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目先の、欲
しおりを挟む南門に着いて昼食休憩。採集しながらの移動なのでだいぶゆっくり歩いているが、その事に関しての苦情は無い。だが他の事で苦情が出た。
「なぁ~、ユカッつぁ~ん。戦いてぇよぉ~」
「離れなよ。敵出ないんだから仕方ないじゃん」
「ロシェルよお、あンたは1匹殺れてっから良いよな~」
挟みパンを頬張る僕の胡座にうつ伏せで膝枕して来たエヴィナが慣れもせぬ猫撫で声で物騒なお強請りをする。注意するロシェルも強くは言えず、咀嚼に集中してしまった。
「今回は動きを見るって言ったよね。頭数も多いし、向かって来る敵は絶対殺るけど、今日はそれが1匹しかいなかったってだけなんだ。分かるよね?」
「分かっけどさ~。暇なんだよぉ」
「レイドは強い敵や数いる敵を倒したり、広い所を探索するために組まれるんだ。こんな場所でそんな場面、出会さないよな」
「だったらよ?早く終わらせて鍛錬場で試合おうぜ?」
「それも良いけど、ちょっと見て欲しい物があるんだ。ジュン、ペニーとカシーも良いかな?」
「見せ付けるつもりかよ」
「よく見とけ」
見せ付けて欲しそうなので見せてやる。ジュンの広げたシーツの上に、3人と僕のカバンから採集品を出してやる。束にされた薬草と、ロシェルが摘んで来た木の実草の実が山になると、静観していた者含めて驚きの声を上げた。
「いつの間に?いえ、見えていたハズなのに」
「ええ、正直侮っておりました。2人の知識と経験には感服致しますわ」
僕には?
「兄弟、いくらくれぇになんだ?」
「ジュン、ザル計算で低く見積もって良いよ」
「は、はいっ。ざっとですが…」
大雑把に計算して、大体14~5万ウーラと出た。買い叩かれてこれ以下なら他所に行くレベルだ。
「久しぶりにこんなに採ったわ」「だね」
パーティーの誘いが途切れない訳だ。僕が1クラスにいた頃から男女、クラス問わずモテモテだったからな。
「コレ、見ちまうと…なぁ」
「な?明日は東門から街道行くからさ。今日は頼むよ」
「わーったよ。…にしても凄ぇな」
理解して貰えたようだ。後でもっと驚くが良い。ジュンの背嚢に草の山を収納して休憩を終える。言わずもがな、めちゃくちゃ高いヤツだ。
「荷物を卸すのに時間掛かるし、ここからは少し早めに行こうと思うんだけど、レイナ、エリザベス様、どうかな?」
「この先は畑だし、こちらは構わないわ」
「私もよろしくてよ」
許可が出たので出発だ。黄色く色付いたマタル麦が穂を垂れる脇を、3パーティーはあぜ道毎に分かれて進む。あぜ道は細いから列が長くなるし、単調でつまらないのだ。
「ユカタ。前に、ゲル」「こんなのなら、俺にも殺れる」
「せっかくの実りを食われるのは勿体無いね。見える範囲で殺っちゃおう」
「あぜに持って来てから潰しなさいね」
「おっぼ」
そろそろ慣れようよ。他のパーティーもタマゲルを見付けたようで、ガサツなエヴィナが掴み上げ、ベシャリと地面に投げ付けてるのが見えた。さらに奥にいるロシェル達は静かにしてるからよく見えないな。
「みんなタマゲルの核は採れた?」
「狩りは静かにやれってーの」
「うちのエヴィナがお騒がせしましたわ」
「悪ぃ、ちょっと嬉しくなっちった」
街道に合流し、門を潜ってギルド…には向かわず大通りを進み、1本入った先の店。
「ここ、知ってる」「大棚じゃ、ないか」
「ここ、私の祖父の店なの…」
「どばぶぶっ」「ぁぶばっ」「ひゃーっ!」
人見知りと男嫌いが奇声を上げると髭の店員が駆け寄って来た。ホーさんだ。呼ぶ手間が省けたな。
「お嬢様!不埒者ですな!?」
「ち、違いますー!仲間ですーっ」「「うんうんうんうんっ」」
魔力をまとってムキムキになって行くホーさんを目の前に、腕を広げて元デブを守るジュン。なんだか劇でも見てるみたいだ。元デブの2人には、ジュンが聖女に見えてる事だろう。
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