるのは無かった。野獣やモンスターの死骸は殆ど生き残った野獣達に食べられていて、残り物の骨と皮が蟹山に埋もれていた。お掃除ご苦労様です。
蟹が食べない金になりそうな落とし物と、俺達が食べる木の実を採取して島に戻ろうとした時、近くに人が居る反応があった。

(一人なら右へ、二人以上なら左へ)

左に押される。

(二人なら右へ、三人以上なら左へ)

また右。

(男が一人なら右へ、二人なら左へ、居なければ前へ)

左に押された。嫁が増えなくて良かった。

(二人で俺より弱ければ右へ、強ければ左へ)

右。よしよし。ん?弱いのにこんな所に来れるのか?ブフリム十匹ゴーラ五匹とか群れなして歩いてる場所なのに。
今も俺の周りにそのくらいの数が群れてるのに。

(俺に敵意があるなら右へ、無いなら左へ)

右か。ならMPKしちゃおう。
モンスターをたっぷり集めて囲んでボコらせた。
死んでない程度に弱った所で一人を掴んで木の上に引っ掛ける。

「お前、何しに来たの?」

「たっ、助けて…」

「言わないとああなるぞ?」

下ではパーティーの真っ最中で、クチャラー共が生肉奪い合ってる。

「ひっ!!」

「早くぅ~。俺らに悪さする為に来たんでしょ~?」

首根っこ捕まえて木の上から降ろしてやるとパリピが足を切り付ける。

「やめっ!話す!頼む!」

「話したら上げてやる」

「ギルドの依頼だ!カケルの居場所を探せば金が入る!」

「はいはい嘘乙。まぁギルドの依頼なのは予想してたがな。お前らが俺に敵意向けてんのバレてんだよ」

男の股間に群がりパン食い競走の始まりだ。

「ぎゃぁぁ!死にたくない!!殺せば金目の物が手に入るとっうぎゃーっ!」

パンが手元から引きずり降ろされてしまった。もう話は聞けないな、残念。島に帰った。

「おかえりなさい。ここまで悲鳴が聞こえてましたよ」

「干し肉焼けてる」

昼飯に間に合って良かったぜ。摘んで来た木の実と焼きたてソーサーも美味しく頂けた。

「んで、何があったの?」

「ギルドが俺らの居場所を探しているんだと」

「殺しの依頼じゃないんですね」

「殺す気はあったみたいだけど聞き出す前に食べられちゃった」

「しかたない」

「聞かれなかったので言いませんでしたが、言った方が良いですか?」

「耳が痛そうだな」

「はい。後でさすってあげますね。あの時のカケル様達は…、今もですがランクも低く無名の新参者だった訳です」

「そんな俺らがアホみたいに金を稼いだ。ギルドから金を巻き上げた」

「馬鹿のせい」

「おかげであたしはカケル様に拾われました。ギルドにはある意味感謝です。とは言え」

「それは俺も感謝だ。しかしこっちはちゃんと物を売ってんだからなー」

「自己中」

「そうですね。有無を言わさぬ程ランクを上げるのが良いと思いますが…」

「折角家も出来たのに引越しするの面倒だなー」

「サミイどーする?」

「移動が大変ですね。遅くはなりますが荷車とホルストを用意しなくてはいけませんね」

「ホルスト?」

作曲家か?

「荷車を牽く獣です」

あの馬っぽいのも大層偉そうな名前付いてたんだな。

「移動用の箱でも作るか」

「善は急げ」

「まだ慌てるような時間じゃないが、板と角材の用意はしておいてくれ」

午後はイゼッタを連れて太い木をチョイスして伐採し、夜は移動用の箱の設計に思考を巡らせた。

しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

実はスライムって最強なんだよ?初期ステータスが低すぎてレベルアップが出来ないだけ…

小桃
ファンタジー
 商業高校へ通う女子高校生一条 遥は通学時に仔犬が車に轢かれそうになった所を助けようとして車に轢かれ死亡する。この行動に獣の神は心を打たれ、彼女を転生させようとする。遥は獣の神より転生を打診され5つの希望を叶えると言われたので、希望を伝える。 1.最強になれる種族 2.無限収納 3.変幻自在 4.並列思考 5.スキルコピー  5つの希望を叶えられ遥は新たな世界へ転生する、その姿はスライムだった…最強になる種族で転生したはずなのにスライムに…遥はスライムとしてどう生きていくのか?スライムに転生した少女の物語が始まるのであった。

おっさんの神器はハズレではない

兎屋亀吉
ファンタジー
今日も元気に満員電車で通勤途中のおっさんは、突然異世界から召喚されてしまう。一緒に召喚された大勢の人々と共に、女神様から一人3つの神器をいただけることになったおっさん。はたしておっさんは何を選ぶのか。おっさんの選んだ神器の能力とは。

30年待たされた異世界転移

明之 想
ファンタジー
 気づけば異世界にいた10歳のぼく。 「こちらの手違いかぁ。申し訳ないけど、さっさと帰ってもらわないといけないね」  こうして、ぼくの最初の異世界転移はあっけなく終わってしまった。  右も左も分からず、何かを成し遂げるわけでもなく……。  でも、2度目があると確信していたぼくは、日本でひたすら努力を続けた。  あの日見た夢の続きを信じて。  ただ、ただ、異世界での冒険を夢見て!!  くじけそうになっても努力を続け。  そうして、30年が経過。  ついに2度目の異世界冒険の機会がやってきた。  しかも、20歳も若返った姿で。  異世界と日本の2つの世界で、  20年前に戻った俺の新たな冒険が始まる。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

外れスキルは、レベル1!~異世界転生したのに、外れスキルでした!

武蔵野純平
ファンタジー
異世界転生したユウトは、十三歳になり成人の儀式を受け神様からスキルを授かった。 しかし、授かったスキルは『レベル1』という聞いたこともないスキルだった。 『ハズレスキルだ!』 同世代の仲間からバカにされるが、ユウトが冒険者として活動を始めると『レベル1』はとんでもないチートスキルだった。ユウトは仲間と一緒にダンジョンを探索し成り上がっていく。 そんなユウトたちに一人の少女た頼み事をする。『お父さんを助けて!』

願いの守護獣 チートなもふもふに転生したからには全力でペットになりたい

戌葉
ファンタジー
気付くと、もふもふに生まれ変わって、誰もいない森の雪の上に寝ていた。 人恋しさに森を出て、途中で魔物に間違われたりもしたけど、馬に助けられ騎士に保護してもらえた。正体はオレ自身でも分からないし、チートな魔法もまだ上手く使いこなせないけど、全力で可愛く頑張るのでペットとして飼ってください! チートな魔法のせいで狙われたり、自分でも分かっていなかった正体のおかげでとんでもないことに巻き込まれちゃったりするけど、オレが目指すのはぐーたらペット生活だ!! ※「1-7」で正体が判明します。「精霊の愛し子編」や番外編、「美食の守護獣」ではすでに正体が分かっていますので、お気を付けください。 番外編「美食の守護獣 ~チートなもふもふに転生したからには全力で食い倒れたい」 「冒険者編」と「精霊の愛し子編」の間の食い倒れツアーのお話です。 https://www.alphapolis.co.jp/novel/2227451/394680824

処理中です...