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お値段、異常
しおりを挟む僕のお小遣いはセーナがくれるが、街で買い食いとかしないので1Uも使ってない。使ったらヒモになってしまいそうだから。が、今日はたくさん飛んで行く予定だ。背中の穴を直したブレストを迎えに行く日なのだ。
「では参りましょうか、貴方様」
「私を置いてお行きですの?貴方様」
皆面白がって僕を旦那さん扱いするけど、旦那っぽい事なんてしてないからね?レイナとエリザベス様、そしてマキが同行する事になり、お昼を食べて街に出た。
「先に銀座に寄るよ?」
「ギルド証には入れてないの?」
「ああ言う所は現金払いが多いからね」
レイナの問いに答える。獣人お姉さんの居た工房でも現金払いだったし、ギルド証に入ってるお金では、今の手持ちと合わせても全然足りないだろう。
「いらっしゃいませ。冒険者の方、ですか?」
若い店員が対応に出たが、僕達の成りを見て言葉遣いだけの対応を取る。冒険者は来ちゃいけないのか?
「ユカタ、アレを」
「良いの?」
アレはこう言う時に出す物だそうな。身分証や銀座カードの入った財布を取り出し、一緒に入れてたアレを、上から目線の職員に見せてやる。
「あ、こ、これは…」
「私の家紋ですわ」
「て、店長っ」
若い職員は頭も下げず逃げてった。そして逃げてった先から急ぎ足で来る髭の人が、エリザベス様に向けて深々と腰を曲げた。まあ、そうなるよな。
「用があるのはコチラの方。頭を下げる相手もよ」
「はっ、当座の者の不行き届き、誠に申し訳御座いませんっ」
「1年振りだけど、僕の事覚えてる?セーナの店で働いてるユカタだよ」
「はっ、お、覚えております。ご立派になられたようで、嬉しく思います」
この反応はどうだろう?別室にと言うのを断って、カウンターで処理してもらう。僕はまだ、銀の装備を備えてないし、マントも翻してないからね、平服で手脚革張りだし。
ビカッと光る箱がビカッとなり、銀座カードとお金を受け取ると銀座を後にする。店の外まで髭の店長が送ってくれたよ。
手持ちに金貨2枚が加わり、女子3人が頼もしく見える。警戒を厳にして職人親父の工房へ行くと、金属をヤスリでゴリゴリしてる親父がいた。
「こんにちは。直ってる?」
「おう、小僧か。そこにあるぞ」
作業台に置かれたブレストを手に取り、背中の傷を確認する。
「塗ってある?」「縫ってあるわね」「金属毎?」
傷の上には皮に合わせた色が塗ってあり、僅かに膨らみがあった。女子に言われて内側を見ると、流石にこちらは縫われてない。外張りの皮だけ縫ったのか。
「しっかり貼り合わせてはあるがな、濡れて水が入れば錆が浮く。開き防止に縫い止めて、防水に樹脂を塗った。どうだ」
「凄い」「作り手が嫉妬しますわね」
「俺もその職人に会ってみてぇモンだ。今もこうして復習してんだが、こりゃあだいぶ手が込んでるな」
シンプルに見えて手間が掛かっているそうだ。
「ちなみにカバンは?」
そっちは型で固めてる最中だって。焦らず待つべし。そして修復の代金だが、1万Uだった。高いけど、拍子抜けだ。カバンの方の見積もりを聞いて、抜けた拍子が戻って来る。
「大きく出ましたわね」
型から作ったから高いそうな。見積もり額、98万U也。インナー含めて僕の一揃え並の値段だ。絶対型代だけじゃない。
「中に金属仕込んだりしてないよね?」
「皮には拘ったからな。して欲しいのか?」
荷物は軽い方が良いと返して当然だなと言われた。拘った皮だってそこまでの値段にはならないし、ほとんど手間賃なんだろうな。それだけに良い物が出来ると確信出来る。前払いで金貨を渡し、鎧を着けて工房を後にした。
「ユカタ~、お土産~」
「ロシェルに早く会いたくて、寄り道せずに戻ったよ」
「う…」
退いたか、良し。行って帰って時間も掛からず、店仕舞いもして丸々暇になったので、明るい内から湯浴みして、ゆっくり夕飯を作って食べて飲んだ。
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