剣の世界に憧れて上京した村人だけど兵士にも冒険者にもなれませんでした。

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護衛の、仕事

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 翌日。タイグ達に付き合って事務室で昨夜の話をした。事務員のコラリーさんもエリザベス様を襲った相手かも知れないと聞かされては真に受ける他は無い。学園長を通して各ギルドと衛兵詰所へ報告を上げるよう進言すると言ってくれた。

 タイグ達は医務室で寝ると言うのでその場で別れ、僕は街へ出る。コラリーさんは一緒に行くと言ってくれたが丁重に断った。貴女は報告があるでしょう?

 「待っていたわ。さあ行きましょう」

 断って正解か。それとも間違っていたか。学園の門前に立つエリザベス様に捕まってしまった。そういや昨日は何するとか言ってなかったな。ササッと手を取られて外に出る。

「ご、護衛。護衛は…」

 居た!見た途端隠れたので間違いない。護衛だよな?エリザベス様を見ると問題ありませんわと仰った。問題ありませんのか?よろしくてなのか?

「そう…。兄が恥をかかなければ良いのだけれど」

 街を歩きながら昨夜の話をエリザベス様にも伝えておく。エリザベス様は僕の腕に手を回し、にこやかにそう仰った。笑い事ではないのだけど、腕に当たる柔らかい感触に、僕は言葉を返せなかった。

「それで、どこに連れて行くのかしら」

「鍛冶屋さんの工房だよ」

「その後は?」

 僕の用件に付き合うのだから私にわたくしも見返りを寄越しなさい。と言う事だろう。貴族様のお眼鏡に適うか分からないけどこうなりゃヤケだ。振る舞いますよもう。

「露店街を回って」

「よろしくてよ」

「どこか静かな店で食事にしましょう」

「ふふっ、貴方、女の扱いが上手いわね。本当に平民なのかしら」

「お爺さんのお爺さんから平民ですよ。兵役は出たみたいだけど」

「なら天然なのね。うふふふ…」

 僕としてはパレードの日を参考にしただけなのだが、貴族様には笑いのツボにハマったようで、扇子で顔を隠してお笑いになった。人前ではしたないですわよ?

「ここだよ。護衛も1人入れる?」

「すぐに突入出来れば問題無いでしょう。…よしなに」

「はっ」

 小さい返事があり、ちゃんと護衛だった事にホッとする。ドアを強めにノックして声を掛けた。

「こんにちはー。クリスエス商会の伝手のユカタだけどー」

「はぁ~い」

 この声は獣人お姉さんだ。ドアが開くのでエリザベス様に手を差し伸べて1歩下げさせると、ドアが空いた瞬間僕の手をすり抜けて前に出た。何で!?

「いらっしゃいユカ…」「私はわたくしユカタの連れ合いのエリザベス。どうかお見知り置きを」

「は、はあ。私はここの娘でアルアイン…よろしく」

 前に立つエリザベス様がどんな顔をしてるのか分からないが、獣人お姉さんことアルアインさんは一瞬顔を強ばらせ、急に笑顔に変わった。胸を張り、大きなモノを突き出すと、エリザベス様もグッと体に力を込めた。

「何やってんの?」

「あ、あらユカタ、いらっしゃい。とにかく中に入ってよ。エリザベスさんも、どうぞ」

「よしなに。さ、ユカタ」

 なぜ腕を絡めるのか。そしてなぜドヤ顔なんだ?2人通れる程には幅の無い入口に2人入ろうとすると、柔らかいのが押し付けられて柔らかい。とても柔らかいっ。

「へぇ~。ユカタも男なのね」

「こうでもしないと靡いてくれませんのよ?」

「私もしてみて良いかしら?」「あら」

「ボーッコボコにされたい男はどーこじゃー!?」

「あら」「まあ」「ここには居ないよー」

 アルアインさんの柔らかいのが少し触れた所で助け舟?が入る。

「何だ。クリスエス商会の婿か。次は稼いでから来い。欲しいならくれてやる」

 欲しいのはレイナの手持ち投石器と自分用の防具だと伝えると、アルアインさんは柔らかい物を思い切り押し当てた。鍛冶屋の親父の振り被ったハンマーが振り下ろされる…事はなかった。僕達の後ろ。ドアの向こうから飛んで来る殺気にエリザベス様までギュッと押し当てていた。貴女の護衛でしょうが。





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