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仕事の、成否
しおりを挟む水樽を抱えた2人が扉に水を掛ける。粗方冷めていたようでジュージュー言う事は無かったが、触るのはためらうくらいのお湯になってる事だろう。
「援護頼むぜ」「おうよ」
ミルコが扉を蹴り押すと、開いた隙間からシューッと空気の流れる音がした。
「中に入らないで」
「お、おう」
開け放たれた扉の前から、3人が中を覗き込む。マッチョ兄弟はどんな顔しているだろう。奥で倒れる塊に、僕は駆けて行きたい気持ちを堪える。
「学生、だな」「兄弟、行かないのか?」
「息を止めて行こう。部屋の中で息すると倒れるかもだから」
兄弟達はあまり分かってなさそうだけど、取り敢えず大きく息を吸って入って行った。炭焼きで起こる事故と同じにならなきゃ良いけどな。
マッチョが2人ずつ抱えて、僕は1人引きずって部屋を出る。袋小路の入口まで持って来て、ダメだと判断された。とても貴重な回復魔法が効かなかったのだ。これでダメなら僕達に人を生き返らせる手段は無い。
「エリザベス様、私の魔法では…」
「そう。せめてお家に帰してあげたいわ」
「あの、私の背嚢に…」
それは、人が物になった事を意味する。ジュンの言葉にエリザベス様は少し考え、否定した。
「私ののポーチにて持ち帰ります。学園の術師であれば…いえ、期待は持ち過ぎぬ事にしましょう」
来た道を引き返し、学生の屯する階段前へ。エリザベス様の声に賛同したレイド達と合流し、街へ、学園に帰って来た。時間はまだ、昼にもなっていなかった。
「ここからは私の仕事ですっ。エリザベス様は救護室へ。私は担当を呼んでおきます」
コラリーさんは門前でそう言うと、返事を待たず学舎へと走って行った。
「俺達も急ごうぜ」「抱えて行こうか?」
「おいおい、首が飛ぶぜ?」
「エヴィナ、冗談はおよしなさい。それに慌てる必要は無いの。普通に急ぎましょう」
そう言ってエリザベス様は走る。街中で走れなかった分を取り戻すのだろう。元デブと気になる2人、3人衆と取り巻き達を引き離し、先行して学舎に着いたのは男3人にガサツが2人。そしてガサツに押されて速度を増したエリザベス様とコラリーさん。
「ひっ、ふっ、運動っ、しなきゃっ…ぎひっ」
「体力ないと結婚出来ないよ?」
「あ、明日からっ。今はそんな事よりっ」
コラリーさんは事務所に入ると誰かと話してるみたい。僕達は救護室で待つ事にした。
遅れた面々が玄関前でハァハァしてる間に、救護室に大人達が入って来た。救護室の職員に、魔法講師が2人。そして学園長と秘書の女性。部屋が狭くなると言うのでマッチョ兄弟は部屋を出た。
「エリザベス嬢、この度は面倒を」
「冒険者となればいずれ来る事でしょう。私達がまだ冒険者でないのが残念ですが。まずは診断を、治せるものならお願いします」
ベッドに向かい、ポーチの中から2人ずつ取り出すと、すぐに大人達が診察を始めた。首元に手を当てたり顔に耳を近付けたり。僕には何をやってるのか分からないが口を開けて風魔法を流し込むのは分かった。強制的に息をさせているようだ。
「エリザベス嬢、皆も。後は学園が対処しよう。明日に備えると良い」
学園長はそう言いながらも風魔法を生徒の口に出し入れする。その表情にエリザベス様は頭を下げ、戻りましょうと僕達に退室を促した。
多分だけど、ダメだと思う。けどやるだけやったのだから納得しなければ。整備室に上がり、明日に備える。
「私がやれると言ったから…よね」
「許可したのは私です。私にも責任があるのだから貴女1人の責ではなくてよ」
「他にやれた?みんなでバチボコする以外で。30はいたよ?」
ロシェルは敵の数を把握していたようで、ウォリスが20にブフリム12は居たと言う。中には大きい種も居たそうで、バチボコするには分が悪いと続けた。
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