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可愛い彼女

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 腹を満たした俺達二人は風呂屋に向かう。
そう言えば下着変えてないなー。どこかで買えれば良いのだが。俺もそうだし、こいつも多少の着替えは必要か。明日ギルドで聞いてみるか。

「服屋は多分閉まってるから明日まで着替えは我慢してくれ」

「買ってくれるの?」

「仕方ないだろ。俺も新しいの欲しいしな」

「やった!」

是非ともプチプラで頼む。

「ここがお風呂?」

「共同浴場だ。一人で入れるか?」

「多分」

「判らなければ隣を見て、若しくは聞け」

風呂屋の前で打ち合わせして、千ヤン渡して入ってく。五百ヤンはタオル代だ。俺のは茶ばんだ中古タオル。
受け付けの婆さんに金を払い着替えに行こうとするとババァに呼び止められる。

「兄ちゃん、ちょっと…」

「なんだ?」

「カケルぅ」

この声はお強請りする時の声だな。

「なんぞ」

「石鹸…」

女子だからな、仕方あるまい。あるんなら俺も買えば良かった。

「婆ちゃんいくら?」

「百ヤンだよ」

はいはい百ヤン。

「カケルぅ…」

「今度はなんぞ」

「シャンプー」

「婆ちゃん「あとリンス」…いくらよ?」

「二つで三百ヤンだよ」

銀貨で払ってやった!
石鹸やシャンプーやリンスに負けないくらい垢や汚れを落としまくった!

女の風呂は、長い。
外で待つと湯冷めしそうなので、ババァにイゼッタが上がったら呼び出すように伝えてある。
なので俺は今浴室に居る。

この世界、外に椅子がない。
もしかしたらまだ見ぬエリアにはあるのかも知れない。だが山側の門から草原側の門までの通りに一つも無かった。もう無い扱いで良いだろう。
で、浴室には休憩用の石でできた椅子やベッドがあり長風呂を愉しめる様になっている。
こっそりパンツでも洗ってやろうかと思案しているとババァが浴室に入って来た。

「カケルちゃん、可愛い彼女がお呼びですよ」

あんた俺のかーちゃんか!
ガキの頃、野球のチームメイトが妹連れで遊びに来た時に言われたセリフそのまんまだ。
あの時は家族全員にニヤニヤされた。
今も外野にニヤニヤされている。
俺の心は深く傷付き、それが原因で死ぬまでDTだったのだ。かなりイラついている。
流れる汗もそのままに、服を着直し走る俺。

「可愛い彼女が待ってました」

怒りが冷める程度には可愛くなっていた。服はそのままだが肌は綺麗に、髪はツヤツヤになっていた。

「はいはいかわいい」

「もっと言っても良いのよ?」

「明日からは冒険者として食い扶持を稼いで貰うからな」

宿に帰って寝た…い所だが、もう少しだけ用がある。明日からの行動予定を話し合わなければならない。タオルを干してイゼッタの部屋へ。

家主イゼッタはベッド、俺は椅子に座って話し合う。
明日からの事、俺の事…。


 明日の予定は服屋で二人の上下と下着を買う。更にイゼッタ用の防具とカバンを買う予定。
そしてそのままブフリムを狩ってもらう。

「生き物を殺した事はあるか?」

「ない」

だろうなぁ~。

「でも魔法は使える」

「ほう。どんな?」

魔法があるのは図書室で読んだ買取素材の本に載っていた。しかし使ってるのを見た事は無い。

「水と風。魔法の勉強は貴族の嗜み」

「剣は?」

「お任せするの」

お嬢様ならそんなものか。守るのは兵隊がやってたんだろうし。

「で、その魔法で生き物は殺せるのか?」

「多分」

「殺れなきゃ死ぬけど」

「頑張る」

「ちなみに何発撃てる?」

「MPポーションがあれば「無しでだ」…五発くらい…」

あまり魔法を宛にできんが明日になれば判るか。

「俺の武器は石と棒、ついでにブフリムから奪ったナイフだ」

「安いのね」

「むしろタダだ。明日はブフリムを狩って自分用のナイフを手に入れてもらう。ちなみに臭い」

「何が?」

「ブフリム自身もそうだが奴等の持ち物全てがだ」

嫌そうな顔すんな。良いのが取れるまで殺ってもらわねばならんからな。

「所でお前、魔法以外でスキルとかはあるのか?」

「守秘義務」

「ならば明日から一人で生きろ」

「っ!」

「聞く必要があるから聞いてんだ。必要無い事は聞いてない筈だろ?」

「ごめん…なさい」

「信頼出来ない奴に俺の事を話すつもりはないからな」

俺は部屋を出て行こうとドアを開け、開け!開かない!鍵開けてんのに?何故?イライラ昂る俺の背後から抱きしめられた。

「お願い…。話すから…捨てないで」

震え声の懇願に脱力する他は無かった。

「はぁー。ステータス教えろ。冒険者として使える範囲で良い」

「ステータス、オープン」

イゼッタの前にステータスが表示される。他人に見せる事もできるのか。

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