剣の世界に憧れて上京した村人だけど兵士にも冒険者にもなれませんでした。

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オシャレは、足元から

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 僕の予定が終わり工房を出ると、再び腕に絡んで来るエリザベス様。聞くと、男は皆こうするのが礼儀なのだと。多分ソレって貴族様の礼儀だよね?腕を曲げてお腹のちょっと上に手を添えるのがスマートだと教わった。

私あわたくしまり外には出ないの。楽しみね」

「僕もやっと街の大きい所を覚えた感じだよ。迷う前に助けてもらいたいかな」

 エリザベス様の言葉にキョロキョロしながら返す。付かず離れずで見てるんでしょ?頼むよ?

「お話する時は私をわたくし見なさい」

「う、うん。じゃあ掘り出し物市から見て行こうか」

「よしなに」

 掘り出し物市とは、露店街の中にある家具や雑貨、アクセサリーみたいに食べられない物を売っている一角で、運と知識次第で良い物を手に入れられる店が並んでいるらしい。雑多に並べられた中からお宝を見付けるなんて僕には出来ないので見るのはもっぱら武器と防具ばっかりだ。けれど今日はエリザベス様もいるので普段見ない方に足を向ける。

「貴方の興味はさっきの並びでしょうに」

「この間借りたナイフより良さそうな物無さそうだからね」

「アレはそれなりに良い物よ。差し上げたかったのだけれど私のわたくし家紋ではありませんので、ごめんあそばせ?」

 エリザベス様の親の家紋だもんね。僕なんかが持ってたら盗品と疑われかねない。

 家具は寮住まいでは使わないので見るのは大体雑貨等。とは言え布とか中古の服を見ても僕にはピンと来ないな。

「店主。この服はキレイに繕って飾るのが良いわ」

「飾っても売れなきゃねぇ」

「見た感じ貴族様の服に見えるけど。良い物なの?」

「ええ。エノン侯の物よ。肖像画にも描かれておりますわ」

「そんな事言って。お客さん何者だい?」

 エリザベス様はふふっと笑い、僕の腕を引く。あそこのアクセサリーがキレイですわよ。ですって。わたくし装飾品に興味ございませんのよ?

「ねえユカタ。貴方なら私にわたくし何を贈ってくださるかしら?」

「この中で?」

「……」

 そんな目で見ないでください。貴族様相手に下手な物贈れないと言うのにろくな物無いぞ?見た目はトレーに乗った石と細いチェーンの塊で、解すとネックレスや指輪、ブローチなんかがごちゃ混ぜになった物だと分かる。どれも汚れていて洗う前に贈ったら絶対ダメなヤツだ。

「コレってどう使う物なの?」

「髪飾りですわね」

「じゃあ、コレは?」

「足に着けるリング、トゥリングですわ」

「コレはブレスレットだよね?」

「アンクレットかも知れませんわ」

 金属の串みたいなのは髪留めらしい。それよりも、靴の中でオシャレしてどうすんだ?女性のオシャレは訳分からん。トレーの上の塊をだいぶ解してやっとソレっぽい物を見付けた。

「これなんて、どうかな?」

「ふふっ」

 笑ってないで良いか悪いか言って欲しい。それと、コレは何なのかも教えてくれると嬉しいのだけど。僕はネックレスのつもりで手に取ったんだけど、なんかチェーンの輪っかの横から何本もチェーンが垂れていて、花をあしらった金属板の真ん中に小さい石がくっ付いてるのが散りばめられている。真ん中辺りが短くなってるのは途中で切れてるのかな?

「真ん中の辺り切れちゃってるみたいだけど、コレもらうよ」

「70,00ウーラね。直して使いな」

 意外と高いな。まあ下手な物贈れないし、仕方ないか。腹いせに銀貨で払ってやった。

「値付けを間違ったかも知れないねぇ」

「直さなきゃいけないんでしょ?」

「チッ」

 大きい舌打ちだ事。お釣りを数えて財布にしまい、お昼も近いし退散しよう。串焼きの匂いがお腹に沁みる。

「贈っては、下さらないのかしら」

 エリザベス様が見付けてくれた店に入り、食事を摂りながら彼女はそう告げた。

「けど、直さなきゃ」

「アレはこの状態で完品なの」

 短いチェーンはアレで良いんだって。







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