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厚みを、増す
しおりを挟む「だったらよ、良ければ俺も入れてくれねぇか?」
勇気ある言葉を放つミルコ。対して渋い顔のロシェルだが、見渡してそれ以上渋い顔はない。
「どうした物かしらね」
「エヴィナ、貴女はどうお思い?」
「オレ?まあ手数はあるに越した事ぁ無ぇけど…。コイツ等エロだぜ?」
レイナの言葉にエリザベス様は自身のパーティーの前衛に問う。そしてエヴィナの言葉に取り巻きの3人は半歩後退った。
「よせやい。見境ない兄貴はともかく、俺は年上が好みだぜ?」
「コイツは母ちゃんに甘えてばっかりだったからな。俺は自分より強ぇ姐さんが好きなんだ」
「母ちゃんにボコボコにされてたもんな」
決してモテ目的ではないと言う2人だが、女性達はヒソヒソ審議に入った。
「ねえユカタ。貴方はどう思って?」
「僕に振る?」
「「兄弟…」」
貴族とマッチョの板挟みで毛が抜けそうだ。まあ、あくまで決めるのは彼女達だろうし、思った事を言ってしまえ。
「強いのは皆が知る所だけど、攻防が賄えて、ジュンを怯えさせない気配りが出来るのは2人の強みだと思う」
「「兄弟~」」
「後は、僕並に我慢出来るならおすすめかな」
「ユカタ…」「その話、家の者から聞いたわ。我慢なさってるのね」
「兄弟、我慢って何だ?」「飯でも減らせって事か?」
「女の子相手に寮の中で話すみたいなエロ話しない事だよ」
取り巻きと3人衆が半歩後退した。ガサツな2人は逆に寄って来た。反応も真逆だ。
「ハハッ、何となく分かるぜ。ユカタさん、コイツ等どんな事言ってんだ?」
「お前等、アタシ達の事ネタにしてんの!?」
「してねえ!」「俺達はしてねえ。雑魚共が話てんのを聞いてるだけだ」
確かに嘘は言ってない。学園外の姐さん方の、尻の話がメインだし。
「んー、まあ…そうだね。2人の年上好きは筋金入りだし。後はみんなで協議してよ」
昼食が終わると男達は先に出ててと追い出される。震えて待てと言う事だろう。
翌日になり、朝の教室に喜びの声が2つ。マッチョ兄弟のパーティー入りが許可されたのだ。兄ミルコはエリザベス様のパーティーへ、弟クリスは僕達の所に来る事となった。
「兄弟、頼りない弟だがよろしくしてやってくれや」
「エリザベス様、兄が粗相したら焼いて構いませんからね」
「私は風の使い手ですの」
火の使い手はレイナの方であると言う。なので焼かれるのはクリスの方だ。エリザベス様も火魔法は使えるが、まだ手の内は明かせないみたいだ。2人共、焼かれないように願う。
ダンジョンへの準備をしたり連携の確認をしたりして休みの日。朝食は前日夜に確保した弁当を食べ、食堂で昼の分の弁当を確保して外に出る。
「遅ーい」
「まだ開門してないでしょーが」
僕とマッチョが集合場所である学園の門前に近付くと、気付いたロシェルが気を急いて八つ当たりして来る。
「クリスさん、よろしくお願いします」
「おう、こちらこそ」
「クリス、さん…。お爺様と同じ呼びなので気恥しいです…」
「呼びやすい呼び方で良いからな」
そう言えばそうだった。2人がどう言う基準でパーティー入りしたかなんて聞いてないから気にも止めなかったが、クリスエス商会の会頭とマッチョ弟は名前の音が似ているんだよな。
「皆さん、準備よろし?」
「「おう」」「「「はいっ」」」
エリザベス様の声にメンバーが応え、ゾロゾロと門を抜けて行く。レイナは僕を見て、皆を見て、スッと手を進行方向に振った。
ギルドとは反対側にある西門を抜けて少し街道を進むと分かれ道があり、やや北向きの片方は村に繋がっている。そしてもう片方は南に伸び、これから向かうダンジョンへと続いている。薄明るくなり行く早朝でも、この道を歩く姿は少なくない。学生の列の他にも冒険者が歩いてて、学生を追い越しながら愚痴を零している。
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