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軍隊的、思考
しおりを挟む「ユカタ、貴方はどうかしら?」
エリザベス様は澄ました顔で僕に振る。一斉に視線を向けられ固まってしまうが、意見を問うなら答えなければ。
「入れて1パーティー分で15人そこら。それ以上、例えば2パーティー入れて20人とかになると統制が取れないな。数は力、とは言え僕達は狙われやすいから敢えて離れる方が安全かとも思う」
エリザベス様も無言で頷いた。事実、僕等は今回の罪人と思しき奴等に襲われている。奴等の契約がまだ続いているのなら、狙われる確率が他より低いハズがない。
ではなぜ関係無い生徒が狙われたのか。これは僕の予想でしかないが、食料目当てではないかと思ってる。まともに人も殺した事の無い子供が飯を持ってたむろしているのだ。魔物が消えるダンジョンで長居するには食料調達するに持って来いの相手だろう。
「だったら俺達はどうすれば良いんだよ!?」「ミルコの兄貴い、頼んますよお」
「女生徒は今夜、話し合いの場を設けます。食事と湯浴みを終え次第、全員食堂にお集まりなさい。この場にいない者にも話を通して、1人たりとも欠けぬように」
狼狽える男子達とは違い、エリザベス様は澄んだ声で女子達に告げる。それまでに考えをまとめる算段なのだろう。取り巻きに3人衆が連絡役を買って出ると、他の女子達も協調して名乗りを上げていた。
「なら俺等も女子に倣うか」「だな。どうしてもソロでってんなら止めはしねぇが、出来るだけ全員集めろ。良いな!?」
「「「おうっ」」」
マッチョ兄弟の言葉に男達は従った。女子の前でいつまでも格好悪い所を見せたくないのだろう。マッチョ兄弟はどのように考えをまとめるのだろうか。
授業が終わり、放課後。僕の腕は筋肉に捕縛され、学舎の裏に連行される。
「まだ考えがまとまって無いんだね?」
「無い訳じゃ無ぇ。だがよ、俺等の考えが貴族様達と違ったら無駄になっちまう」
「兄弟ならアイツ等とも長ぇしさ。すり合わせ出来る案があっかも知れねぇだろ?」
「まあ、そうかも。直接すり合わせしなきゃ完全には合わないだろうけどね。ロシェ~ル」
「バレてた?」「「うおっ」」
多分居ると思って声を掛けると、筋肉の裏からひょっこり顔を出す。気付かず背後を取られていたマッチョ兄弟は情けない声を上げた。
「最近さ、やっと居ないけど居る感覚が分かって来たよ。話に混ざってくれない?」
「あンたにバレる程度なら、アタシも敵に殺られちゃうね。ここでの話をアッチに伝えたら良いの?」
「よろしく頼むよ」
マッチョ兄弟の考えを聞いて、僕は少し安堵する。日帰りを推奨したからだ。そして少し不安になる。男女混合分割レイドと言い出したからだ。要するに、男女の力量を均等化して補え合えるようにしたいと言う構想だ。レイドと言うより一時的に多人数パーティーにするつもりだろう。
「連携が取れるかどうか、だね」
みっちり5日訓練すれば行けるだろ、とは言うが、それは無理だろう。放課後5日ってだけだぞ?
「どう思う?」「無いね」
即答だ。男女比、職能比、力量差。どれにおいても15人程度に分けるのは無理だとロシェルは続ける。
「それにさ。誘ってもソロやペアやるって奴もいるでしょ?」
「多分な」
「女だってそう言うのいるかもだし、急に別れさせられるのも知らないトコに混ぜられんのもさ。ヤでしょ」
「パーティーは分けず、レイドだけにしといた方が無難だね」
「男共の良い刺激になると思ったんだがなぁ」
「痛いだけだよ。ま、レイドに組み込むのは悪くないけど、それでも連携は見直さないとね」
レイドである以上ソレは絶対やらなきゃいけない。各パーティーを取りまとめる者も必要だ。昼飯時、20人を超えると統制が…なんて言ったのはそのためだ。
「筋肉の言いたい事も分かるよ?軍隊のやり方だもんね」
2人は元々軍人志望だもんね。
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