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尋常に、勝負
しおりを挟むギルドの横、東門を抜けて街道に出てしばし。何度も来た草薮にやって来た。
「私達は南側を攻めるわ」
「では私達は北側を。お昼を一緒に致しましょう」
「ええ、ご無事に」
「ご無事でありますよう」
エリザベス様とレイナが言葉を掛け合い、それぞれ薮に入ってく。
「ユカタ君、今日はどれにするの?」
「私達は違うの採るから」
ペニーとカシーの気になる2人は僕の獲物と被りたくないのかそんな事を聞いて来る。僕は採れるヤツ全部採ろうかと思ってたけど、何度も通うし採り過ぎも良くないよな。
「そうだなー。ならトロミネとアッゼニゲシにしようかな」
「うわ、高いヤツ」
「じゃあ掘る数決めようか?」
「ならユカタ君は20本、私達はペアで20本かな」
「構わないよ」
「どっちが大きいの掘れるか、勝負しよ」
話の流れでトロミネの大きさ比べをする事になってしまった。トロミネは加熱するととろみが出る植物で、肥大化した根を採取する。大きさ=買取価格なので小さい物なら高値は付かない。食用にも出来るが解毒薬の材料になるので食べてはいけない。民間療法では腹痛や解毒目的で食べられる。
草薮に入ると下から何節か残して切ってある植物がある。誰かが掘ったトロミネの跡だ。こりゃあハズレの場所を引いちゃったかな。少し隣にズレよう。
「ユカタァ、アタシのお尻見に来たのー?」
「そうだよ。見られたくなかったら僕がいた方に行ってくれ」
「見たいクセに」
ズボンのクセに、尻を見るなと抜かしよる。わざと尻を振るロシェルのお尻をじっと見ると、馬鹿は恥ずかしがって横にズレてった。早く冒険者になりたいな。
アッゼニゲシの膨らんだ果実を、茎を長めに取って採取する。コイツは毒にも薬にもなる植物で、鎮痛効果のあるポーションの原料だ。そこまで高価買取では無いが、以前からルイ姐さんに頼まれていたのでそろそろ持って行かないと機嫌を損ねてしまう。
アッゼニゲシの果肉を3つ採り、やっと目当ての茎を見付けた。茎の太さも指程あり、切った跡も無い。期待しかない掘り出し物だ。ナイフで慎重に土を掘り起こして行くと、見た目に当たりな事が分かる太さの肌が露出した。掘り出して、長さは20cm超え。幸先良し。トロミネの根は3本採れるが、3/20をこの大きさにするのは惜しい。足りない時に採る事にして、軽く掘って長さだけ見て埋め直した。茎を切るのも忘れない。切り離した茎を置いておけば今日中なら見付けられるだろう。
森の入口まで移動して、アッゼニゲシの果肉は20個、トロミネの根は15本採れた。今の所の最大は約40cm。3本の根を1本に残して肥えさせるのが大きく育つ秘訣だと思った。気になる2人はそれに気付いてるのかも知れない。
「ユカタ~少し休も~」
「採れてるならな」
「ユカタ、一旦水を入れましょう。ロナンが遅れてるわ」
「ゆっくり探したら良いよ。ロナーン、その場で少し休んで良いからねー」
「おーう」
皆がその場に座り込み、カバンから水筒を取り出して一服入れる。ロシェルは端まで行ってたのでこっちに来た。
「どう?採れてる?」
「葉っぱだけ」
「葉っぱ採りに来てんだよ」
僕は違うけど。ロシェルのカバンを見せてもらうと、授業で習った葉物が雑多に入ってる。後で仕分けるのが大変になるからと言ってその場で束にさせた。僕の休憩も使ってだ。
「クルクルして…突っ込む。コレでい?」
「い。よしよし。平たい葉っぱは筒にするか、端でやると良いよ」
束が締まるまでネジネジするのがコツだ。ロシェルは体を使って覚えるのは早い。応用出来るようになれば小屋くらい作れてしまう事だろう。
「またお尻見に来る?」
「今度はロナンの方に行こうかな」
「ジューン。ユカタが男のお尻を見たいってー」
「分かります!」
元気な返事だが、何が分かるのか。
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