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飢えた女
しおりを挟む汗を拭き拭き、ギルドの中は空いていた。他の奴らは帰って来ないのか、既に一杯引っ掛けに行ったのだろう。買取カウンターに行くと何時もの美人さんと登録の時に世話してくれた美人さんが居た。
「カケルさんこんばんは。また何か採取してきたんですか?」
「今日もカバンがパンパンですね。籠をお持ちしますので暫くお待ち下さいね」
暇なのだろうか、二人で対応してくれる。
「助かるよ」
買い取り美人が席を外し登録美人と二人。間が持たん。
「採取を頑張ってるみたいですね」
流石プロのお姉さん、場を繋ぐ手管を心得ておられる。
「ブフリムくらいしかやれないから仕方ないさ」
「無理して怪我をなされても良い事ありませんからね」
「お待たせしました。この籠にどうぞ」
カバンに合わせた大きさの籠を持って来てくれた。気の回る美人さんだ。
カバンの中身をボロボロッと籠に開けると、この時二人に電流走る!…的な顔になる。
「こ…これって」
「カケルさん、日帰りで登山して来たのですか?」
「門限ギリギリだったよ。門兵が知った顔で助かった」
草原側に回り込んだからな。
「いえ、そうでは無く、普通は一泊か二泊コースなのですが…」
「スキルのおかげで足が早いんだ。スタミナ無いけどね」
半分嘘で後半は真実である。ギフトについては知られちゃいけない気がするので黙っとく。
「スケイルの実がこんなに…」
《スケイルの実》の発言で多少賑やかだったギルドが少し静かになる。主に女性が。
甘いからなー。美味いからなぁー。
「とにかく確認しますね!」
買い取り美人が生唾飲んで集計してる。登録美人はその間終始無言でじっとり見つめてる。甘味に飢えた女には無闇に近づいてはいけない。
「スケイルの実七十八個…七万八千ヤンとなります。金貨になさいますか?それと、花が一輪ですがこれは買い取り不可なのでお返ししますね」
「金貨でお願い。花はミスって摘んでしまった物だからあげるよ。甘い香りは俺の部屋向きじゃないし」
これも嘘である。味についてはまだ黙っておこう。
金だけ受け取り財布に仕舞い、ササッとギルドを後にする。向かうは防具屋、カバンを買って収入アップだ!
「良かったな、まだ売れてねーぞ」
「もうすぐ売れるかも知れんぞ?」
「まさかお前、やっちまったのか!?」
ニヤリ…。
「…で、本当は見に来ただけなんだろ」
「冒険者だぞ?一攫千金出来なきゃ生きてけねーよ」
財布から金貨7枚出してやる。
「何に手ぇ付けたんだ?ヤクか?それとも男娼か?」
「フッ、金の成る木を見つけてな」
「パトロンか!この成金め!」
「詳しくは秘密だ」
「くそっ、持ってけ!二度と来んな!」
「お釣りくれよ…」
そんな訳で背負いカバンゲットだぜ!
防具屋の親父には簡単に誤解を解いておいた。
これの売上で女を買うとかかーちゃんに言いつけるとか言い出すし…女買えたのか…。
ともかく、行ったり来たりになるが今日はまだ宿を取って無かった。急いで宿屋に向かう。
「遅かったな」
「空いてるか?」
「いつもの部屋しか空いてないぞ」
「美味い飯のためならなんでも我慢できるさ」
銀貨3枚と木札を交換し部屋に戻る。
ベッドに腰掛け荷物を卸し、ポケットの中の小銭を勘定する。
鉄貨銅貨鉄貨鉄貨ぎーんかー。
鉄貨三十二枚、銅貨三枚、銀貨一枚となった。あまり戦ってないから銀貨出ただけめっけもんだ。
カバンにタオルを入れて腰にはナイフ、首から鉄貨袋を提げて財布はジャンパーの内ポケット。さて飯飯。
今夜の夕食は鳥の焼いたのとスープとソーサー。
金を払って水をちびちびやっていると肉の焼けた良い匂いを筋肉ハゲが運んで来た。
鳥の焼いたのは焼き鳥とは言わず、やはり焼肉だそうな。齧り付くとジュワッとして塩とスパイスが効いてて美味い。ソーサーに挟んで食うと肉汁を余す事無く摂取できる。何人か真似してたが、ソーサーに具材を乗せる文化が廃れた理由が解らん。
スープは白ワイン的な酒に変えたのか、やや白濁した茶色のスープだった。コンソメ味に似てる。鳥肉やーらかい。優しい味。
腹も膨れたので一風呂浴びて来るか!
風呂での事は想像にお任せする。
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